第4話 それでは日本へ  

 魔界のコウダン一家が家族会議を開いている。家族会議といってもダイニングテーブルで食事をしながらで、大それた感じではない。みんなで鍋をつつきながらで話し合っている。

「で、誰が行く?私行きた~い。」

トキワがウキウキしている。

「トキワちゃん地球に行きたいだけじゃん。」

ノブトがじと目で見ている。

「あれ~わかった?てへぺろ」

「トキワちゃん。日本にあこがれているからね。ああ~オレも行きたい。ヒカ●ンに会いて~。」

ヤワタも行きたがっている。

「やはり、私が行くべきなのでは?トキワは遊びそうだし、ヤワタも遊びそうだし…」

ミサキが鍋の肉を取りながら黙々と食べる。

「ミサキ姉さん!それ私の肉!!それトキワの!!」

「お肉にお名前書いてありまして?」

「書いてないけど…ノブト兄さん。姉さんに言ってやって!」

「まぁ、まぁ、トキワちゃん。お肉入れるから。落ち着いてね。」

「ノブト兄様はお優しすぎます。ヤワタ、また、パソコンを見ながら食べてはいけません。」

「でた~。姉さんのお得意のお話のすり替え~。」


どんどん、兄弟姉妹たちが騒がしくなる。


「お静かに!!」ミノリが叱責する。



 兄弟姉妹たちが黙り込む。


「私が決めさせて頂きます。」

ミノリが一呼吸おいて…

「日本にはミサキに行かせます。」

「え~~?!」

トキワがいやがっている。

「ただし、ミサキだけでは心配なので、トキワにも行かせます。トキワはもしもの事があったらよろしくね。」

ミノリがにこやかに言う。

「やった~!ありがとうお母様!」

いやがってたトキワが急に喜んだ。実際、トキワが行った方がいい。トキワは兄弟姉妹のなかで一番戦闘力が高い。魔界の中で一番かも、というくらいだ。

「で、誰を拉致るの?ノブト兄さん。」

ヤワタがパソコン見ながら、鍋をつつき始める。

「妥当なところで、日本人で法律を学んでいる人だね。」

「おっさんはやだ~!プロっぽい人もいやだ~偉そうだから。」

「トキワちゃん。そうだよね~ボクたちも法律を学ながら一緒に切磋琢磨できる人がいいよね。だからある程度、法律ができる人がいいよね。ミサキ姉さんはどう思う?」

「ヤワタの言うとおりだね。珍しいわね。意見が一致したわね。」

「ミサキ姉さん。オレのこと嫌い?」

「あら、そんなことはないわよ。姿勢が嫌いなわけ。」

そうしたらヤワタが姿勢を正す。

「そっちの姿勢ではないわよ!もう!」

「意見をまとめると、年は若く、僕たちも法律を学ながら一緒に切磋琢磨できる人である程度、法律ができる人でいいね。」ノブトがまとめる。

「では、母様。お願いします。」

ノブトが言う。

「わかりました。そうしましょう。」そう言って、水晶をおいた。ミノリは水晶での占いが得意だ。今後の未来の占いではなく、あくまででの占いに限る。そこに人が写っていく。そして一人が鮮明に写った。


「この人!?なんかさえないね。」

トキワが軽く水晶をたたく。

「お母様の水晶占いは結構当たっていますのよ。」

「ボク、この人いいと思うよ。」

ヤワタがなんかピンとした感じだ。

「私も、いい……と思います。」

ミサキがなんか変だ。

「では、そうしましょう。」

ノブトがまとめる。


そこに写っていたのが  志津隆史  だった。





 そして、ミサキ、トキワが日本へ行く日になった。


「では、いってきま~す。ビジッ!」

「こら、トキワ。遊びに行くわけではないのよ。人をさらったらすぐに戻るのよ。」

「え~~。しょうがないか…ちゃっちゃとやっちゃいますか?」

「行ってらっしゃい。ガンバ!」ヤワタが応援している。

「早く戻るんだよ。」ノブトが落ち着いた表情で

「行ってらっしゃい。何かあったらすぐに帰ってきなさい。」ミノリはお弁当を渡す。

『はい、行ってきます。』


 地球に行くには、ボートを使って行く。本来なら豪華客船を使いたいが、他の魔族たちは、地球の行き方を知らない。王族のみにしかわからないトップシークレットである。ボートで漕いで、2,3時間したところに小さな洞窟がある。その洞窟に入ってさらに2時間ほど歩く。舗装されてない道を歩いて行くと、大きい扉がある。大きい扉には顔認証システムが搭載されており、認証されれば扉が開く。扉の向こうには異空間の道につながる。異空間の道を歩いて行き、地球へと行く。


「ミサキ姉さん、疲れた。休も。」トキワは肩を落としながら歩く。

「もう少しよ。がんばって!」トキワを励ます。


 歩くこと2時間、異空間の前に着く。

「ついに地球にいけるね。」

「そうね。食事にしましょう。」

「異空間の前で食事するの!?あり得なくない?」

トキワは驚く。

「せっかく、お母様が作った料理ですよ。食べないともったいないわよ。」

「だからって…いただきます。」

ちょっと考えで食べ始める。

「はい、いただきます。」

ミサキは手を合わせる。

異空間の前でシートを敷き、食事をする。何とも言えない光景だ。

「ミサキ姉さん。異空間を渡ると地球なんだよね。地球のどこに着くの?」

「お父様に聞いたところ、日本のどこかの海に着くとのことよ。」

「えっ?海の中とかではないよね?」

「さぁ、わかりませんわ。どうにかなるでしょう。」

「そんな、アバウトな…」トキワはあきれる。

「お父様がここを使って行ったのですから、大丈夫でしょう。何かあったらすぐに引き返しましょう。」

「わかったよ。ミサキ姉さん。」

食事をしながら話をする。食事が終わり、いよいよ異空間の中に入る。

「いよいよだね。ミサキ姉さん。」

「そうね、入るわよ!」



 二人そろって、異空間へ入る。異空間は何とも言えないにおいがする。臭い!


「ミサキ姉さん。異空間、臭い!」

「我慢よ!本当に臭い…」

「ミサキ姉さん。吐きそう…」

「あと少しよ!がんばって。」

「もう限界……」トキワは吐いた。

「トキワ、見せないで!私ももらってしまいます。」ミサキも吐いた。


吐きながら走る。星をキラキラ光らせながら走る。早く異空間から出たい。その一心で走る。コウダンもこの経験をしたのだろう。ミサキ、トキワはお父様もうちょっとましな道作ってよ。と言いたくなるほどだ。そして、何とか異空間から出た。ミサキ、トキワはげっそりしている。着いて周りを見ると、海が見える。でかいタワーも見える。


「ミサキ姉さん。ここって地球?しかもここどこ?」

「たぶん、地球でしょう。今、地図を出します。」

ミサキは地図を出す。地図を見ながら場所を特定する。

「どうやら、ここは日本の千葉県で千葉みなとみたいですね。ほら、ここのでかいタワーがありますよね。」

「本当だ。なんか静かだね~」

「まぁ、夜ですからね…しかし、カップルが多すぎませんか?」

「本当だ~。ミサキ姉さん、ほらあそこのカップルキスしてる。イヤ~ン。」

トキワは喜んでみている。

「こら、トキワ見るのではありません。」

「だって~。けど、私たちと一緒で、カップルの近くに一人の男がカップルを睨んでるよ。キモ~い。」

「そうですわね。あれ、この顔どこかで見たことあるような…」

ミサキは首をかしげる。

「ええー!あら、どこかで見たことあるよね…う~ん…あっ!」

「あっ!」


『志津隆史だ!!』ふたりが同時に言う。


「ミサキ姉さん。志津隆史、しゃがりこんでカップル睨みつけてるよ。」

「ええ。」

「あっ。カップル帰った。志津隆史、ずっと海見てるよ。なにかあったのかも?」

「そうね…。寂しそうですわね。」

ミサキは心配そうにみる。

「いや~。すぐに見つかって良かったね。」

「志津隆史さん。かわいそうですわ。」

「何で?もしかして、ミサキ姉さん、一目惚れ?」

「べっ、べつにそんなことはないですわよよよ。」焦っている…


「あらら、ミサキ姉さん、わかりやすーい!」

トキワはにんまりしている。

「何言ってるの!そんなことはありません!早くさらいましょう。」

「はいはい。わかりましたよ。」ニコニコしているトキワ。


 その時だった。志津隆史が立ち上がった。


「やばい。早くしないと志津隆史逃げちゃうよ。」

「わかってます。何か捕らえるものはありますか?」

「ああ。やばい!はやく、ミサキ姉さん。」

「ありました。黒い布の包まりそうなシートがありました。」

「姉さん。早く貸して!」

「はい!」

トキワは黒い布をもらい、ささっと志津隆史に近づく…そっと、そっと

トキワは志津隆史に黒い布をかぶせた。志津隆史は声を出さない。出せない方が正しいだろう。そしては志津隆史を担ぎ込む。ミサキ、トキワは走ってボートの方へ行く。


小さい声で

「ミサキ姉さん。やったね。」

「まだ、ほっとしてはいけません。早くボートへ乗りましょう。」

担がれた志津隆史は「ウ~ウ~」と声を出す。


「ミサキ姉さん。こいつうるさい。少し黙らせるね。」

トキワは担ぎながらも志津隆史にお腹にエルボーを食らわせた。

志津隆史は静かになってく。

「何やってるの!トキワ!しょうがないわね…。ボートに早く乗りましょう。」


二人はボートに乗る。志津隆史をゆっくりとねかせて、ミサキ、トキワは一心不乱にボートを漕ぐ。ボートを漕いだところで、ひとの気配のない所にボートを泊める。


「ハア、ハア、ハア、ハア」


二人とも息が上がっている。少ししてからトキワから話す。


「とりあえずここまで来れば大丈夫だね。」

「そうですわね。シート外しましょう。」

黒い布のシートをとる。志津隆史は気絶している。

「まぁ、こんなもんでいいんじゃない。」

トキワは安堵している。


「ミサキ姉さん。疲れたよ。少し休憩がてら寝ましょう。」

「そうね。少し寝ましょう。」

志津隆史を真ん中に川の字のように二人は眠りについた。

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