第28話 隆史のいない法務委員会①

 私、ミサキはただいま隆史さんがご不在の中、この魔界キタナラシノの法務委員会を任されています。

 以前、私家族のいざこざがありましたが、隆史さんが助けてくれました。戦争という残虐なことではなく、法律知識でここまでやってくださいました。尊敬に値すると私は思います。隆史さんがここにずっといてくれたらな・・・私も・・・


 いやいやいや。そんなことは考えてはいけません!私は隆史さんがいないからこそがんばらなければなりません。でも…心配なところが私自身、正直あります。そんな時でした。


 ”トントントン”ドアの音が聞こえました。私は


「は~い。今開けます。」

ドアを開けると、私の父、魔王コウダンお父様が居ました。

「今、大丈夫?」

「はい。大丈夫ですよ。どうぞ。」

「失礼するよ。」

 

 法務委員会のお部屋は何故か玄関が豪華で、部屋がとても質素の作りで、隆史さんがつっこみを入れていたことを思い出します。私もおかしいと思います。何故、玄関にでかい猫の絵があるのでしょう…そんなことより、お父様をお部屋に招きます。


 お部屋に入るとお父様は

「懐かしい作りだなあ~。この作りが落ち着くんだ。」

「そうなんですか?」

「私も若い頃、地球の日本にいて、高校という教育施設があってな、その作りがとても気に入って、この作りにしてもらったんだよ。」

「そうなんですか…(もうちょっと良い作りにしてほしかったです)」

「この長机がとてもいいね~。」

「そうなんですか…(この長机、立て付けが悪いです。)」

「あっ!この椅子も素晴らしい!」

「はあ…(おしりが痛くなってしまいます…)」

「お父様、ところでどんなご用ですか?」

「そうだ。そうだ。隆史君はいつ戻るの?」

「隆史さんが言うにはすぐに戻るそうです。」

「そうなんだ…ちょっと相談したかったんだけど…」

「私でよければ、お話聞きますよ。」

「難しい話だよ。」

「私、隆史さんが戻ってくるまでは、この法務委員会の代理をしています。だから、大丈夫です。」

「そうか……。」

お父様が半信半疑になっています。

「私も、法律を独学ですがお勉強しています。」

「そうか。とても良いことだよ。では、聞いてもらうか。」

「はい。」

お父様がお話を始めました。

「ミサキ、会社法って勉強しているか?」

「はい。少しだけですが…」

私は、会社法、勉強していますが本当に難しいです。条文も多すぎです。隆史さんはこれを覚えているなら化物です。別の物語に行ってくださいというほどです。

「ミサキ、質問だけど、この魔界はどういう会社があるの?」

あ~あ。半信半疑のお父様、私を試そうとしてます。

「はい。会社法は日本の法律を基本としてます。え~と…株式会社、合名会社、合資会社、合同会社…あとは…わかりません。」

「いいよ。いいよ。ミサキ。あってるよ。多分だが、隆史君は特例有限会社、民法法人とかも答えそうだね。」

「そういう会社もあるんですか?」

「あるんだよ。詳しい話は隆史君に聞きなさい。私も、わからない所結構あるんだよ。」

「そうですか…」

なんですか?特例有限会社って?民法法人って?こんなの聞いたことがありません。

お父様が

「今回は株式会社のことで聞きたかったことがあるんだよ。」

「株式会社でしたら多少、お勉強してますので、私が答えられるならお答えします。」

「頼もしくなったね~。知っているか?ミサキ。ミサキの服ってどこの会社で作られているか知っているか?」

「はい。セカンド・リテーリング株式会社ですが…」

「その会社だが、今回、会社内の内紛があってな。代表取締役の解任決議が取締役会で可決したらしい。」

「と言うことは、社長が代わると言うことですね。」

「そうなんだが、その社長は私の友人でな。どうも、嫌がらせみたいなんだ。」

「嫌がらせですか?」

何で嫌がらせなんでしょう?

「いいと思っていない役員がいて、その者たちが反旗をひるがえしたみたいだ。」

「そもそも、取締役会で代表取締役、解任出来るのですか?」

お父様が少しげんなりした表情で、

「いいか。ミサキ。会社法は条文が命だよ。会社法には代表取締役の選任、解任は基本、取締役会で出来るの。これは条文に書いてあるよ。例外もあるけどね。」

「そうですか。私、まだ勉強不足ですね…」

ちょっと悲しいです。

「それよりも、もっと大変なことがあるんだ。」

「大変なこと?」

まだ、あるんですか~!?

「今度、セカンド・リテーリング株式会社の定時株主総会があってな。そこで、株主提案で私の友人を慕っている取締役も解任させようとしているんだ。」

「あっ!!」

「どうした?」

お父様がビックリしてます。ごめんなさい…

「はい。取締役は株主総会で選任、解任出来ること知っていまして。」

「そうか。要件は簡単にいってみて?」

「たしか…議決権を行使可能な株主の議決権の過半数を定足数として出席株主の議決権の過半数により決議すると思います。これって普通決議といいますね。」

「そうだね。ちゃんと勉強しているね。」

私は疑問に思います。

「お父様、なんで役員の変更が困るのですか?」

「そこだよ。ミサキ。もし、私の友人が続投しなければ、魔界全体の服の値段が一気に上がってしまう恐れがあるんだ。新しく社長になる方は内部留保に力を入れるみたいで…」

「そうですか…(内部留保って何?)」

「そこで、隆史君の力を借りたかったんだ。けど、今は隆史君の代理だから任せてみるか。」

「えっ!?」

私は驚きます。ちょっと待ってください。私、まだペーペーですよ。私は改めて

「本当に良いのですか?」

「ああ。すぐに隆史君戻ってくるのだから、下地はミサキにがんばってもらうか。」

私は、不安いっぱいです。まず、どうしたら良いのでしょう?やり方がわかりません。あっ!隆史さん言ってましたね。わからない場合はとりあえず当事者に聞いてみると…

私は意を決して

「わかりました。がんばってみます。」

「ああ。任せたよ。隆史君の顔に泥を塗らないようにね。」

「はい!!」


私、がんばります!!

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