第3章

第23話 自宅へ 

 「やっと自宅へ戻れた…」


オレは独り言をつぶやきながら自宅の前に立つ。今は時間夕方五時半、夕日が沈む頃合いか…。魔界へ行って、いろんな事を経験してととても短い時間なのに濃密な時を過ごした。う~ん。感慨深い…

 しかしだ!何でオレ長野県の山中で迷わなければならない!!魔界から日本へ戻り、戻った場所が長野県の山中だった。何とかして山を下りたかったが、なにせ、夜だったので、さらには道に迷うのが確実だ。何とか暖をとるため、近くにあったビニール袋、傘の布きれ、落ち葉を集めて、大きい木にもたれかかってビバークした。

 ああ、あの時生まれて初めて野宿したよ…寒いのなんの!寝ようと思ったが”寝たら死ぬ”っていう言葉が脳裏に浮かんだので、寝ないよう気をつけた。そうだったのだが…ぐっすり寝てしまった。睡魔には勝てません。よくある”寝たら死ぬぞー!!”と言って、相手をビンタするシーンがあるが、ダメです。そう言っても寝ちゃいます。

 ぐっすり寝てしまったオレは生きている実感をかみしめつつ、山を出る決意をした。しかし、山の中を下ろうとしたが道という道がない。それでも下って帰るぞ!と言う意思が強かったので無理にでも下っていった。本来なら、その場所で人が来るまで待っているのがベストなんだが[帰りたい]というのがずっと頭に残る。人間、そうなってしまうと、行動しちゃうんだよね…

 やはり、無理に下っていったせいか、本当に道に迷った。オレは自分に”大丈夫…大丈夫”と言い聞かせ、さらに山を下る。だんだん、自分の体が熱くなり、のどが渇く。運良く近くに、川があったのでそこで喉を潤す。そして、また下り始める。

 道に迷っている以上、山から出られない…オレは”大丈夫…大丈夫”から”オレ死ぬの?”に心が変わっていく…道がわからない。木々が不気味に見える。風が不気味に聞こえる。何かわからない動物の声が不気味に聞こえる。オレは泣きそうになる。オレはこれを打開すべく考えた。本気で考えた。そうだ!!!


 ある人はこう言った…”山と一体になれば良い”この言葉が思い浮かぶ。山と一体になれば自然が味方してくれる。まさに、ネイチャー!山自体がオレにここを下れば帰れるよと示してくれるに違いない。では、山と一体になるためにはどうすれば良いか?そうだ!!


オレがになればいい。何言ってるのこの人?と思う人もいるだろう。この山は落ち葉がたくさん落ちている。と言うことは落ち葉がこの山の支配者だ。支配者の力を借りて、山を下ればいいのだ。オレ考えたぜ~。

 そういって、オレは落ち葉を拾い集めて、腰に落ち葉を着けて、頭に落ち葉を着け、両手に落ち葉を持ち何故かわからないが走った。だって族だもの…

オレは自分の落ち葉族を想像しつつ叫ぶ


「ウ~キョキョキョキョキョキョ」


意味はわからないがこうすれば山と交信が出来るはずだ。


「ウ~キョキョキョキョキョキョ」


オレは叫びながら走って下る。ずっとあれを叫びながら走り続ける。そして、明らかに外に出られそうな光が差す。オレはさらに叫び続け


「ウ~キョキョキョキョキョキョ」


そして、外に出られた。そうしたら、近くにいると思われる村人がオレを見て


「おめ~。何言ってんだ?バカか?」


すげ~恥ずかしかった。こんなハズい思いしたことね~。


何とか外に出れて、その村人から近くの駅を聞く。その村人はオレをなんか可哀想な目でオレを見ている。やめてくれ~!!


 駅に着き在来線に乗り、新幹線で上野まで行く。本当にお金があって良かった。コウダンのおっさんに感謝。新幹線では有名そうな駅弁を買って景色を見ながら食べる。これは美味い…そして、上野から千葉までJRで帰る。


………で今に至る。オレは自宅を見つつ、

「やっと自宅に戻れたーーーー!!」

そうしたら玄関から妹さやかが出てきて


「兄ちゃんうるさい!!出て行け!!」


そう言われました。オレは本当に悲しい。


◇         ◇         ◇


 オレは妹にしかられつつも、頭を下げ自宅に入れてもらえる。入れてもらえる!?言い方がおかしいが、そうな状況が正しい言い方に見えてしまう。リビングルームに行くと、

「あら、お帰り。ずいぶん遅かったわね。」

母、千里が言った。母は何度も言ってしまうが、美人だ。オレは決してマザコンではないよ!

「兄ちゃん。ところで、試験はどうだったの?」

「ああ、実は……」

オレは試験の事を言った。魔界の事は内緒にしておいた。でないと…

 「お兄ちゃん、何バカなこと言ってるの?ほら、精神病院に行くよ。」

 「隆史。ほら、さやかが一緒に行ってくれるのだから、準備しなさい。」

とか言われるのは間違いない。で試験の事を言うと

「兄ちゃん。おもしろい!!笑える。」さやかが思いっきりオレを蔑むかのように笑っている。

「隆史。本当のことを言ったんだよね。」

「だって、東スポにそう書いてあったんだ…。」

「なら、良いわ。嘘ついて、もし合格したよりも、まだましだと思うわ。それに、試験は逃げないのだから、またがんばれば良いじゃない。」

母はオレに労いの言葉を言ってくれてる。

「まあ、兄ちゃん。次がんばろ!次だよ!!」

「ありがとう。母さん、さやか…オレ、がんばるよ。」

オレはちょっと泣きそうになる。

「ところで…」

母さんが話を変える。

「なに?母さん…」

「おみやげ。」

母さんが手を出す。

「そうだよ。兄ちゃん。おみやげ。」

さやかも出す。

「あっ。ごめん。忘れちゃった。メンゴ。」

そう言ったら母さんが俯きながら

「さやか…あなたのお兄ちゃんは、今、いなくなったよ…。」

さやかがうるんだ声で

「お母さん…うん…わかった。二人でがんばって暮らそう…」

オレは

「お二人。申し訳ありません。」

土下座をしました。

「以後、気をつけますので、どうか、どうかお許しを…。」

「よろしい。」

「わかったわ。」

何でオレ、そこまでしないといけないの?


自分の部屋に入り、一息つく。疲れました。魔界につながるスマフォを見る。

着歴なし。メールもなし。なんか悲しい。俺から連絡してみるか。

オレはミサキに連絡してみる。

「はい。ミサキです。」

「ミサキ。オレだよ。オレ。」

「オレオレ詐欺には間に合ってます。」

「違うよ。オレ、隆史だよ。」

母さんと同じ反応しないでよ…

「冗談です。隆史さん。ご自宅に着いてのですか?」

「ああ、やっと着いた。そっちはどう?」

「はい。大丈夫です。」

「そうか。良かった。」

「隆史さん、お父様からのご伝言があります。」

「なに?」

「今はゆっくり休んで、すぐに来てもらうよとのことです。」

「そうか…。わかったよ。とりあえず、休むことにするよ。みんなによろしく伝えておいて。」

「わかりました。では、お休みなさい。」

「ああ、お休みなさい。」

オレはスマフォを置いてベットに寝転がる。その時、メールが来た。

[隆史さんへ…本当にお疲れ様でした。ちゃんとお休みください。くれぐれもご体調にはお気をつけて]

オレはメールを何度も読み返す。やっぱり、家族以外の知り合いや友達からのメールが来るってうれしいことだ。読み返しちゃうよ…


オレはベットで考える。そうだ、オレの師匠にでも報告しないと。オレは高校卒業して、法律の専門学校に通っていた。その専門学校の先生がオレの師匠。司法書士の村上美智子先生だ。オレに、法律のイロハを教えてくれた本当に素晴らしい先生だ。先生は多重債務を専門とする先生で多重債務の救済連合会の幹事まで任されているすごい方だ。この先生に出会わないと今のオレはいない。そう感じる位だ。法律を2年間みっちり勉強して、大学にオレは編入した。正直、大学の試験は簡単だった。あの2年間があったおかげでもある。


「よし、報告しに行こう。」

オレは先生に会うことにした。

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