第21話 魔界特有の法律

「コウダンのおっさん!!!聞こえてるだろ!!!もう出ろよ!!!」


オレはでかい声で叫んだ。


魔族会の者が一斉に驚く。

「どういうことだ!?」「そんなはずはない!!」「生きておられるのか!?」

こんな声が聞こえる。

ミサキは

「う…そ…でしょ…。」

これまでの驚きとは全然違う感じだ。

「お父様生きてるの…?」

トキワはオレに問いかけをする。しかし、オレは答えない。

ヤワタは今までにないまじめな表情でじっとオレを見る。ヤワタまじめになるんだ…

ミノリは

「………………………。」

何も言わず、じっと魔族会の者たちを見ている。動揺を隠すためか…

そんな時だ。

「何を言っている!!お父上は亡くなったのだぞ!!ばかげたことを言うな!!」

ノブトはオレに向かって叫んだ。

「…………………………。」

オレは答えられない。これは賭だ。早く来てくれ…コウダンのおっさん。じゃないとこの場は収めきれない。

「やはり、君の妄想か。大概にしろ!!」

ノブトが怒る。これまでに無い怒りようだ。

「君にはじつに失望させて貰ったよ…この魔界から出て行け!!」

ノブトが言うと、他の魔族から

「そうだ!出て行け!!」

その途端、出て行けのコールが始まった。手のひら返しやすい魔族たちだな。

別の魔族の者も

「なに、嘘言っている出て行け!!」

出て行け…出て行け…出て行け…出て行け…出て行け………

ああ、やっぱりダメか…このコールはオレに重くのしかかる。しょうがない…

オレは出て行こうとする。

その時だった。

”コツ…コツ…コツ…コツ”足音がどことなく聞こえる。それよりも威圧感が半端ない。

この威圧感に他の魔族たちが何かを察知したかのように静かになる。何かの威圧感が魔族会の議場を包み込むかのように扉が開いた…


やはり、魔王コウダンは生きていた。


一斉に歓声が沸き起こる。

「生きておられたぞ!!」「コウダン様、良かった…。」

いろんな声がわく。涙を流す魔族もいた。一番驚いていたのはやはり、魔王一家か…


ミサキをみると泣いており、トキワは声を張り上げて泣いていた。ヤワタはコウダンをずっと見ている。ミノリはじっとしている。ミノリは喜んでいるのは間違いないが、冷静に保たねばと言う一心でいるみたいだ。


「お父上…生きておられたのですか…?」

ノブトは何かが壊れたかのような目でコウダンに問いかける。

「ああ…」

「良かったです…」

「本当にそうか…?」

「…………はい…。」

ノブトは”終わった”という感じがヒシヒシとしている。


コウダンは魔族会全体に向けて手を掲げ

「皆の者、心配かけてすまなかった。私はこの通り生きている!!」


一斉に歓声が起こる。これはすごい。有名アイドルコンサート会場の歓声以上だ。

そして、場を沈めるコウダン。


「隆史君。よくぞ気づいてくれた。」

「いや~。良かったです。もし来なかったらどうしようと思ってしまいました。」

「ははははは…隆史君、君はやはりおもしろい男だな。」

「おもしろいって言ったら貴方のほうかと思いますが…。」

だって、生き返ってるんだもの!

「そうか?この世界は、隆史君に言ってみればこの魔界か…必ず、内緒にしておかなければならないことがあってな…魔界を統一した際、おもしろい物を見つけてね。それを当時、勇者マツドの仲間の者に調べて貰って、生き返る水晶ということがわかった…。」

なんかすげーファンタジー…

「マツドの仲間はもう他界しているが、私はその者に使ってあげようと思ったが、断られてしまった…マツドもこのことは知らない。知らせるべきでないとその仲間がいってな…私が保管しておいた。しかし、使うことが無いと思い、妻に渡した。」

ミサキ、トキワが驚く。ミサキが

「それって、お母様が占いとして使った水晶の事ですか?」

「そうだ。お母さんに渡しておいた物だ。私が死亡する前にお母さんにいって、私が死んだら水晶を近くに置くようにと言っておいた。もちろん、正式な効能は教えていない。」

トキワが

「なぜ、拉致…違った…助けを求めるために、水晶に隆史が写ったの?」

「隆史君が写ったのか…それはよくわからない。これこそ奇跡なのかもしれないな…」

ついにミノリが口を開く

「お父さん。どうして私にも教えてくれなかったのでしょう?」

「これを教えたら、もし、私がいなくなったときにみんながどうするか…私がいなくてもこの世界の平和が保たれるかどうか知りたかった。騙すようなまねをして申し訳なかった。」

コウダンが頭を下げる。

オレは疑問に残ることを言う。

「コウダンのおっさ…違った…コウダンさん、いつ生き返ったのです?」

本当にいつ生き返ったの?ファンタジー感半端ね~。

「私が眠りについてから1日くらいか、目を覚ますと混乱しているなとすぐに感じたよ。しかし、隆史君が何とかしてくれると私は直感したんだ。まさに正解だったよ。」

ノブトがオレに対して

「どうして…わかった?」

「わからないですよ。これはオレのあくまでの推測にすぎないです。オレはコウダンさんと話す機会があって、魔界の民法の相続の章をよく読めと言われました。それでです…」

「それとはどういうことだ…」

オレはコウダンに向けて

「もう、話しちゃっていいですか?」

「そうだな、もう水晶も意味なくなってしまったし、話なさい。」

「わかりました。私がこの経緯に至った事をお話します。コウダンさんは日本の法律を魔界の法律を編纂しているのはみんなご存じでしょう。しかし、日本の法律を真似るだけですと、それはただの日本に過ぎないのです。ここは日本ではありません。魔界にも特有の法律があってもおかしくありません。むしろ魔界に特有の法律があるべきです。」

さらにオレは言う。

「日本の法律の民法に【条文882条、相続は死亡によって開始する。】と書いてあります。死亡によって相続が始まります。そして、【条文887条、889条に相続人の順位。890条に配偶者は常に相続人の旨】が書いてあります。まだ細かい条文はありますが、これは基本、魔界も一緒。これが法定相続であります。これを覆すのが【民法907条、遺産分割協議】、さらには【遺言、民法968条1項】になります。これだけでもたくさんの条文があります。さらには他の条文もありますので掛け合わせてつかう、パズルのようなものです。」

オレが説明ちっくに話すとトキワが

「ごめん。何言ってるかわからない。わかりやすく言って。あと、お父様が生き返ることが主なんだから簡潔に言って。」

せっかく教えてあげてるのに…心もとないです…

「わかったよ、トキワ…つまりは、魔界特有の法律があって、日本の民法の相続の前提の条文と魔界の民法の相続の前提の条文が違うんだ。もう一度言うと日本の民法は

【相続は死亡によって開始する。】だけど魔界の民法は【相続は死亡によって開始する。、生存していれば相続は無効とする。】と書いてあるんだ。」

ミサキが

「つまり、お父様が生きていたから、相続は無効と言うことですか。」

「そういうこと。つまり、相続が無効である以上、相続が発生してない。遺言の撤回やら、遺言の撤回の撤回のお話自体関係なくなるんだ。だって相続が無効だもの…何もなかったと言うことだよ。」

トキワが

「じゃあ、なんで、遺言や遺言の撤回などあったの?」

「これはコウダンさんに聞かないとわからないけど、多分、保険だと思う。」

「保険?」

「どんなに、立派な法律を作ったとしても、知らなければ意味が無い。遺言なら死者の最終意思ぐらいはみんなにわかってもらえる。だから書いたんだと思う。最初は、長男ノブトさんに任せようと思ったんだと思う。しかし、やっぱり、みんな仲良く法定相続にしようと思ったんだと思う。その先はなぜノブトさんに相続させようとしたのかわからない。どうしてです?」

コウダンが

「私も遺言の撤回の撤回は知っていた。これは隆史君の実力を見るためだった。遺言の撤回の撤回は遺言の意味が無くなることを隆史君はどうするか知りたかった。それ以前に、生きかえることで相続が無効になることをすでに知っていた。よく気づいたと言わざるを得ない。」感心するコウダン。ノブトが

「それでは、お父上が生き返ると言うことの答えになってない。」

「だから、オレもわからない。あくまでの推定だよ。コウダンさんが相続の章をよく読めといわれたことでと言う推定と生存が確認されれば相続は無効とするというという推定でひょっとしたら生き返るの?という導きをしたにすぎないんだ。だから一種の賭にしたにすぎないんだ。」

ヤワタが口を開く

「やっぱり、シヅッチおもしろい!」

ヤワタがオレに抱きつく。やめて…やめて…気色悪いです。

「あ…ぁ…ありがとう…」

「何だよ、シヅッチ。ほらミサキ姉さん、トキワも」

ミサキ、トキワも無理矢理呼び寄せ、みんなで抱きつく。ありがとー!!ヤワタ!お前はできる男だ!!

「ありがとうございます。」笑顔のミサキ。

「ありがと…」少し恥ずかしがるトキワ。


魔族会全体に大きな拍手がこだまする。


うだなれるノブト。さて、ノブトの真意でも聞きたい。なんだかんだでも家族のことは考えてたはずだ。オレは


「ノブトさん。あなたの真意を聞きたい…。」

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