第22話 包囲外からの攻撃

「一体、何が起こった!?」

「わかりませんッ。突然、包囲していた船の一隻が爆散しました!」

 その爆発が起こったのは、ミラさんが相手から送られてきたメッセージの条件について決断し、答えを出そうとした瞬間だった。


 ミラさんが俺に身体を向けてから、出した答えを伝えようとしたその時。突然起こった出来事に言葉を途中で止められていた。そして、モニタに映る爆発の光を見て何が起こっているのか、状況を把握しようとステインさんに向かって声を震わせながら問いただしていた。


 ステインさんも突然起こった事に動揺しながらも、手元の端末機を駆使して何が起こったのか状況を理解しようとしている。そして掴んだ事実は、ジュペンス号が包囲されていた時に、その包囲の外から攻撃が飛んできた、という事。


「ミラ様。どうやら、ジュペンス号を包囲していたあの船は、超長距離から撃たれた光線が船体に当たり爆散したもようです。ただ、撃たれた方向に探知機を向けても光線を撃ったと思われるような宇宙船が確認できません」

 ステインさんの確認した状況では、かなり離れた距離から撃たれた光線がジュペンス号を包囲していた宇宙船に当たり、先ほどのモニタに映った爆発が起こったという。ジュペンス号に積んである探知機では見つけ出すことが出来ないぐらいに、離れた距離から撃たれたらしい。


「コチラから見えない場所から撃ったとなると狙ってやったのか、それとも偶然に撃たれた光線が当たってしまったのか、判断できません」

 冷静に状況を調べ上げていくステインさん。光線を撃った相手が故意なのか、それとも偶然なのか分からないと、詳しく確認しようとする。


 再び包囲した相手とは別の宇宙船、包囲の外から撃たれた光線が飛んできた。その水色の光線は、包囲していた別の宇宙船に的確に当たり、もう一つの爆発が起こった。


「アレは、狙って当てているようです。……どう対処しましょうか、ミラ様?」

「……」

 どう対処するべきか判断を仰ぐステインさんに対して、どうするべきか悩み迷っているのか、何も言葉が出ないミラさん。


 突然襲われて、逃げ出した先には包囲網が敷かれている状況。そして、次に起きたのは包囲網の外から飛んできた、敵か味方か分からない存在からの砲撃。次々に撃って、ジュペンス号の周りで威嚇しながら囲んでいた宇宙船が容赦なく撃ち落とされていく状況。


 突然の出来事に慌てているのは、ジュペンス号を包囲していた相手も同様のようだった。


 ジュペンス号の動きを封じようと、威嚇しようと砲口を向けていた何十隻もの宇宙船が一斉に、グルリと船を横回転して向きを変えようとしようとしていた。攻撃の飛んできた方向に急ぎ向くことで防御態勢に入るためか、それとも迎撃に入ろうとしたのか。


 しかし、宇宙船の向きを変えている途中でも、容赦なく外から攻撃が飛んできては宇宙船の横っ面に被弾していき、次々に包囲していた船は爆散していった。


 飛んでくる水色の光線は止む様子が無く、雨のような砲撃が長時間続く。


 そして気づいた。ジュペンス号は、攻撃目標から外されているようだった。次々に爆発していく船が目の前や周りに居るのに、ジュペンス号には一発も攻撃が当てられていない。


「今のうちに、船を動かして包囲網から抜けましょう」

「わかりました、ミラ様」

 状況をうまく利用して、周りの船の意識がジュペンス号から外れているうちに包囲網からゆっくりと逃げ出す提案をするミラさん。

 逃げ出そうとジュペンス号を動かしても、威嚇射撃をしてきた船が外からの攻撃に意識が持っていかれているようで、包囲網を抜けても気づかれる様子はなかった。


 包囲網を敷いていた宇宙船を狙って、外から飛んでくる攻撃は続いていた。しばらく経った頃、探知機に捉えられる所までやって来た宇宙船を見た時に、ミラさんとステインさんが呻くように苦い声を出して、近寄ってきた船に反応した。


「ッ、まさかそんな……」

「ミラ様、あの船団は……!」


 ブリッジに居る二人は、包囲網から抜け出すキッカケを作ってくれたあの宇宙船に見覚えが有るのだろうか。二人の驚いてしまい思わず漏れた、という声を聞いて思う。


 近づいてきた船団は、全部で十一隻あった。その船は全体が真っ白な色をしていて、暗い宇宙の中で特に目立っていた。そして、全てが同じ形をしているように見えた。あの十一隻の宇宙船は、同じグループに所属するものなのだろう。

 そして、超長距離から撃って当てる事が出来るぐらいに性能の良い照準器を持ち、船を爆散させる事が出来るぐらいに威力が大きい武器を搭載している。


 ミラさんの表情を見てみると、不愉快そうというか、不機嫌そうなか表情をして白い船を睨みつけていた。その様子を見て俺は、あまり良くない状況であるらしいことを察した。


 けれど、ジュペンス号が追い詰められ包囲されて、殺されてしまうかもしれないという危険な状況から、あの船団が現れたおかげで脱することが出来た。


 全滅させるために撃ち漏らしが無いようにしているのか、ジュペンス号を取り囲んでいた船に執拗に攻撃を続けては、次々と船が堕ちていく光景が作られていく。

 ついには、ジュペンス号を取り囲む何十隻もあった宇宙船は、外からの攻撃に避けることも出来ずに被弾していき、船は次々に爆発して残り二隻にまで減っていった。ジュペンス号の周りには、多くの宇宙船の残骸が漂う場所となっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る