襲撃
第19話 突然の攻撃
地球以外では初めての惑星降下を終えて、しばらく経った頃。
「えっ!? わっ!」
自室のベッドで休んでいる時に突然、宇宙船が大きく縦に揺れてベッドから振り落とされた。一体何が起こったのだろうか状況を確認しようと、立ち上がろうとしたけれど、再び大きな横揺れ。
立ち上がっては危ないと判断した俺は、驚きながら腰を落として床に手をついて船の揺れに耐える。宇宙を航海中にも、惑星エテリへの降下の時にも、船がコレほど大きく揺れる事は無かったのに。一体、何が起こっているのか。
揺れは断続的に続いて、大きな揺れが予兆なく起こっていた。そして大きな揺れだけではなく、いつもの宇宙船と違って小さな揺れがずっと続いていた。
宇宙船に隕石にでもぶつかったのか、隕石群なんかに突っ込んでしまったのかと予想した。船は何度も揺れているし、遠くの方で爆発音のような物も聞こえた。
そんな時になって、俺は何故か他の宇宙船に襲撃されたのではないかと感じた。
大きな揺れが合計五回も起こったあと、先程までの揺れは収まって部屋の中は静かになった。
部屋で待機して連絡を待つべきか、それともブリッジへ向かって状況を把握するべきか。これからどうするべきか考えいると、部屋に備え付けられている通信ウィンドウが起動して、向こうから連絡がやって来た。
「ユウさん、大丈夫ですか!?」
「はい、今のところ怪我は無いです」
連絡を入れて来てくれたのはミラさん。彼女は、かなり慌てた様子で俺の安否を確認してきた。先ほどの揺れによって、寝ていたベッドは定位置から大きくズレて、部屋の調度品の多くも倒れていたけれど、幸いにも俺の身に怪我はなかった。
「分かりました。貴方は、部屋で待機を……ッ。いや、今すぐにブリッジまで来てもらえますか?」
「え? ブリッジに行けば良いのですか?」
緊迫した表情で出された指示が、二転三転する。とにかく、ミラさんの指示はブリッジに来てくれという事。この宇宙船ジュペンス号のブリッジは、船の中心部分に設置されていて、宇宙船の中では一番安全な場所だと思う。すぐに避難しに来いという訳だろう。
何が起こったのか詳細を聞きたかったけれど、先ずはブリッジに行ってから聞いたほうが良いだろうと考える。
「そうです、お願いします。次の攻撃までには、少し時間の余裕が出来ました。揺れが収まっている今のうちに、ブリッジへ移動して来て下さい!」
そう言うと、ブツリと俺の返事も待たずに通信が急に切られた。ミラさんは、”攻撃”と言っていた。やはり、先ほどの直感通り宇宙船が襲撃されているのだろうか。
ミラさんは少しの時間の猶予しかないと言ってた。だから、考えることは後にして言われた通り、すぐにブリッジへと向かう。
廊下に出て、異変に気づく。いつも宇宙船に発生している重力が弱くなっていて、しかも船が左に傾いている気がする。そして、空気も心なしか薄い気がして、息苦しいという最悪な事態。
宇宙船ジュペンス号には、重力発生装置というものが搭載されていて、宇宙にいる間でも船内に重力が発生していて、普通に地面に足をつけて生活出来ていた。その力が弱まっているとなると、先ほどの揺れで装置にダメージが入ってしまったのだろうか。
空気が薄くなっているのは、船内にある酸素タンクが壊れてしまったのか。それとも、船に穴が空いてしまい、ソコから外へ漏れ出ているのか。どちらにしても、宇宙船内に空気が無くなってしまうかもしれないという怖い想像が頭をよぎる。
「うっ!」
ブリッジまでの道の途中、船が大きく傾いて右の壁に身体が叩きつけられてしまい、思わず呻くような声が出た。
船の傾きによって、落下するように壁に右肩を大きくぶつけてしまい、痛みを感じていた。けれどブリッジまでもうすぐだと自分を鼓舞して、痛む右腕を動かして壁に手をついて、姿勢を立て直す。
そして、ブリッジを目指して歩き出す。
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「攻撃予測、もっと早く!」
「これ以上は無理です、ミラ様!」
ブリッジにたどり着くと、ミラさんとステインさんの二人が声を出し合って端末機を使い宇宙船を操作しているようだった。そして二人の何時もと違う落ち着きを失った様子に、俺は圧倒される。
ブリッジには、ヨハンナさん、ライラさん、そしてドミナさんの三人は居なかった。彼女たち三人はまだブリッジへと辿り着いてないだけなのか、それとも別の所で対処しようとしているのか。
宇宙船の前面を映すモニタに目を向ける。その画面の映像が見たこともない早さ流れていて、宇宙船がものすごく速いスピードを出していることが分かる。その画面にチラチラと映る、赤い光の跡。
どうやら、赤いアレが船に当てられて爆発し、船が揺れているんだろう。
視線を宇宙船の後面を映すモニタへ向ける。そこには、二隻の船が並んで居て赤い光線を撃ってきているのが見えた。宇宙船ジュペンス号は今、モニタに映って見える二隻の船に、攻撃されている途中らしいということが分かった。
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