第18話 護衛任務
宇宙船ジュペンス号を譲り受けて船長となったミラ。そんな彼女から、星から離れることになっても、引き続いて護衛をして欲しいという依頼を受けて、宇宙に出ることになった私。
と言っても、高貴な生まれのミラにとっては、母星である惑星エムナに居た時のほうがずっと危険で、宇宙に出てしまった今のほうが安全だったりするので、星を出る前に比べて思っていた以上に暇になってしまった。
船員達が探査の仕事を行っている時には、私は船の中にあるトレーニングルームで身体を鍛えていた。そして、現地調査が必要となる惑星に宇宙船を降ろした時には、彼女たちの護衛としての仕事を務める事になっていた。
しかし大半が、次の探索地となる場所への移動時間だったし、惑星へ降りていくことも極稀だった。だから、自分のために使える時間が多く出来たので、丁度いいからと思いトレーニングの負担を増やして、一から身体を鍛え直したりしていた。
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そんな生活のサイクルが崩れたのは、副船長のステインがある惑星に降りた時に怪しげな男性を見つけたからだった。
男性発見のきっかけは、無人惑星から飛んできた電波を宇宙船に積んである探査機器がキャッチしたから、だっただろうか。無人の惑星であるハズの場所から電波が飛ばされた原因を探るために、宇宙船を惑星に降ろして調べてみる事になった。
探索に行くステインの後に付いて、私はいつものように護衛の仕事をしていた。そして、機械に入れられた男性が発見される。
ステインはすぐさま彼を助けようと必死になっていた。けれど私は、最初に彼を見た時に不信感を抱いてしまった。後に杞憂だと分かるのだけれど、その時は何故こんな場所に男性が生きたまま放置されていたのか疑問に思ってしまい、そんな彼を見つけたという偶然を信じることは出来なかった。
船長のミラや船医のヨハンナには、心配し過ぎだろうと言われてしまったけれど、乗船員の中の誰かを狙った刺客か、それとも情報を探るように任じられた間諜、ハニートラップの類ではないのかと疑ってしまった。
もちろん、全宇宙の中で数えるほどに少ない男性をそのように使って、我々に何かしようとするのは、効率が悪すぎるだろうとも考える。けれど、ミラや船員達を守るという使命のある私にとって、疑問を持ったまま彼を船に受け入れることは出来なかった。
そんな疑いを晴らすために、宇宙船に乗せる際には男性の事を、隈なく念を入れて調べてみた。
彼が目を覚ますまでの一週間でヨハンナに手伝ってもらい、彼の身体について調べてみた。が、刺客としては身体付きが余りにも貧弱であった。その他にも、修行を積んだような様子も見当たらなくて、身体には傷一つ無く綺麗で、素人そのものとしか思えなかった。
そして彼が目を覚ました後は、ミラが彼の下を訪ねて話し合いをするという事で、話し合いの様子を少し離れた位置で観察をしてみた。その会話において、ユウと名乗った彼に怪しい素振りは見当たらなかった。
それから更に一週間、医務室で過ごす三日間と個室に移ってからの四日間を過ごす彼を影から観察を続けたけれど、外へ連絡を取ったり他の船員に危害を加えるといった様子は無くて、ようやく本当に、そして偶然にも彼を発見したということ受け入れることが出来た。
そうなると、新たな問題が出てきてしまう。彼の取り扱いについてだった。
宇宙には、本当に少数しか生きて存在していないという男性。そんな男性が居る宇宙船。その事実を外に知られてしまったら、たちまちに宇宙船ジュペンス号は敵に狙われることになり、行く先々で襲撃が行われるだろう事は明らかだろう。
ミラは宇宙船内で彼の身柄を保護すると宣言したけれど、私は直ぐにでも他に渡してしまった方が良いと考えていた。
しばしの話し合いで、ミラから彼の存在を隠して情報収集を進めて、良きタイミングで彼の情報を外に出すときっぱり言われて説得されてしまう。確かに、考えなしに誰かに渡してしまっても、男性関係の事だからその後に無関係で居られるはずはないだろうと思う。そして、今はまだ存在を隠していたほうが、都合が良いだろうと納得させられてしまった。
それからしばらく経った後の事だった。ミラは人が密集して商売が行われているという惑星エテリに向かって、その星に彼を降ろすという。不用心にも程がある考えに、何とか説得して宇宙船から降ろさないで済むように出来ないか、私達二人はブリッジで話をしていた。
「ただでさえ、人が多い星なのに……。彼を、本当に降ろすんですか?」
「えぇ。ライラの要望が有ったから、惑星エテリに向かうけれど。その補給のついでに市場でも見学してもらおうと思っているの」
「しかし、あの星は宇宙一安全だと謳っては居ますが、裏では悪い噂もよく聞きます。もう少し、情報を集めたり準備をしてからの方が良いのでは?」
私の提案に考える素振りをしてくれるミラだけれど、彼を星に降ろすという考えは変わらないようだった。
「一応、ライラとヨハンナには変装用の道具を用意させています。それに、万が一があってもドミナがいつもの様に助けてくれるでしょう?」
そうミラに言われてしまうと、もう反対することは出来なかった。彼女は私を頼ってくれている。そして、私は彼女の願いを叶えてあげたい。
すぐさま護衛の準備をすることにして、惑星エテリへ向かう時間を過ごした。
結局、惑星エテリで市場の見学がミラの考え通り実行されて、一度だけ取るに足らない泥棒騒動が有っただけで、それも事前に潰すことが出来たので、他には何も問題は起きなかったので、ひと安心することになった。
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