第15話 惑星エテリ
目的地である惑星エテリが、ブリッジのモニタから見えるぐらいの距離まで来たと連絡を受けてから、惑星エテリの商業地区と言われる場所にある着陸場に宇宙船が着陸するまで、工程全てが終わるまでに体感では一時間も掛かっていないぐらいスムーズに進んだ。
ミラさんとステインさんの二人があまりにも自然で何の問題もなく堂々と進めるので、彼女たちは何度も同じように惑星降下を行っていて、既に慣れているのだろうと感じさせられた。
着陸が完了してからも色々と手続きが必要ということで、もうしばらくは宇宙船の中で過ごすことになるらしい。
その待ち時間を使って、エテリに降り立つ前の準備をするということになった。そのためにブリッジから移動することになり、ステインさんの案内で見知らぬ部屋へと連れてこられた。
「ユウ様。そのままの格好で外に出ると少し拙いので、着替えていただきたいのです」
ステインさんは、そう言いながら部屋の奥から何かを取り出してきて、俺の目の前に付き出した。どうやら、宇宙船から降りて外に出るために、渡された物を身につけないといけないらしい。
「え、っと……? コレを付けるんですか?」
「はい。こっちを胸に付けて、コレは頭から被って下さい」
ミラさんから手渡された妙なモノを見る。ひとつは合羽のような黒い厚手の布で頭からかぶるように言われる。そして、もう一つは丸くて薄くて、なのにフニャフニャとした肌触りの何か。ソフトボールの球ぐらいの大きさで、それが二枚差し出されている。
「コレはどうやって……?」
黒い布の方は、頭から被って顔を隠すためだろうと予想できるけれど、フニャフニャの皮のような物については、どう付けるべきなのか悩んでしまい戸惑う。
「ココをこうして、こう付けて下さい」
見かねたステインさんが俺の背中に回って、そのまま俺の服の中に手を突っ込みフニャフニャの物体を胸の部分にピタッピタッと並べて貼り付ける。グニグニと皮の上から胸に押し付けられて、一体何をしているのかと疑問に思いつつなすがままになる。
「えっ?」
「力を入れると、外れてしまうので気をつけて下さい。コレで一目で男性だとバレることは少なくなると思います」
思わず付けられた物に手を伸ばそうとした所で、ミラさんに声で止められる。そして、しばらくするとようやく彼女が何をしたかったのか理解した。なぜなら、その皮が徐々に球体になって膨らんできたからだ。
このフニャフニャの物体を胸に付けることで、擬似の乳を作り出してボディラインを補整し、女装させられたのだと。つまり、男性の姿で降りたら問題が有るのだろう。
何日か前に全宇宙には男性が極端に少なくなっていると言うことを聞いたのを思い出して、男性である俺は姿を見せるだけでも拙い事なのだろうと理解する。
「後は、この装束も頭から被って下さい」
ミラさんの指示通りに頭から被って顔を見えないようにして、腕を通して全身を隠す。
「どうですか?」
「うん、良いですよ」
ステインさんから合格点をもらって、一安心する。
「ただ、あくまでも応急の処置なので男性だとバレる可能性もありますから、くれぐれも注意して下さい。声を出すのも極力減らしてくださると助かります」
声を出すことで、聞く人によっては性別がバレる可能性も有るということ。だから、話すことも必要最低限にと、心がけるように言われる。
こうして準備を終えて、ブリッジへと戻る。
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ミラさんが手続きを終わらせたと言って、ようやく宇宙船から降りる事に。
ステインさんは、宇宙船の中で待機ということでミラさんと護衛のドミナさん、そして俺の三人で宇宙船の外へ出る。
既に外に出る準備を終えて待っていたライラさんと廊下で合流する。これで、船には副船長のステインさんと船医のヨハンナさんの二人だけが残り、船長のミラさんと護衛のドミナさん、そしてこの星に来た一番の目的を持つメカニックのライラさん、そして見学するために俺の計四人が、外へ行くことになった。
宇宙船の外に出ると、工場のような鈍色の金属で囲まれた場所へと出る。地面も、何かの金属で出来ているのか、歩く度にカツーンと高い音がなった。
そして、着陸場が思いの外に広いということを今更ながらにして気づいた。遠くの方まで空間が広がっていて、先の方に宇宙船だと思われるシルエットが見える。
しかも、上を見上げると、先ほど降りてきた天井があった。そこは、先ほどジュペンス号が入ってすぐに閉まったはず。なのに、今もまだ壁の先にある外が見えていた。
どういう事かというと、天井部分が全面モニタのような映像を映す装置が取り付けられているのか、その装置によって壁越しの先が表示されて見えるようになっているので、まるで天井が無いように錯覚させられた。
そして、今まで乗っていた宇宙船ジュペンス号を外から初めて見ることが出来た。まるで、車のような形をしていて先端が尖っている。そして、そのあまりの大きさに驚く。
ジュペンス号のスペックはライラさんから教えてもらい、大きさも知識として知っていた。けれど、外から見てみると想像していた以上に威圧感が有って、大きく見えた。
今まで、こんな乗り物に乗っていたのかと再認識した。
「ようこそ、いらっしゃいました」
「連絡した通り、すぐに案内を頼む」
先頭を進んでいたミラさんが、いつの間にか見知らぬ女性が話し合っていた。惑星エテリの住人だろうか。その女性の案内で、これから目的のモノを買いに行くのだろうか。色々と疑問に思ったけれど、先ほどステインさんに言われたどおり、声は出さず黙っておく。
俺はミラさんとドミナさん、そしてライラさんの後ろを歩いて、はぐれないように注意しながら後を付いて行った。
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