第14話 惑星への降下
ライラさんの研究開発のために必要となる部品を買い出す為に、そして船の補給の為に向かうことになった惑星エテリについての話し合いが行われてから、約三日程の時間が経った。
この三日間に俺は、既に日常生活の一部となったライラさんによる現代技術の講義を受けて、空いた時間は学んだ知識の復習等をして過ごした。
船長のミラさんや、副船長のステインさんは宇宙船の積み荷確認をして、船に足りないモノ、惑星エテリで買う予定のモノを洗い出したりして、色々と準備をしているようだった。俺も手伝おうと申し出たけれど、やんわりと断られてしまった。どうやら、男性に雑用を任せるなんてとんでもない、という考えらしい。
ブリッジから惑星エテリが見える距離まで近づいた頃、ミラさんから連絡を受けて見に行ってみることに。
ブリッジには、ミラさんとステイン。そしてドミナさんが居た。船医のヨハンナさんと、メカニックのライラさんは見当たらなかった。
「もうしばらくで、エテリに到着します」
連絡を受けてブリッジに入ってきた俺に向けて、ミラさんが声をかけてくれる。
「降下の様子を見てみたいんですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
突然のお願いに、微笑みながら見学の許可を出してくれるミラさん。ありがとうございますと返事をして、ブリッジの正面のモニタに目を移す。
そのモニタの真ん中に、星が映しだされていた。その星は特徴的で、星の上下で線が引かれているように、全く異なる様相をしていた。
星の上の部分は、緑と青と少しの赤っぽさが混ざり合うような色が存在していた。どうやら、海と森と大地が見えているのだろうと予想する。
しかし、星の下半分全体が白以外の色が見えなかった。丁度星の中心辺りを測って真っ二つに、綺麗に分けたような妙な見た目。
「アレが、商業が盛んなエテリという星ですよ。近くの星からも、たくさんの宇宙船が商売をしに来ているんです」
モニタを眺めていた俺に、ミラさんが解説を加えてくれた。あの星が、これから降りる星で間違いないらしい。
目を凝らしてみると、星の周りにキラキラと黄色く輝く何かが見える時がある。どうやら、アレは他の星からやって来た宇宙船が、惑星に降下しているらしい。
ミラさんがモニタに表示されている映像を望遠にしてくれて、見るとロケット型や、円盤型、ドーナツのような形をした物等、色々な宇宙船を見ることが出来た。
「星の色が上下に違って見えるのは、惑星エテリが2つの地区に分けられているからです。上は自然保護地区で、下は商業地区です。下の白に見える物は、全部人工物ですよ」
初見で疑問に思った色が違って見える理由を尋ねてみると、ミラさんが答えてくれた。白に見える、星の下部分によく目を凝らしてよく見ると、確かに真っ白ではなくてキラキラと光る銀色の金属的な建築物のように見える。
「今から、この進路でジュペンス号を下ろす予定です」
俺の見ていたモニタに予定進路を表示させて、これからのジュペンス号の行動について丁寧に説明される。船は、惑星エテリの中央部分から少し下の商業地区に向けて、惑星の回転軸に合わせて沿うようにしながら、ゆっくりと星に突入していくらしい。
「突入の時には、少しの衝撃と惑星重力への適応が有りますので、何か身体に異常が有りましたら、すぐにおっしゃって下さい」
刻々と惑星への突入準備が進んでいき、俺はブリッジの隅に有るイスに座らされて、身体の固定をされながら、惑星降下時の注意点を聞かされる。身体を固定しているのは、自動車のシートベルトのような右肩から左腰までの斜めがけの紐と腰を抑える程度の簡単なものだった。
コレで大丈夫なのんだろうかと、少し不安になりながら準備は終わり、ブリッジの様子を眺めていた。
船長のミラさんはブリッジ中央に立ったまま、手元の端末機を手早く操作している。その横で、同じように立ちながらモニタを注視している副船長のステインさん。二人の後ろで、直立不動のドミナさん。
俺だけ席に座らされて良いのだろうかと感じつつ、初めての惑星降下に言われるままに邪魔をしないように大人しくしておく。
彼女達が立ちながら作業を進めているということは、星へ突入する時にあるだろうと予想する衝撃は、それほど大きなものではないのかもしれないと考える。
船が順調に進んで、モニタに表示されている星の大きさがどんどん大きくなっているように見える。次第に、モニタの下半分が星の映像で埋められた時、ミラさんが言葉を発する。
「これより、ジュペンス号は惑星エテリへと降下。衝撃に注意して」
その言葉を聞いて、俺の緊張感が高まっていく。ただ、俺だけに言ったというよりも、船内に放送で流している様子だった。
モニタに少し赤みがかった様子が有ったので、いよいよ突入かと心構える。けれど、想像していたよりも船の揺れは少ない。と言うか、指摘されて少し揺れているかもしれないと気が付くぐらいの揺れだった。
その揺れは時間が経っても変わらず、しばらく続いた。
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「もうベルトを外しても良いですよ。気分はいかがですか?」
十分ぐらい経った頃。モニタを凝視していると、ミラさんから声を掛けられる。内心で、早いなぁと驚きつつも、言われた通りにベルトを外して立ち上がる。
星に降下するときには、重力で身体全体が押し潰されるぐらいの衝撃が有るだろうと予想していたのに、それは一切なかった。重力変化があるとも説明されていたのに、立ち上がっても身体が重いようにも軽いようにも変わったように感じない。
「身体の調子は問題無いです、今のところ怠さや痛みもないです。ただ、身体の重さが全然変わった感じがしないんですけれど?」
「あぁ、良かったです。重力の変化を感じないのは、この三日間で宇宙船内の重力を調整して慣らしたからだと思います」
ミラさんの答えを聞いて納得する。そして再び、モニタに目を向ける。
地球と同じように、青い空に白い雲が広がって見える。その空には、宇宙船と思われる大きな翼を横に生やした飛行機型の物が一機飛んでいるのが見えた。
そして空から目線を下げて見てみると、銀色に輝く何かが地面の代わりに有るのが見える。凹凸もない、まっ平らな地面が地平線の向こうまで広がっているようだった。これから、何もないように見えるあそこに降りるのだろうか。
「それじゃあ、船を下ろしますね」
ステインさんがミラさんに声をかけて、手元の端末機を指先で操作し始める。先ほども気になっていたけれど、惑星降下時等の宇宙船の操作等は、操縦桿を握って動かすというような方法では無いみたいだった。
そんな作業をじっくり眺めていると、モニタに映る銀色の地面が突然大きく口を開いた。どうやら、銀色の地面に見えていモノは建造物のようで、天井が開いた先に着陸場が有るようだった。その中に船を下ろすらしい。
「到着しました」
着地の時にも、船への振動は感じなかった。コレは、宇宙船の性能が良いのか、それとも操縦者の腕が良いのか判断に迷う。
そんなこんなで、無事に目的地の惑星エテリへと到着した。
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