第16話 荷物の受け渡し
宇宙船から降りた時に最初に接触してきた、エテリで商売をしていると思われる女性。その女性に案内されて、品物が置かれているという倉庫に向かうことになった。
既に必要な品物の注文は来る前に終わらせているらしく、その品物を確認してから受け取るだけの状態であるらしい。その品物の受け取りが終わった後に、惑星エテリで店舗販売が盛んな区域に見学を行く予定だという。
案内してくれている女性の後に船長のミラさんが続いて歩く。そのすぐ側に、ミラさんを守るようにして控えているドミナさん。
いつの間にか、二人ともが襟の付いた黒色の背広のように見える衣装を着ている。下もズボンを履いていて、非常に凛々しい雰囲気が漂っている。宇宙船内で何時も着ていたピッチリとしたウェットスーツから、商取引をする為に着替えたのだろうか。
そんな二人の後ろに付いて、ライラさんと俺が並んで歩いている。ライラさんは、俺と同じように黒に近い紺色をしたローブのような、身体のラインを隠してしまうゆったりとしたワンピース型の衣類を着ていた。
俺もライラさんとお揃いのような服を着ている。ただ、一箇所だけ違っている所があって、ライラさんは頭に布を被せずに顔を出しているが、俺は頭まで布を被せて顔を全て隠している。
コレは、ステインさんが色々な人達が居る星に降りた時、俺の性別が男性だと知られて騒がれる可能性が有るための対策だった。そして、ライラさんとお揃いの衣装である理由は、現在船に保護されている存在である俺の立場を、今のところはライラさんの助手という事にして、それを回りに示す為だった。
宇宙船の降り立った広々とした着陸場からしばらく歩くと、次第に色々と入り組んだ細い道になって行く。廊下の床や壁は輝くぐらいに真っ白で、窓もなくて方向感覚が分からなくなるような不思議な道。
そして途中からは歩かずに済むような自動の床に乗って移動したので、宇宙船ジュペンス号からかなり離れた所まで来たんだと思う。道は複雑で分かり難くなっていて、一人では迷ってしまい絶対に宇宙船まで戻れないだろうと思い、はぐれないようにしようと皆から目を離さず付いて行った。
そうやってしばらく進んでいると、倉庫と思われる場所へと辿り着いた。その場所には、見通せないぐらい奥まで空間が広がっていて、そして見上げるぐらいの高さまで金属のコンテナのような容器が並べられて積み重ねられていた。
「ご要望の物は、こちらに揃えておきましたのでご確認下さい」
今まで案内してくれた女性が、倉庫の一角を手で示す。そこには、コンテナが一個だけ離されて置かれている。どうやら、あのコンテナの中に注文を出して揃えてもらったという品物が入れられているのだろうと予想する。
「ありがとう、早速確認させてもらうよ」
ミラさんが代表で案内してくれた女性に返事をして、コンテナに近づき中に入って行き、あちら側で用意してくれたという品物を目で見て確認することに。と言っても、俺は何を注文して何が用意されていいないとダメなのか教えてもらっていなくて、品物の確認することが出来なくて、何かしら手伝おうとする申し出てもコンテナの外で待っているように言われてしまった。
結局は確認作業については、ミラさんとライラさんの二人が行い、仕事のない俺はコンテナの外でドミナさんと一緒に待ちながら倉庫の中の観察をしていた。
数分経った後、確認作業が終わったのかコンテナから二人が出てきて、すぐに扉を閉じる。
その後に、ライラさんが何かを懐から取り出してきて扉に取り付ける。手に収まるぐらいの、コンテナの扉に押さえつけながら四角いそれを指で弾いていって、何かの操作している。
一体なんだろうと疑問に思いつつ見ていると、すべての作業が終わったのかミラさんは控えていた女性の方に歩いて近づいていき、ライラさんは疲れたといった様子で俺たちの方に近寄ってきた。
「終わった、終わった」
「おつかれ」
近づいてきたライラさんに、今まで黙っていたドミナさんが声をかける。声を出すことが少ないドミナさんだけれど、他の船員に対しては短いながらに声を掛けることが多々あった。
どうやら、まだドミナさんと俺の間には交流が少なくて壁があるのだろうと感じる。ライラさんとドミナさんが言葉を交わす様子を見て、そんな事を考えながら俺もライラさんに声を掛ける。そして、すぐさま先ほどの気になった事について聞いてみる。
「お疲れ様です。ところで最後のは、一体何をやっていたんですか?」
「ああ。アレは受け渡しの確認を終えたから、この後にコンテナが開かないように私が用意したロックを掛けていたんだ。後は船に運んでもらって全部終わり、ってこと」
念のためのライラさんが予め用意した盗難防止用のロックを掛けて、品物の売買が成立ということになる。そしてこの後に、コンテナを船に運んでもらうまでの間で、中の物を弄らせないようにするためなのだそうだ。
品物の確認が終わった後は、コンテナの中の品物についての管理責任は受け取る側に移るので、自衛手段をこちら側で用意しないといけないらしい。
ちなみに、最後に取り付けた機械はライラさん特製で色々な所に活用しているが、今まで誰にもセキュリティを破られた事が無いのが自慢だという。
「お待たせしました。それでは皆で表の店に出てみましょう」
目的であった商品受け取りが終わり、もう一つの目的である惑星エテリの店舗販売している店の見学に行くことになった。
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