宇宙船生活

第07話 完治と個室

 目を覚ましてから、既に三日が過ぎ去ろうとしていた。その三日間で、身体の怠さはや不調な感覚は取れて快調へと向かっていった。むしろ、冷凍睡眠に入る前の状態よりも身体を軽く感じたり、思うように身体を動かせるようになって、見た目通り若返ったのだと実感するぐらいに調子が良くなっていた。


 この三日間は、二人の女性にお世話になっていた。一人は船医のヨハンナさんで定期的に身体を診てもらいながら、もう一人である船長のミラさんに日常的に必要となる知識をゆっくりと教えてもらっていた。


 ミラさんに教えてもらった知識について例を出すと、たとえば今俺が乗っている宇宙船ジェペンス号について。


 この宇宙船は、元々は長距離航海用の旅客船だったらしい。けれど、未探索宙域を調査するために改修されて今は探索船として作り変えられたものを使用しているとのこと。だから、この宇宙船には最大2000人ぐらいなら乗船可能な程に大きいらしい。けれど、現在は俺を含めて6人しか乗って居ないそう。


 船長のミラ・ステラ、副船長のエフォース・ステイン、メカニックのライラ・カマグル、船医のヴィベルイ・ヨハンナ、戦闘護衛員のドミナ・デファン、そして俺の計六名だ。


 船を操作するには乗組員が少なく無いだろうかと感じたけれど、詳しく聞いてみると宇宙船の操縦は殆どが人工知能により制御されいているらしくて、緊急時に少しコントロールするだけで大丈夫だから操舵手も航海士もレーダー観測員も用意していないらしい。そして宙域調査において、データの記録と整理をする人だけ居ればいいので、今は少数精鋭で航海しているらしい。


 宇宙船の動力についても教えてくれたけれど、コチラはまだよく理解できていない。宇宙空間に存在するらしい、よく分からないエネルギーを集めて使っているらしい。重力エネルギーでも光エネルギーでもない、俺にとって未知の物を使っているらしいので、コチラは後で学習が必要だ。


 基本的には、この宇宙に有るエネルギーを機関に取り込むだけで動力に変換できるらしくて、更には緊急時のために電気の蓄電と同じようにエネルギーを取り込み溜めておく事も出来るらしいので、かなり利便性の優れるエネルギーだと思う。


 この宇宙船のスペックについても凄い。宇宙空間で船体表面にフィールドバリアーを展開させて加速させていくと、秒速120万kmというようなスピードを出すことが可能らしい。 つまり、この今俺が乗っている宇宙船は光速を軽く超える速さで宇宙航行が可能なモノであるらしい。しかも光速以上のスピードを出すという超高速航法だけではなく、条件を揃えることが出来れば空間転移も可能と言われて驚いた。



 この宇宙船について更に詳しく説明していくと、先に言った通り元は旅客船だったために船内の施設や生活スペースも充実しているらしい。

 今のところ、身体をなるべく休めるように安静第一と言われていて、普段は医療室で過ごしていた。医療室の他には展望スペースにしか行ったことは無いけれど、完全回復した後で船内を案内してもらう約束をしているので楽しみだった。


 案内された展望スペースでは、宇宙船内からガラスのような透明な壁一枚を間に挟んで外の宇宙空間を見せてもらう事が出来た。真っ暗な宇宙に、点々と輝く大きくて赤い光や小さくて黄色い光、他にもいろいろな光度と色彩が散りばめられた無数の星々を見ることが出来た。


 既に地球から遠く離れた場所にいるらしくて、目覚めてから半日を過ぎた辺りで肉眼では見えなくなっていた。その後も一気に離れていって、今の望遠観測機器で撮った画像でも既に米粒ぐらいの小ささにしか見えない程に離れた場所に居る。


 三日間で想像以上に地球から離れたなぁという、しみじみとした感想を抱いた。



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 身体の最終確認も終わって、完全に回復しただろうとヨハンナさんに太鼓判を押された俺は、今まで占領していた医療室から出て、これからの宇宙生活を過ごすための生活スペースへと案内されていた。

 どうやら、乗船員は一人一部屋の個室が割り当てられているらしくて、俺にも部屋を割り当ててもらえることになった。


 船長のミラさんに案内されて向かった部屋の前で、ドアを開けてもらった瞬間に俺は立ち尽くしてた。


「あの、本当にこの部屋を使わせてもらって良いんですか?」

「大丈夫です。あなたのために用意した部屋ですし、他にもいっぱい余っていますから」

 

 たしかに2000人が乗れるくらいの宇宙船なのに、6人しか居ないのだったら部屋ぐらいはいっぱい余っているだろう。けれど、目の前に見える部屋は大きすぎる。この部屋の大きさだったら十人ぐらいの人間でも苦もなく暮らしていけるだろう、と思うぐらいに。


「さぁ、これから貴方の部屋になるんだから。入った入った」

 部屋の前で恐縮していると、ミラさんが俺の後ろに回って部屋の中へと押し込んできた。

「わ、分かりました。自分で歩きますから!」


 中に入っても、やっぱり広い。しかも綺麗で過ごしやすそうな雰囲気。かなり上等な部屋を用意してくれていたようで、至れり尽くせりだった。


「この部屋は貴方の自由に使って良いです。一応、普通に過ごす分には問題ないように準備出来たと思います。ただ私たちは男性の事についてはよく知らないので、性別の違いによる問題が発生するかもしれません。何か不都合が有ったら遠慮無く言って下さい」

「あの、ありがとうございます」


 お礼を言うと、ミラさんは微笑みを浮かべながら部屋から出て行った。

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