第1話 色々と変わった少年
ここは、自身の持つ最も強い
そして――――
◆◆◆
「ここ、か……」
前方に広がる景色と、パンフレットに記載された情報を見比べ、少年は
ビレイブ
そこは、世界中から一流の
少年の持つパンフレットには、その情報が
「結構でかいなぁ……。俺、こんなとこでやってけんのかな?」
少年は今日から、ここに
あの日自分の前から
「なるべく
と、少年は
すると、
服装からして、
その相手はビクッと
「……まぁ、どこだって変わんないよなぁ」
少年は自分の髪に手をやり、呟く。
赤でもないし、青でもない。
緑でもなければ、銀でもない。
茶でも、金でも、紫でもない、自分の、色。
「もう
少年は誰に言うでもなくそう言うと、校内に
「さて、まずは
それに気づいた少年は、
「ちょうどいいや、あの人たちに案内してもらおう」
そう言って、
少し近づいてみてわかったが、
なんか
例えば、
「テメェみたいな落ちこぼれが、俺等に
だったり。
「なんだ? あの
だの。
一人の女の子に対して、男たちが寄ってたかって
それがわかった少年は、
「うん、関わらない方がいい」
クルリと回れ右をして、そそくさと
「あ~やだやだ。入学
そう呟きながら、少年はその場から離れようと、
「おい、なんだテメェは?」
「うげっ、見つかった……」
したけど見つかった。
このまま無視して歩き続けてもいいが、それはそれでめんどくさそうだ。
少年はそう考えた。
なぜなら、
「ん? お前、その髪……無属性
そう、少年の色は
つまり、いま逃げても捜されたらアウト。
少年は仕方なく、本当に仕方なさそうに、まったくやる気の感じられない顔で振り向いた。
「えっと……僕になにか、ご用でしょうか?」
『…………』
振り向いた少年を見て、男たちが息を飲んだ。
それに少年は、
(……まぁ、仕方ないよなぁ。なにせ、俺の色は珍しいからなぁ)
なんて、ぼんやりと、まるでやる気の感じられない顔で考えていた。
無属性を意味する黒は、
だが、少年はレベルが違う。
少年の
それに気づいた男の一人が、震えながら
「その髪……その眼…………お前、
男たちに、いや、周囲で眺めていた生徒たちにも、一気に
それは、
その名が
少年は昔から、その色により
自分を必要だと言って拾ってくれた人たちさえ、自分を利用して戦争を起こそうとしていた。
だが、それもいまはどうでもいい。
まずはこの
少年は相変わらず、
(あ~あ、こんな注目されちゃって、どうしたもんかなぁ……)
一人の女の子を寄ってたかっていじめる男たち。
それを無視して逃げ出すなど……まぁ、できなくもないが、やりたくもない。
だからといって、戦って
さて、どうしたもんかとぼんやり空を眺めながら考えていると、男たちのリーダーっぽい男が鼻を鳴らした。
「ふん、
「え? そうなの?」
なんだよ、だったら立ち止まらずに逃げてりゃよかった。
少年は心の中でグチる。
そして、なら
「確かにそうですけど……さすがに、
取り巻きの言い分はもっともだ。
髪と瞳が同じ色をする
その属性魔法を使えるだけの奴とは、比べるべきではない。
だが、リーダー
「んなもんどうだっていいんだよ。俺たちアレックス派の人間が、こんな
それを聞いた取り巻きたちは、ため息を吐いた。
恐らく、前にもこういうことがあったんだろう。
言い出したら聞かない
それでもリーダーをやってるということは、
だが
「ねぇねぇ、いまのってほんと?」
「あ゙?」
「だからさぁ、『観衆の中からなにもせずに抜け出せるか』って話」
「……それは、俺を馬鹿にしてんのか?」
リーダー風の男が少年を
だが、少年はまるで意に
「違うって。この
「……お前は、こいつを助けに来たんじゃないのか?」
リーダー風の男が、
それに少年は、目をぱちくりとさせた。
「え? いや、違うけど?」
『…………』
男たちは顔を見合わせた。
少女を助けに来たのでなければ、いったいなにしに近づいて来たのか。
リーダー風の男は変なものを見るような目をして少年に言う。
「……じゃあ、なにしに来たんだよ?」
それに少年は、
「いやぁ、ちょっくら道案内を
なんて、相変わらずへらへらと、笑いながら言ってきて……
『…………』
それにはさすがの男たちも、なんとも言えない表情で少女を見て……
リーダー風の男は一つため息を吐くと、少年に目を向けた。
「で? お前は逃げ出して、俺等はさっきの続きをやれと?」
「イエス!」
リーダー風の男の言葉に、少年は
それにリーダー風の男は、
「あー……なんかもう、馬鹿馬鹿しい……おい、お前等いくぞ」
深いため息を吐いて、背を向けた。
「え? あっ、はい!」
少し
少年はそれに、
「あれ? 続きしなくていいの?」
なんて、すごく意外そうな顔を浮かべていて……
それにリーダー風の男は、心底
「しねぇよ、ったく……ああ、なんかもう、すげぇめんどくせぇ……なんであんな奴に声かけちまったんだ…………」
そう言って、とてつもなくダルそうに去っていった。
取り巻きたちもそれに続き、少年はその後ろ姿を眺め、
「変な奴」
思ってたのとは少し違うが、一応
「あ、あの……」
なんて、すぐそばから声が聞こえた。
「ん?」
少年は声の方向に目を向ける。
すると、
「ありがとうございました」
ペコリと、少女が頭を下げていた。
それに少年は、
「いや、いいよお
と、困ったような、
それに、
「でも、助けてもらったのは本当ですから」
そう言って、少女は顔を上げた。
その少女は、なかなかに
紫色の、長い髪。
パッチリとした、金色の瞳。
少年はその少女を、
(へぇ、この子も珍しいな)
なんて、感心したように眺めていた。
闇属性を表す紫と、光属性を表す金。
属性としてはそれほど珍しくもないが、組み合わせとしてはかなり珍しい。
だから少年は、
(なんとなくシンパシーを感じる……なんて言ったら、この子に悪いよなぁ……)
なんて、相変わらずぼんやりとした顔で考え、小さくため息を吐く。
珍しいとは言っても、
意味合いが違う。
だから少年は、ため息を吐く。
ため息を吐き、空を見上げ、
(さっきの奴等、無属性はいるって言ってたけど、あの感じじゃあ、
なんて、空を見上げながら、ぼへ~っと、だらけきった顔で考え、
「あの……」
と、そこで声をかけられた。
少年は声の方へと目を向ける。
そこには、少女がいた。
それに少年は、
「……ん? あれ? まだいたの?」
と言った。
なんでまだいるのと、とても不思議そうな顔でそう言った。
それは
だが、少年はそれに気づかない。
それが変だと思えない。
少年の世界は、昔からそうだったから……
それを知らない少女は、ぱちぱちと、数度
「え? あ、はい。まだお礼もしてませんので」
なんて、まるで気にした様子もなく言う。
まるでそれが当然だとでも言うように、平然と答える。
それに少年は、
「…………」
軽く、ため息を吐いた。
少年としては助けたくて助けたわけじゃないし、なんなら逃げようとさえしていた。
にもかかわらずお礼を受け取るなど、少年としてはありえない。
相手がお礼をしたいと言っているんだから
だから少年はめんどくさそうにため息を吐き、
「さっきも言ったけど、俺はお礼なんて――」
「道案内、してほしくないんです?」
少女が、少年の言葉を
それに、
「…………え?」
それに、少女は笑う。
ニコニコと笑って、少年に言う。
「まだ時間に
数秒。
少年はそのまま動きを止め、
「マジ!? 案内してくれんの!?」
時間の戻った途端、ガバッと少女に
それに少女は
少女は優しい
「はい。困ってる人を見捨てたりしたら、エリスさんに怒られてしまいますから」
と言った。
迷子の少年に優しい笑みを向け、そう言った。
しかし、それははた目には恐ろしく見えただろう。
なぜなら、迷子の少年は普通じゃない。
目の前の少年は、普通じゃない。
そこにいるのは黒髪黒眼。
それが
悪魔の象徴。
魔神の生まれ変わり。
そんな相手を目の前にして、平然と、自然に笑っていられるなんて、普通では、いや、普通でなくとも、ありえないのだから……
しかし、少女は一切気にせず、
「それでは、どちらまで行かれます?」
「職員室までお願いします」
少年は頭を下げながら言う。
それに少女は、ニッコリと笑った。
「わかりました。では、職員室までご案内します」
そう言って、少女はゆっくりと歩きだす。
まるで
それに少年は、
(いや~、
なんて、こちらもまるで警戒心を持たないまま、少女の後に続き……
――こうして色々と変わった少年は、少し変わった少女に連れられ、職員室へと向かったのだった。
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