第6話 遭遇
場所は変わり、学園近くの、とある場所。
「くそッ! なんだって俺がこんなことに!」
一人の少年が、
少年は
「ったく、アイツらまでどっか行きやがって……」
それは、普段共に過ごしていた奴らのこと。
少年は今回の試験で、赤点を取っていた。
それ以来、アイツらはまるで見切りをつけたかのようによそよそしくなったのだ。
少年は彼らの
「
「ッ!?」
突然背後からかかった声に、少年は
音さえも、まるでしなかった。
にもかかわらず、声はすぐ近くで聞こえていた。
それは
「……
少年は呼吸を整えると、ゆっくり背後を
振り向いた先には、男がいた。
そいつの左目には黒い
あらゆる薬品が
それは
そんな、
少年はその人物を
「……あんた、どっかで会ったか?」
ふと、そんな言葉をこぼした。
少年は目の前の男と、どこかで会った気がしていた。
というより、その顔にどこか、
少年は
白衣の男は意外そうな顔で首を
「……いや、君とは
「……そうか」
少年は
そして、
ゆっくりと、
なぜなら目の前の人物は仲間じゃない。
白衣を着てはいるが、教員でもない。
それは初対面という言葉からしても
学園の関係者という可能性もあるが、信用してはいけないと、直感が
少年は視線を鋭くし、なにをされても対応できるように、身体を深く、深く、
それに、白衣の男が笑った。
「そう
そう名乗った白衣の男――レギンに、少年は体勢を変えることなく、言う。
「……その研究者が、俺になんの用だ」
その言葉に、レギンはポケットから両手を出した。
少年はより一層視線を鋭くする。
レギンはその様子を面白そうに眺め、肩をすくめた。
「いやね。君が落ち込んでるようだったから、話でも聞いてあげようかと、ね」
「いらねぇ心配だ。とっとと
少年は苛立たしげに言う。
それにレギンが
「はは。いいねぇ。その弱いくせに
「あ? なんだと?」
「
「……おっさん。あんま
全身に力を込めて、飛び出す瞬間を探り、
「殺す? 君が? 私を? ははッ、これは面白い! どれ、やってみなさい。君にそれができれば、だがね」
レギンが、酷く
「ッだとテメェ!!」
少年は
それは
赤点を取ったとはいえ、少年は学園の――
その実力は
それこそ、大人の
だからたとえ気配を
たった数歩で
少年は一気にレギンへと
レギンはその動きに反応できていないのか、まるで動かない。
その間に少年は拳を大きく振りかぶり、
「
レギンが、口の
「それと、足元に気をつけた方がいい」
ニヤリと、愉しそうな、
だから少年は、
「はっ。うっせぇんだよ!」
その顔めがけて、拳を突きだした。
なぜなら、戦闘中によそ見をするなどありえないからだ。
それに目の前の相手は恐らく、
だから少年は全力で拳を振り抜き、
――
それが空だと気づいたときには、すでに地面に
少年はとっさに起き上がろうと、
「ッ……!」
目だけを動かし確認すると、刃物ではないようだ。
突きつけられたのは、
それこそ、歩く際に使うような形のものだった。
レギンはそれを突きつけたまま、言う。
「だから言っただろう? 『君の拳は届かない』と」
「…………」
「さて、君は確か、こう言ったね? 私を『殺す』と」
「……だったら、なんだってンだよ」
気持ちだけは負けるわけにはいかないと、
レギンはそれを受け、数瞬瞑目すると、
「……そうだね。その
そう言って、喉元に突きつけた杖をグッと押し込んだ。
もしもこれが刃物であったならば、少年は喉を
それを理解してか、はたまた、
少年は
それに、
「まぁ、ないだろうね。わかっていたさ。だから君は、ここにいるのだから」
と、レギンは呆れたように言って、杖を引いた。
「…………」
少年はレギンの
そして、鋭く睨み据える。
なにをされたかわからない時点で、
だから、
「…………」
少年は、小さく息を整えた。
近接戦闘では勝ち目はない。
だが、それ以外ならば、わからない。
少年はレギンの
「……やはり君は、私好みの子供だよ」
レギンがふふっと、愉しげに笑った。
「先に言っておくが、君では私には勝てないよ」
レギンはそう言うと、杖をくるりと回し――フッと、杖が消えた。
つまりは、秘宝だったのだろう。
秘宝というものは、
ただし、それには条件がある。
現すには、その秘宝の名称を、心の中でもいいから
消すには、その秘宝の一部にでも
少年は突然杖を消したレギンを訝るように眺め、
「さて、さっきも言ったが、私は研究者だ」
と、レギンが言った。
まるで
「
レギンはそう言うと、白衣のポケットから小さなカプセルを取り出した。
片側は赤、もう片側は白の、小さなカプセル。
それを人差し指と親指で見せびらかすようにして持ち、
「君は、強くなりたいか?」
「ッ……!?」
少年は目を見開いた。
レギンはそれに満足そうに口の端を上げると、
「もしもそれを願うならば、こいつを使ってみるといい」
そう言って、カプセルを投げた。
少年は放られたカプセルを片手でキャッチし、まじまじと、
レギンが言う。
「それは私の努力と
「ッ!?」
少年はもう一度目を見開き、
「ただし、
「…………」
もう一度、手のひらの上で転がるそれを眺める。
これを使えば、アイツらを見返せるかもしれない。
だが、適合できなければ、死ぬ。
適合できたとしても、自分が自分でいられるかわからない。
その言葉の
いやそれ以前に、目の前の
少年は
「それでも使うというのなら、一つ、
と、レギンが言った。
少年は顔をあげ、眉をひそめてレギンを見る。
「合言葉?」
「ああ。私が言ったことを、そのまま
レギンは
「合言葉は――」
ゆっくりと、その口を開いた。
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