第5話 試験結果
その日の教室は、ざわざわと色めきだっていた。
「はいはい、静かにしろ~」
そう言って、
それでざわついていたクラスはシン、と一気に静かになった。
それは、リヴェータの持つカリスマなのだろう。
リヴェータはそれに満足そうにうなずくと、丸めて
そして、
「いまから例のモノを渡す。名前を呼ばれた者から、私のところに来い」
呼ばれた者はどこか落ち着かないような、
そして全員にその紙を配り終えると、教壇に置いていた紙を広げ、黒板に
「これが今回の結果だ。お前らで
リヴェータはそう言うと、さっさと教室から出ていき、
『ッ…………!』
それを確認すると、クラスの生徒たちが
その表情は
その紙には、こう、書かれていた。
つまりは、先日行われたテストの結果が、そこに書かれていた。
生徒たちは
「……また、二位ですわ……」
と、エリスが
位置としては、上から二番目。
すなわち、学年二位だった。
その、
「毎回すごいですパティちゃん!」
「ふふ。まぁ、このくらいは当然よ。リーダーやってるエリスと
なんて、クレープが満面の笑みで言い、パトリシアが
学年一位を示す最上部に、その名が
クレープに
「……それよりもこっちよ、問題は」
そう言ってパトリシアが指で示した場所には、
リンダ=ロバーツ 九十三点
なんていう文字が、赤色で書かれていて……
「なんで
パトリシアは
リンダは
「ああ? うっせぇなぁ、そんなの何個か0点があるからに決まってんだろ」
「決まってません! ……え? 0点? ごめん、ちょっとその紙見せて」
リンダが
そこに書かれていたのは……
合計 九十三点 学年順位 236/238
なんていう、
それを
「別にテストなんかどうだっていいだろ? あとで
というリンダの言葉で爆発した。
「そういう問題じゃありません! というか、なんで去年よりこんな
ペシペシと紙を叩きながら
リンダはフッと
「学年上がると、
「わけわかんないのはお前の方だァーッ!」
クラスどころかフロア中に
それにさらなる怒りをぶつけるパトリシアと、
そんな二人のやり取りを、エリスは
「……二年になっても、相変わらずですわね」
「お
なんとも言えない表情で
エリスはどこか微笑むようにそれを見ると、
「まぁ今回はそれよりも、こちらの方が
ちらりと、再び紙に、その下の方に目をやった。
そこにはこう、赤文字で書かれていて……
タクト=カミシロ 百七十六点
「なんっでお前も赤点やねんッ!」
と、ケインがわけがわからないとばかりに叫んだ。
それに、
「いや~」
なんて、タクトは状況を理解していないのか、へらへらと頭を
パンはタクトから紙を受け取り点数の詳細を一通り眺めると、顔を上げ、どこか感心したような
「すごいね、テルンといい勝負してるよ」
「オレのが勝ってる科目多いぜ」
「総合点だと負けてるけどね」
「うっせぇ」
眉を
タクトが言う。
「んでも、赤点とったらどうなんの?」
「そら
「え? マジで?」
うげっと、
ケインは当然とばかりに肩をすくめた。
「マジやマジ。追試で点とれんかったらそのままポイや」
「うへぇ、マジか……」
タクトは自分の置かれた状況を理解し、げんなりとうなだれ、
「んじゃあ、追試ってなにすんの?」
それに、
「普段通りなら、迷宮攻略だよ」
と、パンが答えた。
それにタクトが首をかしげる。
「ん?
「筆記ももちろんあるよ? でも、ここでは筆記なんかより実力を求められてるからね。少しぐらい頭悪くても、強ければいいんだよ」
「ふ~ん。なんだ、案外
タクトのソロ最高攻略
難度四十台を攻略したことのあるタクトの実力ならば、学園の追試程度は余裕だろう。
ただの迷宮攻略であれば、受かったも同然だ。
タクトは
パンはちらりとテルンを見やり、
「でなきゃ、テルンが二年になれてないよね」
「だからうっせぇんだぜ! いちいち馬鹿にしてくんな!」
それを受け取りながら、タクトが言う。
「ちなみに、迷宮の難度は?」
問いながら、
(さすがに四十超えなんてことはないだろうから、大丈夫だろうけどね)
なんてことを考えていた。
迷宮攻略の
その四十超えともなれば、大人でも攻略できる者は少ない。
それこそ、一割程度だろう。
それでも聞いたのは、なるべく攻略の成功率をあげるため。
四十未満といっても、
迷宮攻略は
事前準備を
それに、タクトはこの学園を退学するわけにはいかない。
タクトがこの学園にきたのは、姿を消した
そのために、迷宮攻略に関しては世界
だからこそ、退学の可能性は
タクトの問いに、ケインが考えるようにあごに手を当てた。
「そうやのぉ……一年のときで二十前半やったから、今年は二十後半かもな」
「あら、結構高いね」
「そりゃそうやろ。追試なんやから」
「頭悪い上にその
なんて、ケインとパンが
「それと、実力重視とはいえ、ある程度は筆記の方もとっとかないと危ないよ?」
と、横から新たな声が聞こえた。
そちらに目を向けると、少女がいた。
タクトは振り向き、ココアの存在に気づくと、
「あ、でた
死神、というのは、ココアの二つ名のことだ。
なんでもこの学園では、相当な実力、あるいは
ただそのほとんどは
へらへらと、まるでやる気の感じられない笑顔を浮かべるタクトに、ココアはにこにこと笑みを返しながら、言う。
「あはは。その名前、あんま好きじゃないんだよね。今度
なんて、にこにこと笑いながら、身体からわずかな
タクトは
「そんで? 勉強は必要ってのはまぁわかるけど、危ないってのはどういうこと?」
「うん? それはね、追試の内容ってのは攻略なんだけど、点は攻略だけじゃなくて、
殺気を引っ込め、ココアが人差し指を立てながら言う。
タクトは
「……それで、なにが危ないの?」
「ソロ攻略じゃないってことさ」
「ん? ……ああ、点の取り合いになるってことね」
「ご
「……その言い方だと、出てくる数とか決まってる感じ?」
タクトの問いに、ココアは首を横に振った。
「いや、無制限だよ。ただし、攻略。つまりボスを倒すまではね」
「ふ~ん」
タクトは気の抜けた
(つまり、十分もすれば誰かにボスを倒されるってことか)
ちらりと、この間の演習でボスを倒した少女――リンダに目を向けた。
この間の演習は、難度三十。
そのボスを
タクトは口元を歪めて、いまだにガミガミと説教を食らっているリンダを見やり、
「あたしは攻略の方は手伝えないけど、勉強教えてほしいなら力
というココアの言葉に、タクトが視線を戻し、意外そうな顔を浮かべた。
「うん? 君って頭いいの?」
なんて問いに、
「少なくとも、タクトくんよりはね」
と、ココアは肩をすくめる。
タクトは面白そうに口元を歪めて、
「へぇ、何位?」
「学年十位」
「…………え?」
思考が、停止した。
まさか目の前の少女が。
いつもにこにこと、まるで読めない笑みを浮かべている自称諜報員が。
まさかそれほどの
タクトは貼り出された紙に目を向ける。
そしてココアの名前を探し、
「…………」
それは確かに、学年十位と記されていた。
総合点で言えば、実にタクトの、六倍以上の点数で……
「…………」
愕然とするタクトに、ケインが同情するかのようにため息を吐いた。
「やっぱ、頭よさそうになんか見えんよな」
「そういうケインこそ、あたしとほとんど変わらないよね~。ま、一度も負けたことないけどね☆」
「そりゃワイがアホっぽい言うことか? ちゅーかわざわざそれを言いにきたんかお前は?」
「さぁどうだろね~? でもアホっぽいかどうかは、タクトくんの表情を見れば
そう言われてタクトを見ると、ぼへ~っと、なにを考えてるのかまるで読めない表情をしていて……
「……いつもと同じ、気の抜けた顔しとるけど?」
「つまりはお前なんかに興味ねぇよアホってことさ」
「はっはぁ。言うてくれるやないかボケ神」
バチバチと火花を散らして
そんな二人をぼけっと眺め、タクトが口を開いた。
「んじゃ、お願いしていいかな?」
という言葉に、二人は眉をひそめ、
「うん? ああ、オッケー、オッケー。ついでにタクトくんの
と、なにをお願いされたのか即座に理解し、ココアが笑って言った。
それにケインがあごに手をやり、
「歓迎会……そういや、やっとらんな」
「する必要もねぇぜ」
「なに言ってんの? 歓迎会したら食べ物たくさん食べれるんだよ?」
「あはは。これはケイン
なんて、歓迎会の主役であるはずのタクトを置いて、話はどんどんと進められ……
(
タクトはぼんやりとその
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