第30話 分かれ道
テルンたちと分かれ、ジョギングほどの速度で軽く走ること、数分。
「あ、アレまた来たよ?」
正面から、
距離にしておよそ、三百メートル。
それを確認したケインは、
「おい。それ、
ちらりと、視線をタクトの左手に向け、言った。
タクトは一瞬ケインに目を向けると、左手に持っている銃に視線を移し、
「ん? これは別に、
「……つまり、直接魔力を撃ち出しとるんか?」
「そうだね。撃とうと思えば、あと二百発は余裕だよ」
「二百、か……」
肩をすくめるタクトに、ケインは、
(こいつの事やから、かなり少なく言うとるんやろうけど……)
顔を、
もしもアレが自身の想像通りであるならば、あまりこの男を、
ケインは走りながら軽く
「ほんなら、今度はワイがやるわ」
そう言うと、
「《
ドンッ! と、強く地面を
すると、地面から十数本の
それは
『――――ッ!!!!』
串刺しにされた魔物たちは
その一撃で、すべてが終わった。
そのすぐ横を駆け抜けながら、
「わお、あっという間だね。さすがは最強候補くん」
「はっ。なにが最強候補や。この程度、二つ名持ちなら大抵出来るわ」
「へぇ、そりゃすごい」
なんて、タクトは肩をすくめながら、
(もう
と、心の中で、ため息を吐いた。
ケインがいまやって見せたことは、実際とんでもないことだった。
ここは推定でも、攻略難度、三十前半。
その魔物を、一撃で仕留める。
それも、色に現れていない属性で。
それは、つまり……
(二つ名をつけられた奴は、少なくとも、攻略難度四十レベルの実力はある、ってことだよなぁ~)
それは普通、ありえないことだった。
攻略難度四十台ともなれば、個人での攻略は、難しいとされている。
それをソロで攻略できるのは、大人でも一割に満たないだろう。
にもかかわらず、学生でそのレベルに達している者が、複数人存在するというのだ。
(これなら、最初からアレを見せても、大丈夫だったんじゃないかな~?)
なんて、タクトはぼんやりとした顔で、ケインを見やり、
「……ん? あ! ってことはさぁ、君にも、二つ名ってあるの?」
思い出したように、言った。
それに、
「ああ? 二つ名ぁ?」
ケインは
「あれ? 聞いちゃいけないやつだった?」
「……いや、別に…………」
言いながらも、ケインは顔をそむける。
「ふーん」
と、タクトは
「…………」
それを
「一応はあるけど、ワイを二つ名で呼ぶ奴なんかほとんどおらんで?」
「そうなんだ。まぁ、あるかないかを聞きたかっただけだし、嫌ならあんま詳しく聞かないけど」
「ならそうしてくれ」
「ふぇ~い」
よほどこの話題が嫌だったのか、いまだに顔をしかめているケインに、タクトは気の抜けた返事を返し、前方に顔を戻して、
「……お? なんか
「その真上の天井が抜けとるとこを見ると、他の奴等が落ちたとこやろな」
「んじゃ、こっからは道がわからないと」
「気ぃ引き締めてくで」
「りょうか~い」
なんて、まるで
それから少し進んでいくと、
「ん? 分かれ道……」
先の通路が、
「どっち行く?」
「そうやなぁ……」
言いながら、ちらりと、ケインは分かれ道の地面に目をやり……
「ワイは左。お前は右や」
「あら、分かれる感じ?」
「別に構わんやろ。攻略目指しとるわけでもないし」
「それもそうだね。んじゃまた後で」
「おう。あのバカ共によろしく言っとけ」
「こっちに居たらね」
タクトは肩をすくめながら言って、そのまま右の通路へと駆けていった。
ケインはその後ろ姿を
(……さて、これで満足か? あのアホは)
地面にしっかりとつけられた足跡と、その近くの壁に
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