第1章 水無月学園と俺 004
あの後は特に問題なく家につくことができて、簡単に設備等を説明した。
どうしようもない言い方をすれば、面白みもなく順調に進んだ。
そして次の朝が訪れた。
「兄ちゃん朝だぞ。もう今日から普通に登校だろ」
「うぅん……」
「よーし、かかと落としだな」
「おきたおきた! 兄ちゃんは寝起きの切り替えがすごいできるんだ。そんなことは知ってるだろ春陽ちゃん」
「おっと、そうだったな。アタシの兄ちゃんが眠気に負けて遅刻ギリギリまで寝てるなんてことはあるはずないよな」
まあお前のかかと落とし食らったら別の意味で2度寝することになっちゃうことを理解して欲しいんだけどな。
下に降りるとリビングには瑠璃ちゃんとレイハートがいた。
「あ、おはよう。お兄ちゃん」
「おはよう」
「おう」
ちなみに、レイハートの部屋が何故3人用のシェアハウス寮で開いているかというと、単純に家の間取りにある。
この家はもともとはシェアハウス用に作られたものじゃなく一戸建てのファミリー用で作っていたらしいが、学園の創設等で使用者が引っ越して残っていたものを買ったらしい。
つまり部屋の広さにバラつきがある。その結果、本来は3人別々で個室を使うのがシェアハウス的な形式だが、姉妹というのもあって瑠璃ちゃんと春陽ちゃんは他と比べて少し広めの部屋で二段ベッドで1室なのだ。だから1部屋開いていて、レイハートはそこに入った。
「お兄ちゃん春休みボケ抜けてないでしょ」
「少しな、まあ少ししたらなおるよ」
「今までは良かったけど、これからはちゃんと起きてよ。あの光景を人様に見せるなんて……少し躊躇するから」
少ししか躊躇しないのかよ。
「たしかにそうだな。あの光景は俺たち兄妹だけのR-B&Sだからな」
「R-B&S?」
ふむ、その反応はこのR指定の種類を知らないのか。
「そうだ、R-B&S。18禁がR-18だとしたらこれはR-Brother&Sistarってわけだな」
「その単語には無理があると思うけど」
「なんだと……」
「いや、そんな驚愕されても」
この単語に無理があるなんて。そんな現実を知るくらいならばお前を受け入れはしなかったぞレイハート。
「いや、私もすこし思ってたよ」
「アタシもだな~」
妹2人も若干思ってたらしい。まあ、俺だって少しおかしいとは思ってたんだけど、こう引っ込みつかなくなっちゃっててね。
ということで、勝者レイハート。
「瑠璃ちゃん、ごちそうさま。それじゃあ先に行ってるから」
「ふぉう」
「お兄ちゃん、飲み込んでから喋って」
「返事はすぐしなくちゃ意味が無いと俺は思うんだよ」
「まあそれはたしかに」
「じゃあアタシはランニング行ってくる!」
相変わらず賑やかな妹なことだ。レイハートはある意味この家の落ち着き系女子担当だな。
「ほら、お兄ちゃんも急がなくちゃ駄目だよ」
「はいはい」
急かされながら朝食をすませて俺も家を出る。
さて、電車に乗りながら俺は思うわけだ。この学園の制服はまあわりとエンタメ作品のイラストレーターが考えそうな制服の色使いをしていて――ようするに目立つ。
だからだろうか……痴漢っぽいことされてる女子を幸か不幸か何人か1日で見かけたわけだが、ほぼうちの生徒なわけだ。
だがそれだけなら不幸じゃないかってなるが、目立つのもあってかかっこ良く助ける水無月学園男子生徒もいるわけだ。
ちなみに俺は4つ乗口がある中の中間地点にいるから、それなりに混んでる登校列車では助ける行動に移しようがないわけだ。
「やあ、如月さん。おはよう」
「よう、七々原。お前電車通だったっけ?」
「いや、バスだが。少し運動というか歩きたいので3つほど前のこの駅で降りている」
「そういうことか。まあ、行こうぜ」
「うん!」
こういう返事は女の子っぽい所あるのにな。普段の変態性のせいでマイナスになってる。
「それにしても羨ましいな、如月さん!」
「突然なんだよ」
「何やら金髪の美少女と同じクラスらしいではないか!」
「お前の思考はとことん男側だよ。ていうか、羨ましくもなんともないだろ。接点が持てない高嶺の花とかむしろやきもきすると俺は思うぜ」
何かのきっかけから好き会うようになったり意識しあうようになるなんて、それこそフィクションの話だろ。昨今のファンタジー作品でお姫様キャラが人気を博す時期が1年に一度あるけど、結局は高嶺の花との恋愛模様に感情移入して楽しむってことだろうからな。
「確かにそれはその通りだが、そもそも留学生が金髪美少女という時点でその運命力は働いていると私は考える! すなわち、それならば当たってくだけにいっても良いではないか!」
「否定はしねえけど、俺はやらねえからな!」
「ならば私が!」
「お前は違うクラスだし、同性だろうが!!」
「ふふっ……そんなの、如月さんが一番良く知っているだろう」
恥ずかしそうに言ってるけど、普通じゃないからな。
まあこんな話をしながらもしっかりと歩いてたから学園にはついたよ。やっとこいつから解放される。
フリーダムからの解放によるフリーダム。
「それではまた!」
「おう、またな」
嫌いじゃないが、会話に熱くなり始めたあいつの相手は正直面倒くさくもある。
そして教室にたどり着けば、クラスメイトたちが結構きている。
もちろんレイハートも女子グループ……いや、あれは留学生とか転校生特有の質問攻めにあってるだけか。
しかし、こいつらの中で魔法を使える奴はどれだけいるのか。
少し気になってしまうところだな……後、誰も俺に話しかけてきてくれないのは何故だ。
もしかして、男子は中等部上がり大量パターンかこれ。
まあ登場人物が増えすぎて、話がまとまらなくなるなんていう俺の人生になるよりかはいいとは思うんだけど、なんかへこむわ。
「おら席つけ~」
そして朝のHRの時間丁度に参上する担任。
「え~と、今日の授業は新規組と上がり組で別れることになる。ということでホームルーム終わったら黒板に書いておくのでそこに移動するように。服はまあ……制服のままでいいと思うが心配なら体操着かなんかになっておけ。6月の大会までには専用の物できあがると思うからそれまではそんな感じだ。席は全部埋まってるから休みはなしと……体調不良は授業担当教諭に言うように、出席では聞かない」
何だその雑なシステム。まあ一限とかいちいち出席簿担当の教師が確認するとは思わないけども。
ちなみに留学生は、母国で魔術を学んだか否かで決めるらしい。
俺は新規組となる。魔法は使えるが魔術はさっぱりだからな。
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