『じゃ、ま、そういうことで』 ～神様を困らせまくる、ぐうたら男の転生記～

第8話 宿屋 朝

　「ビカム君、起きて、朝だよー。本当に朝だけど、神様、腹立って眠れなかったから嘘ついて、本当は朝じゃないけど、出かけるよー」

　「うーん。お姉さん、もうやだよ」

　「なんか、寝言を言ってるねー。本当の寝言だけど……、これは、腹立つほうの寝言だねー。……お姉さんは、もう、いないよ。仕事行ったよ。起きないとダメだよ」

　「うわっ！　また化けたの！？」

　「おーい、おーい。それは誰が誰に化けたのかなー。お姉さんが神様に化けたってことかなー？　そんなことないよねー。でも、そのほうがいいかな？　そそそ。神様、また、お姉さんに化けちゃった！」

　「うぇーーーー。キモッ。一緒に寝ちゃったよ」

　「もうさ、その反応のどこにどう突っ込んでいいのか分からないよ。それって、何を言えば満足するのかなー。ビカム君、顔色良くって、つやつやだしね。見てるだけでも、腹立つのにね！」

　「うぇーー。お風呂も一緒に。キモッ」

　「もういいから。もうね、何も言わなくていいから。そそそ。ビカム君は悪夢を見ていたんだね。うん、うん。それでいいね。それで、この話は終わりだね。さ、出かけようね」

　「でも、お姉さんに、服着せてもらわないと」

　「あれれれれれ。キモッとか言ってたのに、何でそうなるのかなー。神様、やったーーー、いい気味だ！　って、思ってたのに。それ、違うじゃん。全然違うじゃん。神様を騙してたのかなー？　演技してたのかなー？」

　「えへへ」

　「その『えへへ』ってのは、いらないから。ほんといらないから。聞きたくないから。スクリューパンチ打ち込みたくなるから。やめてくれない。そういうのはなしにしようね」

　「神様、臭いね」

　「はい、はい。そうですね、そうでした。神様タコ部屋で、それはそれはいろいろな汚物にまみれて1日過ごしたからねー。ビカム君とは大違い。まさに天国と地獄だね。そんでもって、神様が地獄って。なーんか、間違えているよね」

　「ゆっくり寝ないと。僕も寝れなかったから、お休みなさい」

　「ぜったーーーーーいにダメ！　もう、その理由考えただけで、殺意しか残らないから。引き摺ってでも、連れて行くからね。もう、ここには、二度と戻って来たくないよね。早く、次の街に行こうね！」

　「じゃ、ここで、お姉さんを待ってないとね」

　「違う、違うよ。そういうことじゃないから。そうじゃないからね。お姉さんを待ってても、何も進まないから。違う物語になっちゃうから。ダメだからね。冒険者は前に進まないとダメだからね」

　「えーー。神様が仕事すればいいじゃん」

　「そうだったねー。神様が仕事するって言ったねー。うん、うん。そうそう。そうだったけど。でも、ビカム君は勇者なので、一緒に来ないとダメだね。残念だねー。もうお姉さんとは会えないや。あーー、悲しいねーーー」

　「まっ、いっか。次だね」

　「そそそ。いいねー、そうこなくっちゃね。って、よく考えたら、なんかムカつくね。どんな次を想像してるのかなー。次の街だからね。次の女の子とかじゃないからね。勘違いしちゃダメだよ」

　「じゃ、ま、そういうことで。おねーさん、お休みなさい」

　「今日は、最後まで腹立つねー。早く外に行かないと、君の場合は、永遠と繰り返しそうだね。もう、起きないとダメ！　絶対ダメだからね。ほら、行くよ！」