第3話 お城の門番


 「やっと、お城に着いたねー。長かったね。坂道を登るのより、君を連れてくるほうに疲れちゃったよ」


 「神様、働いたじゃん」


 「なに、元気に言ってんの? それ仕事じゃないからね。君をここまで連れて来るだけって、仕事って呼べないから。ただのボランティアだね。もうさ、なんか、怒りを通り越して、虚しくなってきたよ」


 「じゃ、ま、そういうことで。僕、帰る」


 「ち、ちょっと、待ったー! それは、なしだよね。なし、なし、なし。神様の苦労が全部吹っ飛んじゃうよ。ようやく、ここまで来たのに、スタートに戻りますって、双六じゃないんだからね」


 「おい、そこのお前たち。何者だ」


 「なんか怖い人出てきたから、帰るね」


 「いや、いや、さっきもいったでしょ。ダメだって。それに、お城には門番っているでしょ。知ってるよね? 怖い人じゃなくて、門番の兵隊さんだよ」


 「へぇー。帰ろう」


 「ち、ちょっと、待っててくれる。分かったから、よーく分かったから。神様が話しをつけてくるからね。ちょっと待ってね。それで、寝ない、帰らない、オオカミ少年でも嘘つかないだよ。なーんちゃってだよ」


 「くだらねー。帰る」


 「あーー、ごめん、ごめん。ちょっとした茶目っ気だよ。悪かった、これは全面的に神様が悪かったから、謝るよ。ごめんさない。それと、ここまで来て、王様に会わないで帰ったら何しにこの世界に来たのか、分からなくなるでしょ。帰るのは、王様と会ってからだからね。よしっ! 危なかったー、寝たみたいだね」


 「ぐぅー、ぐぅー、ぐぅー」


 「ビカム君、起きて、朝だよーー。本当は朝じゃないけど、王様に会いにいくよー」


 「ここ、どこ? あんた誰?」


 「あちゃーーーー。そこまで忘れちゃったの!? また最初からやり直しって、さっき、双六みたいにスタートに戻ったほうがましだったってこと? もう、神様、びっくりだよ」


 「あっ! なんか変態のじじい女だ。キモッ」


 「なんで、そんなとこだけ、思い出すのかなー。そうじゃないでしょ、違うでしょ。神様、ショックで倒れそうだよ。君はね、勇者ビカムだからね。私は神様。それでね、これから王様に会いに行くの」


 「あっ! なんかそんな夢見たなー」


 「それね、夢じゃないから、現実だから。ねっ、ちゃんと現実を把握しようね。いい? 思い出した? これからね、セントラルワールドの王様に会いに行くんだから、しっかりしようね」


 「じゃ、ま、そういうことで。よく寝たし」


 「そうだねー。記憶なくすほど寝てたもんね。ほんと凄いよ。もう、それスキルって言ってもいいね。最強だよ、誰も勝てないよ。でも、大丈夫? あんまり思い出していないんじゃないの? まあ、いいけどさ」


 「えっ! 帰っていいの?」


 「話しがかみ合ってないねー。違うからね、帰っちゃダメだから。それに神様、そんなこと一言も言ってないからね。ほら、行くよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る