第2話 異世界
「新居浜君、起きて、朝だよー。本当は朝じゃないけど、セントラルワールドに着いたよーー」
「あれっ? ここどこ?」
「いや、だから言ってるでしょ。セントラルワールドだって。ほら、あそこに立派な建物があるでしょ。あれが王宮だから。まずは王様のところに行くよ。それと新居浜君じゃまずいので、名前を決めないとね」
「えっ! ダメなの?」
「ダメダメ。ここには、ここのルールがあるからね。何がいいかなー。新居浜透だから『ニート』。それで、いいかい?」
「いやに決まってるじゃん。働きたくないけど、ニートじゃないし」
「あれっ、なんか怒った? 新鮮だね。君の怒った顔、はじめて見たよ。うーん、でも、ニートはだめかー。じゃあ、『ハート』は?」
「いやっだ! そんな恋愛物みたいなの」
「我儘だねー。なら、『ニーハート』は、どう? なんかいいかも? って感じでしょ? どう? どう?」
「神様って、適当なの?」
「いやいや、違う、違うよ。新居浜君は、なんか誤解してるね。神様は、名前なんてつけたことないからさ。どういうのが、いいのか分からないんだよ」
「えっ! 神様は名前ないの?」
「もちろんあるよ。ミスター・ゴッドってのが」
「やっぱ、適当じゃん」
「あれ、あれー。そうじゃないんだけどなー。これは困ったね。じゃあ、自分で好きな名前ある?」
「うーん。ビカム・ノベリストでいいや」
「そうかい。それでいいなら、そうしよう。よしっ! じゃあ、君は今日からビカムだね。新居浜って名前は、捨てないとダメだからね」
「じゃ、ま、そういうことで。お休みなさい」
「いや、いや、今日の仕事は終わりだー。いっぱい働いたわ、みたいなの、やめてくれないかな? 今、まだ、名前、考えただけだよ。これからなんだからね」
「えっ! まだ仕事するの? 神様が変わってくれるって言ったじゃん」
「うん、言った、言ったよー、言ったねー。覚えているよ。でも、もう少し歩こうね。ここで寝たら、それこそ、ダメ人間になっちゃうよ」
「うん。いいよ、それで」
「ダメーーー。ぜんぜん良くないよ。それにさ、ここ道だよ。ほらあの上のほうの王宮に行って、王様に挨拶しないとね。『勇者よ、よくぞまいった』とか言ってくれるから。ほら、やったーでしょ。ひゅーひゅー。カッコいいーー」
「なに、それゲーム?」
「そそそ。もう、それでいいや。ゲーム、ゲーム。ゲームならやるよね?」
「まあ、たまにやるけど」
「うんうん。じゃ、ま、そういうことで。って、君の口癖が移っちゃったよ。そういうことじゃなくて、王宮に行くからね。ちゃんと歩くんだよ」
「面倒だなぁー」
「仕方がないなー。じゃあ、神様、女の子に化けちゃうから。見ててね。えいっ!」
「うわっ。あんた誰?」
「うふふふ。さあ、行きましょ、ビカムさん。ボン、キュ、ボンのナイスバディのわたくしを、お城までエスコートしてくれませんか? 神様ってのはナイショだよ。今はミス・ゴッドだからね」
「キモッ! ないわー。爺さんのTSとか絶対ないわー」
「なっ、なに、それ!? なんで、こんなときだけ、勢いがあるの? もうやめるよTSは。神様、根こそぎ自信、持ってかれたからさー」
「そう。じゃ、ま、そういうことで。お休みーー」
「だから、お休みじゃなくて。ほら、行くよ!」
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