『じゃ、ま、そういうことで』 ～神様を困らせまくる、ぐうたら男の転生記～

第1話 転生

　「うわぁぁぁぁぁぁぁ、走馬灯？　あーーぁ、死んじゃった」

　「まあ、仕方ないか。23年も生きたんだし、こんなもんか。あれ？　なんで泣いているの、俺？」

　「新居浜君、新居浜君。君は、今、死んだねー。ドーンとトラックに跳ねられて。あっちゃーーだね。でも大丈夫だよ。これから転生できるからね」

　「あんた、誰？」

　「神様だよーん。びっくりした？」

　「へぇー。じゃ、ま、そういうことで」

　「ち、ち、ちょっと待って。待ってくれないかなー。ここからが、神様の出番で、一番いいところなのにさ。それはダメだよ。許さないよ。本当に楽しい時間なんだから、少しくらいは、話を聞こうね。罰が当たるよ」

　「えーー。だって、俺、死んだんでしょ？　当たっていいよ」

　「またまた～。さっき泣いていたのを知ってるよ。往生際が悪いなー。神様は何でも知っている。なーんちゃって。調べはついているんだから。まだまだ生きていたいよね。うんうん、そうこなくっちゃね。それでね、君はね、今から、転生して、剣と魔法の世界に行って、魔王を倒す…………」

　「ぐぅー」

　「ちょっと、ちょっと。新居浜君ってば、寝ないでくれる？」

　「いや、話し長いし」

　「いや、いや。まだ4行くらいしか話してないよ。神様はさ、まだまだ君に異世界の心得とか、教えなければならないことがたくさんあるんだけど。ちゃんと聞かないと異世界に行っても、すぐに死んじゃうよ。ほーら、困るでしょ。ねっ！」

　「行かないし。そんなとこ」

　「いや、いや。それはダメなんだなー、残念。君の運命だからね。君が魔王を倒すんだから、行ってもらわないと、神様としても困るんだよね。それにさ、神様って偉いから、お願いすると、みんな異世界に行きます、って言うんだけどね」

　「ふわぁー。興味ないです」

　「やっぱり、3行が限界なんだね。すでに眠気に襲われてるし。でも、最後のは気合入ってたよ。いいねー。その感じでいこうね。でね、君が行くのは異世界のセントラルワールド。君は勇者だから。いいでしょー。はいどうぞ、喋って」

　「ふわぁー。なに、それ？」

　「いや。君、4行目までいくと寝るからさー」

　「そっ。じゃ、ま、そういうことで」

　「いや、いや、そういうことじゃなくてね。いやー、困ったねー。うーん。それじゃ、こういうのはどう？　チート。フルでチートあげちゃうよ。あーーぁ。神様、出血大サービスだね。もう鼻血もでないよ」

　「無双できるの？」

　「もちろんだよ。おっ、興味が出たみたいだねー。いいよ、その調子だね。もう、レベルマックス、魔法使い放題、スキルつけ放題のおまけまでつけちゃうよ。凄いね。これなら、みんなキャッホーって言って、ハーレムを作りに行くよ」

　「ふわぁー。でも、働くんでしょ？　死んだほうが楽だし、眠いし」

　「いや、いや。もうね、いいや。神様、一大決心しちゃった。神様も一緒に行って、神様が働くから。それならいいでしょ。どう？　こんな大サービス、聞いたことないよ。ね、ね、うんって言おうね。いい子だからさ」

　「じゃ、ま、そういうことで」

　「おっ、それ、いいってことだよね。ふー。やっと、納得してもらえたね。よかったー。神様、もう背中が汗でびっしょりだよ。君に来てもらわないと魔王が人類を滅ぼしちゃうんだから。じゃ、今から一緒にセントラルワールドに行くからね。用意はいい？　って、やっぱりダメなのね、3文字しか入ってなかったのに4行目」

　「ぐぅー、ぐぅー、ぐぅー」

　「熟睡してるし……。ねぇ、魔王を倒すのって、この人で、間違ってないよね？　なんか心配だなー。って、誰も聞いていないか」