第33話 コロシアム

 「はぁ、はぁ、ここか。やっと見つけたよ。ここに入ったみたいだね。でも、ここって、闘技場? なんでこんなとこに来たんだろうね。とにかくちょっと入ってみようね。あっ、上に何かあるのかな? 声がするね」


 「ポワン。♡ビカム様ぁ♡勇者様ぁ♡」


 「素敵っ。勇者様ぁー。さ、こんな鎧はさっさと脱ぎ捨てましょ♡」


 「ささ、さっそく湯船に参りましょう♡」


 「うむうむ。よきかな。よきかな」


 「いたよ。見つけたよ。あっ! バカビカム。あっさりとオリハルコンの鎧を脱いで全裸になってるよ。隙だらけだよ。こんなバカ見たことないね。……でも、敵がいっぱいで、まだ近寄れないし。少し様子を見ようね」


 「じゃ、ま、そういうことで。みんな集まれー」


 「ポワン。♡ビカム様ぁ♡勇者様ぁ♡」


 「ビカム様は私のものー♡」


 「もーう、なに言ってんのよ。私のものよ♡」


 「ダメーー。私が一番なんだからー♡」


 「ふむふむ。仲良く、仲良く」


 「あーーー、いつものやっているよ。ハーレムしているよ。鼻の下を伸ばしているよ。それにしても、こんな闘技場の上に、なんでこんな大きな風呂があるんだろうね。なんだろうね。不思議だねー」


 「それじゃ、肩叩きを始めますね♡ どうぞ、こちらの椅子に♡」


 「わーい。うーん、しゃーわせーーー」


 「それっ。今だーーー。逃げろーーー。変態勇者から離れろー」


 「えっ! えっ! なに、なに、なに??」


 「ドッドッドッ、ドーーーーーーーーーーン」


 「えーーーー。バカビカム風呂場ごと下に落ちちゃったよ。底が抜けて落ちちゃったよ。凄いシーンだね。上からドーンって、風呂ごと落とすような大仕掛けを作るなんて。って、そんな場合じゃないね。早く下に行かないと」


 「痛たたたた。何、何があったの?」


 「あちゃーーーーー。何これ! 何なの? コロシアムの客席が狸耳娘の兵隊で埋まっているよ。完全に包囲されているよ。中央でバカビカム全裸で呆然としてるし。これはやばいね。こんな罠だったとは、神様びっくりだよ」


 「それー! かかったぞー」


 「弓隊撃てー! 親分の仇討ちだー!」


 「うわぁ! うわっ! なんだ! なんだ!」


 「ギャハハハ! いけいけ、どんどんいけー。ハリネズミにしろ! 魔王様も喜ぶぞーー」


 「あちゃーー。あいつコロシアムの中央で、矢の雨を浴びてるよ。何が起こったのか、まだ理解してないね。それにしてもあのアイパッチの仲間だったんだね。しかも魔王も絡んでるのか、って、それはビカムの自業自得か!」


 「よしっ! 次、魔導師! 怒りの魔法をエロ勇者に叩きつけろー」


 「ファイナルファイヤーラクーン!」


 「ファイナルサンダーラクーン!」


 「ファイナルアイスラクーン!」


 「いけいけーーー! 総攻撃だ!」


 「うわっ! 痛っ! 痛っ!」


 「うわーーーー。ビカム全方位からの魔法攻撃を浴びてるよ。まずいね。ちょっとHP見てみるよ。えっと……。9ケタってなんだよ。いくつかすぐに分かんねーよ。えっと、1億9589万4584だって……。ぜんぜん平気だね」


 「くそ勇者め! やはり、物理、魔法攻撃じゃダメか。よしっ! 奥の手だ。やれーーー!」


 「オーロラビジョン。スタート!」


 「スポットライト点灯!」


 「ラキスケ映像流せ! 晒せ! 晒せ! 晒し者にしろーーー」


 「ギャハハハハ。ありえねぇー。あんなラキスケあるの? キモッ!」


 「キャハハハ。ねぇーわ! こんなラキスケねーよ。変態大王」


 「あぅ、あぅ! ぎゃーーーーーーー! やめて! やめて!」


 「やばやばやば! これはやばいね。えーーー今ので7000万もダメージくらってるよ。まずいよ。こいつら攻め方を知ってるよ。このまま攻撃されたら終わっちゃうよ。勇者が倒れて終わりだよ。最悪だね!」


 「ギャハハハハハ。エロガキめ! 親分の仇だ。狸耳団の恐ろしさを存分に味わい、精神崩壊してしまえ!」


 「ギャハハハハ! うろたえてる! 全裸でうろたえてるよ」


 「おもしれーー。最高のショーだ! ギャハハハハハ!」


 「よし、いけー次! 階段でのラキスケ映像ーー。ギャハハハハ」


 「次、次、着替え中のラキスケ映像を流せーーー。ギャハハハ」


 「止めだーー。エロガキ勇者の鼻の下、ドアッーープ。ギャハハハハ」


 「あぅ、あぅ、こんな羞恥プレイ、もういやだ。うわーーーーーーー」


 「えーーーーーーーーーーー。まずい。ついにやっちゃったよ。手首を切っちゃったよ。血が噴き出してるよ! おいおいおい。どうすんだよ、これ! HPが一気に減ったよ! やばい、やばいよ!」


 『 ──GAME OVER── 』


 「ギャハハハハハハ! ギャハハハハハハ! ゲームオーバーだ! 我らの勝利だー!」


 「やった! やった! 狸耳団、ばんざーい! 狸耳団、ばんざーい! 狸耳団、ばんざーい! 狸耳団、ばんざーい!」


 「親分。仇は討ったよー!」


 「なになに、オーロラビジョンにゲームオーバーが出ちゃったよ。これで終わり。終わりなの? 間抜けな勇者がハニートラップにかかって、あえなく自害の物語。ダメだよ、そんなのダメだよ。ありえないよ!」


 「あっ! くそっ! まだ、生きてるみたいだぞ! しぶといやつめ」


 「ふーー、まだ、ぎりぎり、生きてるね。とりあえずは良かったよ。でもまずいよ。もう、HPが12451まで落ちて、HPバーが赤く点滅しているよ。本当に止め刺されちゃうよ。最強勇者がこんな形で死んじゃうよ。サイテーだよ」


 「くそっ! 死ね! 親分の仇め! くそっ! くそっ!」


 「それっ! なんでもいいから投げつけろーー」


 「ぐちゃ! どちゃ! どん! どちゃ! ぐちゃ! どん」


 「いけいけーー。全部投げろー。あと少しだ!」


 「うっ! うっ! ぐぇ! ぐぇ!」


 「まずい、まずい。卵とか泥団子とか投げられて、少しずつHPを削られてるよ。じりじりと死へ追いつめられてるよ。サンドバックになってるよ。虫の息になってるよ。どーーすんだよ、これ! って、誰も聞いてないか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る