第31話 捕縛

 「わーい。わーい。犬耳姫だー」


 「おぉぉぉぉ、ビカムちゃんやないの。元気やったか」


 「ビカム殿。もう、お目覚めかのー」


 「あっ、一瞬で止まった。今にも戦いそうだったのに、あっさりと止めたよ。ふたりとも偉いんだね。バカを起した甲斐があったね。神様の狙い通り、計画通り、裏通りは危険がいっぱい。あ、これもう使ったね。ま、いっか」


 「じゃ、ま、そういうことで。あっしらは、そろそろお暇しないと……」


 「ピッピッピーー。はーい、そこの狸たち。逃げられると思ってるの? さんざん悪事を働いて、それはないでしょ。海賊狸なんでしょ、バカだけど。残念だなー。神様は見逃すことはできないなー。お縄だよ。それ、かかれー」


 「よーし、みんなー、最後の復讐戦だよーー。フルコースでかかれー」


 「うわっ! なんだ、こいつら。やめろーー。俺は海賊狸だぞ!」


 「親分! 助けてー。うさぎが、うさぎが、カチカチしてる」


 「辛い、辛い。とうがらし攻めだ。やめろー」


 「うわーー。泥団子だー。見えない、見えない」


 「フルコースってカチカチ山作戦ね。まあ、どうでもいいけどね。どんどんお縄にして、これで一丁上がりだね。さすがにドラゴンや吸血姫たちが見てる前では抵抗できないみたいだね。あれ? なんか、親分がバカのとこへ行った……」


 「勇者様、勇者様。我らが本拠地にいらしていただければ狸耳娘が、よりどりみどりですぜ。助けてください」


 「ほう。それは聞き捨てならんな。話してみい」


 「ヘッヘッヘッ。そうこなくっちゃな。勇者様、こちらが好物の山吹色狸耳娘肩叩き券でございます。どうぞ、お納めください」


 「クックック。海賊狸、おぬしも悪よのー」


 「いえいえ、めっそうもない。勇者様ほどでは……。ガハハハハ。では、手筈通り、バニーたちはあっしらが……」


 「ふむ。わしは知らぬということで、姫様たちと寝ればいいんだな」


 「フッフッフッ。そのようにしていただければ、あとはこちらで……」


 「「フッハハハハハハ」」


 「おいおいおい! さっきから聞いていれば、何してんだお前ら。バカビカム! 越後屋と悪代官ごっこしてんじゃねーよ。ふざけんなよなー。何が狸耳娘肩叩き券だよ。それが山吹色で何が嬉しいんだよ!」


 「フッ。じゃ、ま、そういうことで。お休みなさい」


 「お前なー。寝るな! 絶対に寝かせないよ。絶対に4行まで喋らないからね。これは寝かせられないよね。まったく、こんなバカ狸と裏取引して何が楽しいの? もう、ほんと呆れるほどバカだね」


 「人質交換だよ。救わなきゃ!」


 「ね、ね、ね。誰が人質? ねぇ! 君が差しだそうとしているバニーのこと? それ交換じゃねーし、渡すだけじゃん。本当に、何がしたいの? こんなやつらを信じるの? 山吹色に目が眩みすぎだよ。しかも肩叩き券でね」


 「神様って、人を見る目がないねー。残念だね」


 「いやいやいや。残念とかそういうことじゃなくて……、人じゃねーよ、狸だよ。アイパッチした海賊狸を見る目なんていらねーよ。そんなのいらないねー。 それこそ、山吹色の袖の下をもらっても、いらないね」


 「賄賂をもらうなんて、最低だね」


 「違う、違う、ちがーーーう。それはお前だろ、バカビカム! 『おまゆう』してんなよなー。もう、いい加減にしてほしいね。さすがに、神様も疲れて来たよ」


 「じゃ、一緒に寝ようね」


 「だからー。まだ、狸との約束を守るの? 絶対にそんなことさせないよ。もうね、物語エタっても阻止するねー。なんとしてでもそれはさせないからね。なんで、勇者が悪代官になってんだよ。勇者の残念物語になっちゃうよ」


 「ちぇーー。ま、いっか。もう、もらっちゃったし。いいや」


 「えっ! 勇者様、それではお約束が……」


 「神様がうるさいからさー。じゃ、ま、そういうことで」


 「そ、そ、そんなーー。ガクッ」


 「とかげの尻尾切ったよ。あっさり切ったよ。もの凄く早く切ったよ。軽く逃げ切ったよ。でも、これでさすがに海賊狸も終わりだね。まあ、バカ勇者なんかと越後屋悪代官ごっこやった罰だし、いい気味だね!」


 「もう、ええかな。終わったみたいやな。うちも騎士さまとして、少しは仕事せんとあかんからな。こいつらと、抜け駆けババアを連れて行くで!」


 「犬耳姫様は、さすがだね。きっちりとまとめてくれて偉いね。神様、断固、応援するね。そんじゃ、よろしくお願いします。あーー、越後屋狸は、どうせ更生なんかしないでしょうから、無期懲役でお願いします」


 「おとんによーゆうとくわ。神様がババアを無期懲役にしろとゆうてたとな。あー、そんなんせんでも、もう棺桶に足ちゅうか、頭ごと突っ込んでたな。ギャハハハ。そんじゃなー、ビカムちゃん。また一緒に風呂入ろーな」


 「おんしは、まだ懲りんのかのー。妾が、あとで毛づくろいして、間違って、尻尾でも切ってやるかのー。クックックック。では、ビカム殿たっしゃでな。寂しくなったら、いつもで呼んでくれればいいからのー」


 「犬耳姫ー、ウサ耳姫ー、バイバイ。またねー」


 「いっちゃったねー。どうなることかと思ったけど、なんとかなったねー。良かった、良かった。なんか最後もまた言い合いしてたけど、まあ、あれもお約束だからね。うんうん。気にしないでいいよね」


 「さ、じゃ、ま、そういうことで。バニーたちと宴会だね。やったね!」


 「もう、それさ、サイテーだね。ビカム君は、一回誰かに刺されないと分からないみたいだね。もう、宴会はなし。なしだからね。そろそろ次の大陸に着くよ。宴会なんてしないで、ほら、行くよ!」

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