第29話 恐怖のお仕置き

 「ちょっと、ちょっと、吸血姫のお姉様。それはないんじゃないですか? それはないですよね? それでは神様が浮かばれません。せっかくお呼びしたのに。せめてキャプテン・ラビットを倒していただかないとなー」


 「うん? ゴミ虫はうるさいのー。妾には妾のやり方があるのじゃ。黙って見ておれ」


 「あれっ! なんか、吸血姫様、そんなのお見通しだモードに入ってるね。これは期待できるかな。これから楽しいお仕置きの時間みたいだね。どんなお仕置きをするんだろうね。ワクワクだね」


 「さ、宴会だー。みんな集まれー」


 「は……い」


 「バカだねー。ひとりバカがいるねー。でもバニーたちは、マジ宴会やるの? これから? それはないよね。って、顔してるよ。それが普通だよねー。うんうん。やっぱひとりだけ浮いているわ、あのバカビカム!」


 「さて、それじゃ宴会芸を教わろうかのー。キャプテン・ラビットとやら」


 「えーーーと。宴会芸ですね……。ほら、みんな、なんかお出しして」


 「えーーーー、そこで振るんですか? それは無理ですよー」


 「あれは、もうキャプテン・ラビットの頭の中、真っ白だろうね。シロイルカが群れで泳いでいるね。もちろん幼稚園児じゃ、宴会芸は出せないだろうしね。どうするの、これ? うわっ! 吸血姫様の顔、超怖いんですけど……」


 「うん? どうしたのじゃ? 早くせんとビカム殿が寝てしまうぞ。それはまずいのぉ」


 「「ひぃー、怖い! 怖い!」」


 「早くっ。早くっ。宴会芸」


 「ひとりだけ浮いているねー。なんだろうねー。まあ、いつものことかな。それにしてもどうするんだろ? 何が飛び出すかちょっとドキドキだね。もちろん他人事だから、こんな風に余裕こいて言っていられるんだけどね」


 「これは、困ったのぉー。なら、まずは、妾の宴会芸でビカム殿を楽しませんとならんなー。キャプテン・ラビットとやら、まずはおんしからじゃの」


 「えっ! えーーと、私はキャプテンですから、船内の見回りとかあるので、最後、最後でお願いします。ほら、お前、先に行ってこい」


 「いやですよー。キャプテンが一番」


 「「キャプテンが一番!」」


 「貴様らー、恩を仇で返しおって」


 「出でよ! 眷属!」


 「あっ、もたもたしてたバニー達にしびれ切らして、眷属呼んだよ。うわーーー、ゾンビやら、スケルトンやら、死霊騎士やら、恐ろしいのが出て来たよ。うさぎ船が一瞬で幽霊船になっちゃったよ」


 「眷属ども。そやつをしばってこの棒の先に吊るせ!」


 「ぎゃーーーーーーーーー。やだ、やだ、やめて!」


 「「ひぃーー。キャプテンピンチ。でも怖い! 怖い!」」


 「吸血姫様、どこから持ってきたのか、竹の棒の先に紐で括ったキャプテン吊るして……。あーーー、海のほうにそのまま、出しちゃったよ。なになに、これなにしてんの? 紐を切って、海にザップーンって落とすとかのお仕置き?」


 「さっ、ビカム殿。これから、妾のとっておきの宴会芸『うさぎでサメを釣る』をお見せしましょう」


 「ぎゃーーーーーーー。それなし、それはなしでお願いします。なんでもしますから、やめてください。助けてください。もう魔王とは手を切ります。裏切ります。だからやめてーーー。助けてーーー!」


 「えーーーーー! 怖えーーーーー。さすがの神様もガクブルだよ。海老で鯛でも釣ってなよ。それ怖すぎるよ。吸血姫様は怒らせたらダメだね。キャプテン、もう失禁状態で泣きわめいているよ。でもそうなるよね」


 「うさぎさん、泣いているよ」


 「ビカム殿、よく気がついたのー。じゃが、それも芸のひとつ。では、もう少し派手にするかのー。ほれ、かまいたち」


 「痛っ! ポタッ、ポタッ。アギャーーー! もう助けてーー! わぁーーーーーーーーん。バシャバシャしてる。怖い、怖い、怖い!」


 「「ひぃーーー。怖い、怖い、怖すぎる。いやだ、あれしたくない」」


 「うわーー、シャークがいっぱい来ちゃたよ。切られたキャプテンの血に集まってきちゃったよ。……ビカム君、そろそろやめさせようね。もう十分かなー。吸血姫様ぁー。そろそろ、おあいそのお時間ですよー」


 「ゴミ虫はうるさいのー。邪魔をするでない。ここからが本番じゃのに」


 「じゃ、ま、そういうことで」


 「怖い、怖い。神様ぁーーー、助けて! あなただけが頼りです。もうなんでもしますから、ほんと助けてください。マジ助けてください。神様ぁーー」


 「あちゃーーー、これどうすんの? そういうことじゃねーだろ。まったく。あっ! これか! もう、これしかないな。吸血姫様ぁー。ビカム君が、もう、疲れて寝たいと言っておりますので、お食事どうぞー。新鮮な血ですよー。ピチピチ、ビカム君の首筋が大安売りですよー。早くしないとお店閉まりますよー」


 「なに、言ってんのかみ……、ぐぅー、ぐぅー、ぐぅー」


 「なっ、なんと。それは急がねばのー。もうこれはいらんな、ポイッ」


 「痛たたた。なんでこっちに投げ捨てるかなー。神様血まみれ、って、キャプテン・ラビットぎりぎりで助かったねー。まあ、よかったねー。これで一安心だね。うんうん。惨劇を避けるためのバカの血なら安いもんだ!」


 「ちゅーーーーーー」


 「はぁーーー、気持ちいいーーーーー」


 「あ、あ、あ、り、り、が……とう…………」


 「あーーもういいから。キャプテン・ラビットさんも、さすがにこれは懲りたよね。見てる神様も恐怖だったもんね。でも、次やったら、神様助けないからね。よーく覚えておくんだよ。そっちのバニーちゃんたちも。いいね」


 「神様ぁー、神様ぁー、ありがとう。神様ぁー。ありがとう」


 「よしよし。いい子だ。うんうん。神様はね、そういう人だから。どっかのバカ勇者とは違うからね。これは、ひょっとして神様100年ぶりのモテ期かな……」


 「ビカムキーック! ドーン」


 「え、え、え、何が起こったの? ヒューー、ボッチャーーンって」


 「ダメだよ。神様と遊んじゃ!」


 「あのやろーー! って、ぎゃーーー。海に落ちて……サメが来た。キャプテン・ラビットの血を浴びてるし。やめて、来ないで。最悪じゃん。って、誰も聞いてないか。とか言ってる場合じゃない。逃げろー」

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