第26話 クラーケン

 「ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワンポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン、ポワン」


 「えーーーーーーーーー、何とんでもないはじめ方しているの? これあれ? あれですか? あれなの? あっという間に『恋のキューピット』炸裂ってやつ。やっぱハーレム船じゃん。降ろしてーー、いやだよー。こんなの」


 「フッ、計画通り!」


 「あーーー、悪いやつ出たねー。悪い勇者がここにいたよ。とんでもない勇者がここにいるよ。おまわりさーん、捕まえてくださーい。って、あーー桟橋が遠くに……。もうダメだね。地獄のはじまりだね。逃げ道ないよ。どうしよう」


 「はーい。ビカムだよー。うさぎさん集まれー」


 「♡ビカム様♡ビカム様ぁ♡勇者様♡勇者様ぁ♡」


 「うーん。しゃーわせ」


 「あーーーぁ。それにしても早かったねー。どうなってんだろうねー。バニーたちとお戯れのお時間きちゃったよ。もうさ、どうしようかねー。って、うわぁ! なんか来たよ、船がぐらぐらしているよ。なに、なに、なにが来たの?」


 「クラーケンだよー。みんなー、気をつけてー。危ないよー」


 「クラーケン! 海の怪物来ちゃったよ。大変だよ。でもダメだね。かなりダメだね。やっぱダメだね。こんな船に乗ったのが悪かったんだね。こら、ビカム! あいつを何とかしないと海の藻屑になっちゃうよ!」


 「ぱふん、ぱふん、ぱふん」


 「あちゃーーー。うさぎさんたちに囲まれて、ここぞとばかりに船の揺れを利用してラキスケラッシュしてるよ。ひどいシーンだねー。最悪だねー。ビカム君のご両親には、見せられない顔だね。もちろん親なんて、知らんけどね」


 「うーん、天国」


 「昇天しちゃってるねー。クラーケンが暴れまくっているのに、どうなってるんだろうねー。あっ、うさぎさんたちが、甲板に出て戦闘態勢に入るよ。おっ、やるときはやるのかねー。ちょっと見てようね」


 「みんなー、いくよー。用意はいいかなー」


 「「「「はーーーい」」」」


 「ほんと、とことん幼稚園児だね。って、ビカム君へらへらしてたら、クラーケンに捕まっちゃったよ。たこ足でぐるぐる巻にされて、連れて行かれちゃったよ。やばいね。もうこうなったら、うさぎ隊の攻撃に期待するしかないね」


 「カチ、カチ! カチ、カチ! カチ、カチ!」


 「あちっ、あちちちち。バシャ、バシャ」


 「期待した神様がバカだったねー。3秒前の神様に説教5時間だね。うさぎ隊、火打ち石を打ってるだけだし。ビカムはビカムで、火花を受けてあちちとか言いいながら、海にバシャバシャ叩かれているし。どんな戦闘シーンだよ、これ」


 「次いくよー、それーー。とうがらし」


 「辛い、辛い。バシャ、バシャ」


 「今度はとうがらし投げているよ! あれ、ほんとにクラーケンなの? 狸じゃないの? うさぎさんチーム、方向性というか戦い方というか、とにかく、バカすぎるよね。さすが幼稚園児だね。いったい、この戦いはどうなるの?」


 「よーし。止めだー! 泥つぶてー いけー」


 「はーい。いけー、いけー」


 「いやいや、クラーケン、ダメージ負ってないから? 元気だから。止めにならないから。ビカム君を痛めつけてるだけだから。って、あれー、うさぎ隊、ビカム君、狙ってるよ! 何、何? まあ、やれ、やれー、だけどさ」


 「うわっ! うわっ! 汚い。見えない。いやだ」


 「ギャハハハ。ビカム泥まみれ。いい気味。これは面白いショーだね。うさぎさんチーム100点満点だね。って、もしかして……。こいつら幼稚園児のフリをして、すべてを分かってて? ビカムは、もう限界来てるし……」


 「うわーーーーーーーーーーーーー! スパスパスパスパ、スパーン!」


 「わーい! 勝った! 勝った」


 「おおお、ビカム君、怒りの『光速斬り』出したよ。クラーケン刺身にされちゃったよ。あっという間だよ。やっぱり強いねー、バカだけどね。それにしても、このうさぎ隊、侮れないよ。危険な匂いがするねー」


 「もう、ふざけんなー。宴会のやり直しだー」


 「わーい。宴会だー。ビカム様ぁ♡」


 「じゃ、ま、そういうことで。うさぎさん、みんな集まれー」


 「ビカム君が激怒したのは、ほーーーんの一瞬だったね。もう鼻の下を伸ばして、また、うさぎさんたちと戯れてるよ。やっぱ、バカだね。どうしようもないね。でも、なんだったんだろうね!? このクラーケンとの戦いは?」


 『なんとっ! エロガキのくせに、やはり強いか。しかし、まあ……』


 「あれ? 何だろうね。あんなところに、ひとりだけお戯れの群れから仲間外れのバニーガールがいるよ。あれは何だろうね? なんか、ぶつぶつと呟いていたみたいだけど……。ちょっと行ってみようね」


 「魔王様! このキャプテン・ラビットが、必ずや勇者を討ち取ってみせましょう。クックックック」


 「えーーーー、見ちゃったよ。神様、聞いちゃったよ。キャプテン・ラビットって魔王の手下だよ。やばいねー。海の上だしねー。どうしよう。……って、誰も聞いてないか……。って、聞いてたよ。キャプテン・ラビットが!」

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