第24話 王様と神様

 「王様と取り残されたねー。バカ勇者たちは行ってしまったねー。ここでもう一度作戦会議だね。王様、王様、今度こそ、魔王を倒せって言ってね。ねぇ、分かった? 聞いてるの? さっきのも聞いてなかったの? こら! 王様ってば」


 「キャサリンにレウまで……。こうなれば三女のほたる姫だけは……」


 「はい。カット、カット、カーット! カメラさんフィルム止めて。音声さんと照明さんは30分休憩ね。ダメダメそれNGワード。スポンサーさんからクレームくるから。もうさ何を言ってるのかなー。ちゃんと台本を読んでよね」


 「ん? NGワード?」


 「そそそ、ほたる姫はダメだなー。それは許可できないなー。スポンサーさん降りちゃうよ。物語が続けられないよ。ちゃんと台本を見てくんないかなー。そこは魔王を倒してもらわなきゃでしょ。私情はなしね。やめてくれない?」


 「神様は何を言っておるのだ?」


 「あーー、もう、頑固親父だねー。いい。それは言ってはいけないの。そんなことをあのバカ勇者が聞いたら、大変なことになるでしょ。この前、犬耳姫でバカやったの、あんただからね。ひとりで、墓穴を掘らないでくれないかなー」


 「しかし、わしは、ほた……」


 「はい。またカット。使わないよ。こんなの。永久にお蔵入り。編集でチョッキンね。そのままゴミ箱でもいいよ。ダメダメ。王様さー、それは言ってはいけないことだから。いくら神様が慈悲深くてもそれだけは許せないなー」


 「なに、なに、なにを言ってはいけないの?」


 「あっ、まずい。ビカム復活。王様はしぃーーだよ。そんでまーた、一段とすっきりさわやかさんになって、何してんのかなー君は? 今、神様は、王様と大事な話してるんだから、あっち行ってて。って、姫様たちはどうしたの?」


 「うーん、疲れたから休むって」


 「なーんか知らんけど、腹立つねー。無性に殴りたくなるねー。何に疲れたのかなー。神様は深くは突っ込まないけどね。うんうん、これ以上は聞いても、腸煮えくりかえるだけだろうしね」


 「猫耳お姉さんは?」


 「あーー。そう言えば、いなかったねー。どうしたんだろうねー。きっと仕事でしょ。って、どうでもいいね。もうさ、ビカム君のことを嫌いになったんじゃないかなー。うんうん。いつ愛想を尽かされても、納得の3重丸だからねー」


 「じゃ、僕、ギルドに切符買いに行くね」


 「ち、ちょ、ちょっと! えーとね。それね、変な人だから。また行くのはなしだから。それにギルドで切符は売ってないし。君は魔王を倒しに行くの。いーい。ほーら、ほら、この五円玉を見て、君は魔王を倒したくなるー」


 「くだらねー」


 「やっぱ催眠術はダメかー。さすがに通用しないね。って、おいおいおい。こらっ、ビカム! 何がくだらないの? ねぇねぇ。君はさー、ハーレム作るために、ここに来たんじゃないからね。魔王を倒しに来たんだからね」


 「ピーーーーーーーー」


 「まーた、角笛ですか、そうですか。そんなの予想通り! 計画通り! 表通りは車でいっぱいだよ。なんちって。あのさー、ここで悪魔三銃士呼んでどうするの? もう止めてくれないかなー、そういうのは。って、来ちゃったよ」


 「我ら、悪魔三銃士を呼んだ……、のは、あなた様でしたか。それで御用は?」


 「あれれれ、なんか悪魔三銃士、プライドを捨ててるよ。情けないねー。それでも悪魔なのかねー。あーーぁ、こいつらもう出番なしね。スポンサーに相談しに行くよ。番組再編、待たずに速攻で降板だね」


 「うーんとね。魔王を倒してきて。僕、遊んでるから」


 「ちょっと、ちょっと。こらこらーー。こいつらに何をお願いしてんの。本当にサイテーだね。どうしようもないね。遊んでるからとか強調してるし、さすがに悪魔たちもこれはできないよね。ねぇ! ねぇ!」


 「いや、勇者様、それはさすがに無理です」


 「そうなの? ダメだなー。やる前からそんなんだからダメなんだよ」


 「出たね! とんでもないの出したね! まさしく『おまいう』だね。ほんと『おまいう』だよ。何度でも言いたいよね。それにこんなヤツにへこへこしてる悪魔三銃士も、さっさと消えてほしいね。物語の邪魔だね」


 「っ! おんしらは、悪魔三銃士! 妾の花婿に何をしてる。くらえ! ファイナルファイヤーアロー!」


 「あちゃー、吸血姫が起きてきて、あっという間に攻撃しちゃったよ。ドーーン! って、悪魔たちと一緒にお城の半分壊しちゃったよ。角笛で起きたのかなー。って、今度は角笛で吸血姫が来るの。それはそれで最悪だね」


 「あーぁ、死んじゃった。ま、いっか。使えないやつらだし」


 「ビカム殿、無事であったか♡ それでは、妾はまだ腰が痛いので、もう少し休ませてもらうかのー」


 「もう、何なの? これ? さすがにこれだけ突っ込みどころを一気に出されると3行では突っ込めません。無理です! 神様の処理能力の限界を超えてます! まあ、吸血姫も寝にいっちゃったし、今がチャンスだね」


 「では、勇者ビカムよ。魔王を倒してまいれ。さすれば望みを叶えよう」


 「おおおお、ようやく言った。ようやくだよ。チャンスに的確に動いた王様、偉いねー。少しは見直したよ。一時はどうなることかと思ったけどさ。これで物語が進むね。あとは、姫様たちが戻る前に、さっさと逃げないとね」


 「じゃ、ま、そういうことで。お休みなさーい」


 「おっと、逃がさないよー。ダメダメ、絶対ダメだからね。やっと魔王退治に出かけられるんだから、お姫様たちのところなんかに戻さないからね。ほら、ほら、ほら、行くよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る