第23話 王様 リターンズ アゲイン

 「やっとお城に来たねー。ビカムのやつ、すっきりさわやかに日焼けして、なんなんだろうねー。でもね、今回は先にね、王様と打ち合わせしたから。大丈夫だから。今度こそ、物語が一気に進むからね。期待いっぱいだよ」


 「勇者ビカムよ。よくぞ、犬耳……」


 「さぁ、お父様。これでわたくしとの結婚と大浴場とベッドですわね」


 「ワンワン」


 「えーーー、なになに、この姫様? いきなり割り込んで、王様の言葉を途中で遮っちゃったよ。ダメじゃん。早くさー、魔王を倒すまでは許さん。って言ってくれないと。ダメダメダメ。ねぇ、ねぇ、早く。急いでよー」


 「どうされました? お父様。まさか、あれは嘘だよーんとかは言いませんよね。妹の犬耳姫、レウたんが戻ったんですから」


 「ワンワン」


 「いや……。それは、その……、レウが戻ったのは嬉しいのだが……」


 「えーー、王様が押し負けてるよ。おいおいおい。やめてくれないかなー。頑張ってくれないかなー、の、かなかな蝉、ヒグラシだよ。なんちってだよ。バカ勇者は舌を出して、姫様の言葉に乗って、ワンワン吠えてるだけだし」


 「おとん。また、しばらくやっかいになるわ。よろしゅうな」


 「ほら、レウたんもこう言ってますわ。お父様」


 「ワンワン」


 「いや……。だから……、そのだな……」


 「あちゃーー。しまったねー。そういえば、バカ姫様が曲者だったねー。正妻がビカム・ハーレム計画を進めてて、もう、王様も手を出せないレベルになっているねー。バカは、まだワンワン言ってるし。これは、まいったねー」


 「それにしても、妹は仕方がないにしても、あんたはなんなの? わたくしは聞いてませんわよ!」


 「妾のことか? 妾は吸血姫じゃ。おんしみたいな、子どもに用はないがのー」


 「だ、だ、誰が、子どもですって! ビカム様の正妻であり、第一王女であるわたくしに対して、な、何んて失礼なことを言ってますの! もう、レウたん説明して」


 「いや、そないなこと言われてもなー。うちかて、こんなババアのこと説明できひんよ」


 「あれっ? なんか話が破綻の方向に行ったよ。これは思わぬ展開? いい感じ? いけいけーー。弾けろ! ぜろ、ハーレム計画! って、神様は、少し大人しくしておくよ」


 「ババア? そう、なんですの? キャハハハハハ。そうですの。そうでしたか。お婆さんは、側室にはなれません。残念でした。じゃあ、用事はないから、さっさとお引き取り願いましょうね。ほら、褒美よ。チャリーン」


 「いらんな、そんなもの。まっ、妾も、こんなとこに用はないからのー。じゃ、ま、そういうことで。ビカム殿行こうかのー」


 「はーい。またウサ耳してくれるの?」


 「やはり、ウサ耳であったな。うんうん。分かっておるわ」


 「こ、こらっ! 何を言ってますの!」


 「うん? 誰に言うておるのじゃ」


 「あんたよ。あんた。吸血姫の糞ババア!」


 「ほうー、やる気かのー」


 「姉さん、任しとき。うちがいてこましたるわ!」


 「またかのー。バカ犬も懲りんのー」


 「って、やっぱダメだねー。神様放っておこうかと思ったけど、混乱するだけだねー。物語は一向に進まないし、バカ勇者はへらへらしているし。お姫様たちの大乱闘になるだけだね。これはダメだね。それにしても困ったねー」


 「神様ぁー。僕、どうしよう?」


 「なーにが、神様ぁー、だよ! だーれが僕だよ。なーにが、どうしようだよ。お笑いだね。噴飯物だね。ヘソが茶を沸かすね。全部ビカム君の自業自得だから、神様は知らないよーっだ。そこで、神様ぁーは、なしだよね」


 「神様が働くって言ったのに。だから遊んでたのに」


 「そうだねー。言ったよ。働くとは、言った。でも、お姉さんたちとキャッキャッしてていいとは言ってないなー。残念だねー。君は遊んでたみたいだけど、それは知らないなー。そこは神様の圏外だなー。アンテナ立たないね」


 「ビカム様! ビカム様! 屑と遊んでいる暇はありませんわ。これから専用大浴場の落成式ですわよ。わたくしと一緒に、早く行きましょう♡」


 「妾も楽しみじゃ。気持ち良いことなのじゃろ? 風呂とは♡」


 「まあ、そうやな。皆で汗流すのもいいやろなー♡ うちがビカムちゃんの背中を洗うさかいな♡ あんたは足の裏な。ギャハハハハハ」


 「なっ! 妾は首筋に決まっておろう♡ おんしが、足の裏でもペロペロ舐めるんじゃな。クックックックッ」


 「まあ、まあ、ふたりとも。仲良く、仲良く、順番ですわ。ビカム様は逃げませ……、いえ、逃げられませんから♡」


 「うん。僕、お風呂で逮捕されちゃう」


 「おいおいおいおい。えっ、えっ、えーーーー。あれ? あれ? あれ? さっきまでの流れは? ねぇ、ねぇ、どこへ行ったの? 神様がバカの相手をしてたら、全部解決したの? 戦いは? 罵り合いは? やめてよね」


 「ビカム様の付き人は、しばらくここでお父様のお相手でもしてなさい」


 「あーー、そゆこと。そういうことね。仕切っちゃったのね、バカ姫様が! そうね。そういう展開ね。よーく分かりました。はいはい、この間もそうでした。神様忘れてましたっと。お姫様のハーレム計画に掛ける熱意をね」


 「それじゃ、屑はお父様にお任せして、行きましょう。ビカム様♡」


 「じゃ、ま、そういうことで。僕、逮捕されまーーす」


 「あーぁ、行っちゃったよ。姫様と犬耳姫に腕を掴まれて、吸血姫に首筋『ちゅーーー』されながら、行っちゃったよ。王様とふたりで残されちゃったよ。はーーぁだよ。って、誰も聞いてないか。……って、王様が聞いてるね」

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