第22話 湖

 「えーー、何してんの? おいおいおい、お城に戻るんじゃなかったの? そこですか? ここでお休み? 何してんのかなー。そんなパラソル持ってきて? なになに、今日は水着回とか? アニメじゃないんだから、それはいらないなー」


 「疲れちゃったから、お休みしないとね」


 「いやいやいや、それ違うなー。あーー、そういえば、そういう視聴者向けのご都合主義は物語を破綻させるよね。今、それ、それだから。それしてるから、って、なんかみんなで水着になってるし。姫様たちはお似合いだけどいらないよ」


 「ゴミ虫は、うるさいんじゃのー」


 「あーー、いてる、いてる。空気読まないゴミ虫な。まあ、気にせんとこ」


 「おふたりとも、水着が良くお似合いですよ」


 「そ、そうかのー♡」


 「なんや、恥いなー♡ ジロジロ見んといて♡」


 「はい、はーい。これは勇者の物語です。バカンスはありませーん。そういう水着回はいりませーん。そんなバカップルのお決まりのセリフは、もっといりませーん。リア充爆発しろ! 弾けろ! ぜろ! ですよー」


 「ビカム殿、まずはオイルを塗ってくれんかのー♡」


 「ババアが! 何、抜け駆けしとんねん。うちが先や。あんたは、このスライムでも背中に乗っけとき。ほらっ! ギャハハハハ」


 「ボッン! ようもやってくれたな。バカ犬が! おんしもスライムのように破裂させてくれよう」


 「ダメダメ。仲良くね!」


 「あっ。そ、そうやったな。ちーと遊び過ぎたわ。堪忍な。吸血姫さん」


 「あっ。そ、そうだな。妾も少し大人気なかったのー。犬耳姫よ」


 「あちゃー、まーた、この展開だね。もう飽きたねー。これっきりにしてほしいねー。バカ勇者にコントロールされる姫様たちって……。ないね。それはないね。神様は認めたくないなー。それってハーレムじゃん」


 「ほーら、お水だよー。バシャ」


 「冷たいやないの。こいつめ♡ バシャ」


 「やりおったの。それっ♡ バシャ」


 「キャッ、キャッ♡ キャッ、キャッ♡」


 「こいつらーーー。どうしてくれよう。リア充を加速させているね。神様をおちょくっているよね。腹立つねー。これは困ったねー。神様、ここでしょんぼりと待ってるしかないの? ねぇ、ねぇ、それ地獄じゃね? 最悪だよね」


 「あっ、大波だ」


 「キャーーーーーーー、うちのビキニどこ? どこいった?」


 「うわっ、うわっ、ウサギのおねーさん。胸、胸、見えてますよ」


 「うん? そうかのー。まあ、減るもんじゃなし、いいじゃろ♡」


 「ババア。見せつけおって……。なんか腹立つなー。なら、うちかて、もうええわ♡」


 「いやいやいや。ここね、湖。湖だから。ビックウェーブが起きるような場所じゃないからさー。勝手に大波を起して、海のテンプレまで、やらないでくれないかな? どうせビカムのスキルだろうけどね。あきれるよね」


 「でも、あそこにテントウ虫がいるよ」


 「キャーーーーーーー! 何、見てんの、変態! ドラゴンよ、行け」


 「うん? キャッ! この……、変態め! ファイヤーアロー」


 「キャーーって、神様がギャーーーーだよ。何してんの、あんたら? 自分でやっておいて、ドラゴンとか魔法とか使わないでほしいよね。って、怖いよ、逃げるよ、もう神様、ここにはいられないね。先に行くから。痛ててて」


 「じゃ、ま、そういうことで。さようならー」


 「「キャッキャッ♡ ウフフ♡」」


 「はぁ、はぁ、危なかったぁ。あーー、腹立つねー。ムカつくねー。これは、もう、神様は先に王様のところに行くよ。とんでもないのが来るって、先に王様と打ち合わせしておいたほうがいいね。うんうん。って、誰も聞いてないか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る