第21話 ドラゴン襲来

 「はぁ、はぁ。怖かったねー。ようやくここまで逃げて来たねー。危なかったよねー。大変なことになるところだった。って ビカム君がいないよ。あちゃーーーー、捕まってるよ、吸血姫に! 600歳のお年寄りに」


 「かみさまー。バイバーイ」


 「アホだねー。分かってないねー。そんなに人間とバイバイしたいのかねー。本当に困ったねー。手を振って、ほこらに入ろうとしてるよ。棺桶行だね。もう、仕方がないか。って、なんか来た。とんでもないのが飛んで来たよ」


 「ちょっち、あんたら! うちは犬耳姫や。尋常に勝負しぃや!」


 「えーーーーー。ここで犬耳姫?? しかもドラゴンをティムしてるよ。勝負しろとか言ってるよ。誰に言ってんのか知らないけど? なんなの? 犬耳姫、囚われてないじゃん。元気いっぱいじゃん。もうまいったよ」


 「えっ、どこどこ、犬耳姫! あっ、わーい、わーい」


 「あーーーー、バカ勇者。さっきまで、吸血姫と棺桶に入りかけてたのに、犬耳姫の登場で、テンション上がって、やる気を出してるよ。吸血姫は、吸血姫で、づら取って、本性、出したよ。両方とも怖いねー」


 「バカ犬が、また、来おったか。仕方がない、もう一度、キャンキャン泣かせてやろう」


 「うるさいっ! 行かず後家の大年増が。笑わせるな。って、ギャハハハハ、あんまおもろいんで、うちが笑ろうてもうたわ。隣に変なのいてるし。傑作やな! あんたの600年の人生。って、人やなかったわ」


 「おーい、おーい。犬耳姫ー。ビカムだよー」


 「なんか、凄いシーンだねー。もう、何がどうなってるんだろうね? とりあえず、神様としては、バカ勇者を回収するしかないよね。あーー、あと犬耳姫もかー。そうだねー。忘れてたねー。気が重いねー。あっ! 戦い出した」


 「だめだよ、ふたりとも戦っちゃ、って、あんた誰? ウサ耳お姉さんは?」


 「うん? それは妾に言っておるのか? 今は、それどころではないので、ビカム殿は、そこで少し待っていてくれ。出でよ眷属。犬ころめ、これでもくらえ! ファイヤーアロー!」


 「ウサ耳お姉さんじゃないけど……。まっ、いっか」


 「バカ勇者、ふたりが魔法やら、眷属やら、ドラゴンやらで戦っているのに、間に入って、まだ、犬耳姫に手を振ってるよ。あそこまでバカだったのかねー。さすがに、これは救えないかもね。もう、だめかもね。神様近寄りたくないし」


 「なんや、なんや、そこのミジンコみたいんは。邪魔や、どかんかい! ババアと一緒に、いてこますぞ」


 「犬耳姫、怒ってるよ。怒られて当然だけど、怖いねー。あっ、魔法がビカム君に直撃。ひゃー、ドラゴンに殴らた。あちゃー、眷属たちに……。犬耳姫の剣で……。悲惨だねー。巻き込まれてるねー。まあ、いい気味だけどね」


 「な、仲良くって、言ってんのに!」


 「あ、まずい。まずいよ。これは。犬耳姫と吸血姫が大ピンチだよ。あいつ何するか分かんないよ。もうすぐキレるね。子ども並なキレ方するから、周辺一帯を吹っ飛ばすよ。まずいね。バカだけど、めっちゃ強いからなー」


 「うっ! ……えっ」


 「ぐっ! ……えっ」


 「あっ、止まった。ふたりとも何かに気が付いたみたいだね。戦うの止めて、ぶるぶる震えながら、青ざめているよ。ドラゴンも降りてきて目を瞑って知らんぷりしてるよ。これまた、凄いシーンだねー。どうすんの? これ?」


 「い、犬耳姫よ。今日もいい運動したのう。ハハハハハハ」


 「そ、そやね。今日もいい天気やねー。アハハハハハハハ」


 「なんか、ふたりして、ごまかしはじめたよ。それでいいの? 本当にいいの? さっきまでは、罵り合ってたのに? ……あっ、しまったぁー。これはこれでまずいねー。ビカム・ハーレム直行便ですか? 乗りません。そんなの」


 「おふたりとも、お怪我は?」


 「ポワン、妾は運動してただけじゃからのー、大丈夫じゃ」


 「ポワン、うちも、なんともないで」


 「あちゃーーー、最悪の展開だよ。神様、どうすればいいんだろ? 誰か教えてください。ここからどうすんの? ねぇ? ねぇ? どうすればいいの? 早く教えてくれないと間に合わなくなるよ」


 「それはよかった。では、共にお城に参りましょう」


 「ポワン、そうじゃな。では、参ろうかの」


 「ポワン、ほんなら、行こか」


 「ち、ちよ、ちょっと待ったーーーー! 吸血姫! あんた、お城には用ないでしょ! 犬耳姫! ドラゴンどうすんの? こんなの連れて、街には入れないよ。それにビカム! ちゃんと分かってやってんのか! このアホ」


 「てんとう虫が、騒いでるね」


 「ポワン、そうじゃのー、蝙蝠にでも食わせるかのー」


 「ポワン、アハハハ、てんとう虫は騒がんよ。それゴミ虫やろ?」


 「やっぱりなー。やっぱりなー。やっぱりなー。こうなるよなー。あーーぁ。このあとの展開も、お決まりのコースだね。もう、いやだ、いやだ。本当にこれで、王様のところに戻るの? ねぇ? ねぇ? 誰か答えて?」


 「じゃ、ま、そういうことで、行こうね。ふたりとも」


 「お前が答えるなぁー! お前だけはいやだ。あーぁ、また、ふたりに腕掴まれて、すたすた行っちゃったよ。さいてーだよ。ぐうたら男のハーレム転生記になっちゃうよ? そんなのいらないでしょ? って、誰も聞いてないか」

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