第19話 封印の村

 「あーーぁ。来ちゃったねー。神様が封印したのに、また、来ちゃったよ。なんでかなー。でもNPCの村は行っても仕方ないもんね。犬耳姫かー。あまり気が進まないけど、物語を進めないとね。それにしてもビカム君は元気そうだね」


 「えーーー。神様が働くんでしょ?」


 「えーーー、って、神様が、えーーーだよ。あのさー、この前さー、王様の前で元気に言ったのは誰かなー。誰だろうねー。『必ずやお救いいたします』とか言ったのは、誰だったっけ?」


 「ビカムの子か! あいつ言ってたね」


 「そうだねー。そう言うと思ったよ。でも、あいつはいないなー。存在しないなー。セントラルワールドにも、元の世界にもいないんだなー、これが。残念だねー。悲しいねー。可哀想だねー」


 「神様、調子悪そうだね」


 「悪いよ! 最悪だよ! ぜーーーんぶ、君のせいだよ。もうさ、にっこり笑って、そんなこと言わないでくれない? やめてくれない? 空気呼んでくれない? の、紅づくし、鮭づくしだよ。なんちってだよ」


 「じゃ、ま、そういうことで」


 「あっ、スルーしたね。何も言わずにスルーですか? そうですか? さらっと次、行けばいいって思ったんでしょ? ねぇ、ねぇ、ねぇ? ビカム君の得意技! ピンチになったらスルーって、良くないよ。ダメだよ」


 「えっ! 犬耳姫、スケスケなの?」


 「そそそ、犬耳姫はスケスケネグリジェで登場するんだよねー。って、そんな訳あるかー! シースルーじゃないから。ぜんぜん別のものだから。そういうことは、神様、一言も言ってないから。もうね、全然、物語進まないじゃん」


 「そっかー。楽しみだね」


 「はい、はい、もういい。もう、その反応もいつも通り! 計画通り! 表通り! なんちゃってだよ。そうしないと神様がもたないね。それじゃ、気が進まないけど、あの、とんでも村長さんのとこ、行ってみようね」


 「せ、せ、聖母様。お助け、お助けください!」


 「あれっ? なんか向うから来たね。ピンチみたいだね。何があったんだろうね。……まあ、どうせくだらないことだろうけどね。もう、聖母とか言ってる時点で失格だしね。ビカム君に任せるよ」


 「えーー、やだよ。スケスケ犬耳姫じゃないじゃん」


 「いったん、それは、よいしょっと横に置いておこうね。手順ってものがあるからさ。いい? いいから、まずは何があったか、聞こうね。それからだからね」


 「湖の中央にある、英雄のほこらに……」


 「おおお。なんか、これは瓢箪から駒かな? ちょっと気になるねー。ちゃんと聞こうねー。勇者の出番かなー。いいねー。こういうのはいいよね。男の子ならワクワクだよね! どう? どう? 英雄のほこら。響きがいいよね」


 「ほっこり、ぽかぽか」


 「おいおいおいおいおい。何、何、何、言ってんの? ビカム君、さっきまでは、カブトムシくらいのやる気はあったのに、もうミジンコに戻ってるよ。何なのそれ? そりゃ、ほっこり、ぽかぽかは気持ちいいけどさー。違うからね」


 「うっとり、スケスケ」


 「それも違う、それも全然違うから! アホなの? 本当に何を言っちゃってくれてるのかなー。全然話が進まないし、村長さん固まったままだよ。って、村長さんの出番これだけー。意味が分からないんだけど? あ、再起動した」


 「英雄のほこらに、ドラゴンが住み着いて、村人が皆、凍ってしまっているんです。助けてください!!」


 「あらーーー。これは、本当に大変みたいだね。ドラゴン登場だよ。ブリザードドラゴンだよ。寒いねー。恐ろしいねー。でも、勇者対ドラゴン。胸躍るねー。暖かくしていかないとね。やられちゃうから注意だよ」


 「ち、違います。ファイヤードラゴンです」


 「あっちっち」


 「へ? へ? 何それ? 落ち着こうね、マイケル君。そのドラゴン、火を吐くの?」


 「いえ。ブリザードで凍らされます」


 「ぶるぶるっ」


 「火は吐かない?」


 「はい。ファイヤードラゴンです」


 「あっちっち。ぶるぶるぶるっ」


 「あーーーーー。そう、そうね。あんたネーミングセンスないし、頭のネジ飛んでたわ。そういえば、忘れてた。うんうん。それとビカム! 何、遊んで会話の邪魔してくれてんだ。あっちっちとかぶるぶる、じゃないでしょ!」


 「神様、頑張って、あっちっちだね。おーーーーぶるぶるっ」


 「まーた、訳の分からないことやってるね。最悪だよ、この村。近づくんじゃなかったよ。まあ、でもドラゴン退治は君の出番だからね。あっちっちでも、なんでもして来てください。お願いします、だよ」


 「暖まったし、お休みなさーい」


 「あーーーぁ。また、それ、それですか? それはお約束だけど、ここでは違うなー。今度はドラゴン退治だからね。なーーんか、嫌な予感しかしなけどさ。仕方がないから、ほら、行くよ!」

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