第16話 勇者帰還
「戻ってきたねー。本当は、来たくなかったけど、お姫様を王様のところに連れて行かないとね。仕方ないね。まあ、まだお昼だし、大丈夫だよね。うんうん。じゃ、王様のところに行こうね」
「うーーん。ビカム様ぁ♡ 早く赤ちゃん……。むにゃむにゃ」
「お姫様、まだ寝てるねー。すやすやと、いい夢、じゃなかった悪夢を見てるねー。神様にとっては最悪だよねー。そんでさー、起きたら、起きたで、また、ふたりで何をはじめるか、分かったもんじゃないからね」
「あっ、ビカム様♡ こんなところでまた、って、何? その女!」
「え、え。ギルドの猫耳お姉さん来ちゃったよ。仕事してるんじゃないの? まずいんじゃない? どうすんの、これ? 知らないよ」
「おお、愛しい猫耳娘よ。会いたかったぞ」
「ポワン♡ 嬉しいっ」
「ビカム君、お姫様背負いながら、また変なスイッチ入れてるよ。あっ、お姫様が目覚めたよ。ビカム君の背中から降りて、お姉さんの方へ行ったよ。これは大変だねー。一大事だねー。どうなるんだろうねー」
「ビカム様、なんなんですの。この女狐は」
「あなたこそ、ビカム様のなんなの、この泥棒猫が」
「なっ! 泥棒猫ぉー!」
「あちゃーーー、修羅場だよ! お姫様とお姉さん睨み合ってるよ。こんなぐうたらバカ、取り合ってるよ。なんでだろうねー。おかしいねー。まあ、でも、いい気味だね。楽しくなるよー。そんで、もちろん神様は、知らないからね」
「じゃ、ま、そういうことで!」
「こらこらー。当事者、逃げない! 速攻で逃げようとしたねー。存在消そうとしているねー。さすがにそんなスキルはないからねー。って、ダメダメ角笛吹いても何も解決しないからね。あたふたしてる君を見るのは楽しいねー」
「じゃ、寝てていいかなー」
「ダーメ。それも認められませーん。君は、ふたりに頬をはたかれるなり、思いきり蹴られるなり、罵られるなり、包丁で刺されるなりしないとダメだなー。それがお約束だから。うんうん。さあ、楽しい時間のはじまりだよー」
「あんたが……。なら、さっさとこの国から出ていきなさい。ほら餞別よ。チャリーン!」
「うっぐぅーーー。そんなものいりません。ビカム様はわたしのものです」
「なっ、何を言ってますの? この第一王女のわたくしを差し置いて。このおっぱいオバケ!」
「なにが、第一王女よ。そんなの関係ないわ。この高飛車くそビッチ!」
「「うぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐっ」」
「…………ふーー。仕方がないですわね。それなら、あなたは側室にしてあげましょう」
「……まあ、それなら……、仕方がないですね。でも側室1号ですよ」
「あれれれっ。なんか修羅場だったのに、あっさりと、とんでもない方にまとまっていっちゃったよ。まずいねー。これはまずいねー。ビカム・ハーレム計画の第一歩になってしまうよ。そんなのいらないから! 不要だからね」
「ハーレムだね。次はどうしようかなー」
「なに、そのやったー! みたいな態度は。側室2号は犬耳娘とかいう態度は? みんなで一緒にお風呂だね、みたいな態度は? 違うでしょ。そういうのはダメだなーとか、まだ心の準備がとか言う場面でしょ。分かってないなー」
「お風呂! いいね!」
「あちゃーーーー、神様、気が動転してたよ。なんかハーレム計画押し進めちゃってるよ。何してんだろうね。失敗しちゃったよ。もう、どうすればいいのかなー。そうだ! 王様だ。王様ならなんとかしてくれるね」
「そうだね。お風呂とベッドを用意してくれるね」
「違うからね。そんな物分りのいいお父さんいないから。絶対にいないからね。それは違うなー。ドカーンと怒られるねー。カミナリ落とされるねー。残念だねー。娘を取られるお父さん怖いからねー」
「下郎が! 何を言っておる」
「そうですわ、この屑が。そんなことしませんわ」
「えっ、えっ、えーーーーーーーーーーー。怖い、怖いよ。このコンビ! なんか最強のタッグだよ。神様、ノックアウトだよ。こんなダメ勇者のために、ふたりで攻めないでほしいよね。なんで、こんなんなちゃったんだろうねー」
「では、ビカム様。まずは、皆で、そこのホテルへ?」
「そうですわね。屑は放っておいて、冒険の汗を流しましょう?」
「やったね! 僕、働き者だ」
「それ違うなー。意味が分からないなー。どういう働きするのかなー。それ違うからね! 両手に花でキャッキャッ、ウフフってのは、働いたことにならないからね。それ、堕落、堕落しただけだからね!」
「「だまらっしゃい」」
「じゃ、ま、そういうことで! バイビー」
「あーーぁ。まただよ。元気よくバイビーとか言って、行っちゃったよ。なんなんだろうね、この展開。飽きたよね。さすがに、もういいよね。神様、ここで待つしかないの? ほんと、もう、サイテーーーーだね。って、誰も聞いてないか」
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