第7話 クラスチェンジ
4:50
時間通りに目が醒める。
先ず大丈夫だろうが、姉さんが無事か確認しよう。
【立花 桜】
徳島県
昨日と変化無く、無事な様で安堵する。
さて今日は、
・レベル10到達し、1次職に昇格
・運数値を10以上
を目標にやっていこう。出来れば500G貯めて早めに馬も用意したい所だが。
準備を終え、西門へ。門前には既に柳さんが待機していた。まだ寝ているのだろうか、近くには他に人は居らず、反対の東門にも僅か数人居る程度だ。
「お早うごさいます柳さん」
「立花殿、お早うごさいます。今日はどちらへ赴きますか?」
「廃墟の方へ行きましょう。ゴブリンとは違うモンスターが居るかもしれないので」
「承知致しました」
「それと…、確認なんですが、お嬢さんはまだ無事でしたか?」
「えぇ。幸いに無事で御座いました。立花殿の姉君は?」
「それは本当に良かった。姉さんも無事でしたよ」
「開門!」「かいもーん!」
5時になったのか東の空が徐々に白み、門番が東西の門を開く。
開け放たれた門のすぐ側にプレイヤーの物だったと思われる4人分の剣と盾が散らばっている。
流石にこれらを回収するのは多少気が引けたが、売れば多少の金になる。
それに、今は少しでも早く馬が欲しいので、やられた彼等の装備も有効活用させてもらおう。
武具の前で合掌し、それに触れると回収コマンドが出現。
選択されたアイテムは左手の装置に吸い込まれて行った。
5:08
─────
廃墟
到着すると、そこは石造りの教会であったろうものが、かろうじで形を残していた。
といっても外壁のみで、内部は野晒し状態。地面には雑草が生い茂っていた。何も収穫は無いかと思ったが、よく見るとその中に拳程の大きさの白い玉があちこちに転がっている。
手に取り確認すると、心なしか中で何か動いた様な気がした。しかし、この卵らしき物は回収出来るアイテムだと思うが、残念ながら今の俺には出来ない。
「カー」「カー」「クァー」
気が付くといつの間にか、全長1m近くあるカラスが10羽程、周囲に展開し威嚇してくる。
「なにかと思えば只の大きなカラスか。数もあまり多くないし、これは楽に狩れそうだ」
「油断大敵ですよ立花殿。数が少ない以上、増援の事も頭に入れなければ」
「成る程、それもそうですね。ではそれが来る前に片付けますか」
此方が武器を構えると、交戦の意思ありと判断したのかカラス達が一斉に襲いかかって来た。
「【アナライズ】」
手始めに1番近いカラスを調べる。
カラスA
lv.3
─────
HP:160/160
MP:8/8
攻撃:8
防御:5
魔攻:3
魔防:5
器用:25
敏捷:32
運:0
─────
鳥類だけあって、スピード特化型なのか。俺より速いが攻防力が低い分、まだ楽そうだ。
「クァア!」
「よっと」
正面から突っ込んでくる奴に対し、剣を斬り上げて迎撃する。
が、射程ギリギリの所で旋回し回避され、別のカラスが前後左右から次々と仕掛けてくる。
当然俺も迎撃するのだが、悉く剣は空を切る。
被ダメ自体は一桁台だが、こうも連続で来られると鬱陶しいわ。
かといって剣は一向に当たる気配がないし、どうするか?
…!スキルを使うか。攻撃が当たらない以上それしかないだろう。それに折角覚えたんだし、今のうちに威力の確認もしときたいしな。
「クァア!」
再び突っ込んできた奴に剣で迎撃するふりをして【ウィンド】を使用。
「グェアッ!?」
旋回しようとした際に見せた腹へ風の塊が見事に命中し、2,3m程吹っ飛び地面へ落ちる。
HPゲージはざっと見、3割削れた。
まあ、今は十分に使えるスキルだろう。
追撃はさせまいと邪魔をしに来たカラスを片っ端から【ウィンド】で飛ばし、最初に飛ばした奴に近づき、また飛ばれない様その胴体を踏みつけて固定し、そのまま剣を突き刺し止めを刺す。
良し。攻略法は理解した。次は俺の番だぞカラス共!
後は、周りにいた5匹も同じ要領で倒す。
HPは50程減らされたか。もっと余裕だと思っていたが、予想以上に手間取った。
柳さんの方を確認すると、いつの間にか数が増えていたカラス共を、剣だけで次々と打ち落としていた。
どうにも敵の軌道を先読みして攻撃を加えている様に見える。一見、簡単そうにしているが、同じ事をやれといわれても俺には絶対に出来ないだろう。
HPも殆ど減ってないし、相変わらずの強さだ。
そうしている内に最後の1匹が霧散し戦闘は終了。
[経験値を150獲得]
[150G獲得]
[レベルが7に上がりました]
[レベルが8に上がりました]
[HP:+2MP:+2攻撃:+2防御:+2魔攻:+2魔防:+2器用:+2敏捷:+2運:+0]
[能力Pを20獲得]
[スキルPを6獲得]
「柳さん凄い無双してましたね」
「ほっほっ。増援が来た時は少々肝を冷やしましたが、単調な攻めで助かりました。
それより、敵がいない内に振り分けをしてしまいましょうぞ」
「了解です。それと、武器屋の情報で、運の数値上げると良いらしいので、今回は運が10以上になるように振り分けませんか?」
「ふむ…。承知致しました」
【立花 操人】
【一般人】lv.8/10
経験値:285/358
所持G: 259
─────
HP: 298/370
MP: 50/80
攻撃:25【内装備品+2】
防御:35【+4】
魔攻:12
魔防:17
器用:23
敏捷:25
運:10
─────
[目利きを取得可能になりました]
これがそうか。効果は…。
─────
【目利き】
[パッシブ]
[フィールド上に《?》アイコンが出現し、それを調べる事で様々なアイテムを取得する事が出来る]
必要スキルP:10
─────
残りスキルP:18
10!?…10Pも使うのか!
必須スキルというの分かって、明らかに足元見てるよな。…まあ、取得するけどさ。
【目利き】を取得すると、フィールド上の広範囲に《?》アイコンが出現した。
「おお…結構な数ありますね。教会跡周辺だけで、10箇所ほど…か。さて、何が拾えるか」
すぐ側の《?》を調べると草や石といった使い道が無さそうな物や、先のカラス共の卵を入手。
これで新しい装備が出来るとは思えないが…。
あらかた周辺の採取可能地点を調べ終える。一回調べた所は《?》マークが薄くなり、再び採取可能になるまでの時間が表示される仕組みの様だ。
「うーん、結局回収出来たのは草と石、卵の3種類だけ…。もうちょっと違うのも採れると思ったが」
「再出現時間は最短10分でしたが、所々30分や1時間があったので、恐らくその場所では違う物も採取可能かと」
「今回は互いに運が無かったと…いや、ここでも運の数値が影響するんですかね。
……完全に運任せならともかく、一定以上の数値が無いと出現テーブルにすら乗らない可能性も考えた方が良いか」
「想像していた以上に運の数値も重要、という事ですな」
「そういう事ですね。しかし、現状あまり運だけに数値を割く訳にもいかず…、まあ、それは後で考えるとして此処等も採取し尽くし、人もちらほら見えるので場所移して採取続行しますか」
「承知致しました」
この後約2時間、森林地帯と教会跡を往復し、他の人と争いにならぬ様距離をとりつつ、時折現れるモンスターを狩りながら採取を続けた。
成果は…石23個、草22個、卵6個か。
もう少し数を確保出来ると思っていたので、少し溜め息が出る。
やはり人が増えると採れる回数が減るか。2日目朝でこれだと、少なくともこの拠点周辺では時間が経つ程効率が悪くなる一方だろう。
こうなっては、少しばかり村から遠出するのも手の1つかも知れない。
「おや…」
襲ってきたゴブリンを倒し柳さんが呟く
「遂にレベル10に到達しました。これで漸く1次職になれます」
「おめでとうございます。職決めや装備を整えに一旦戻りますか?」
「私が到達したという事は、もうすぐ立花殿もレベル10になるではないですか。戻るのはそれからに致しましょう」
「ありがとうございます。ではちゃっちゃと済ませますか」
その後、人が増えてきた影響か、モンスターを探すのに時間がかかり、20分かけて漸くレベルを上げる。
そして、クラスチェンジとこれからの事を話し合う為に村へ戻る事にした。
8:07
群馬県:太田村 113
「さて、素材の納品や装備の新調などやる事は色々あるけど、なにより先ずは1次職へのクラスチェンジをすませましょう!
柳さんは何にするんですか?」
やっと殆どステータスが上昇しない一般人から変われるかと思うと、我ながら興奮が押さえきれない。
「折角刀適正あるので、私は剣聖を目指し足軽に致します。立花殿はどうなされるおつもりで?」
「打点が高いアタッカー方面ですか!
俺はこれがゲームだった頃は人形士でプレイしてたんで、戦い方をまだ多少は理解出来る盗賊を選びます」
「ほう。人形兵器狙いですか」
「はい。あれを取得すれば一気に戦力上昇するので。
……それまでは嫌がらせ戦法がメインになりますが。
……それと、俺としてはですね、この拠点出て以降も目指す方角は同じなので、柳さんと行動を共にしたいんですが、構いませんか?」
「勿論です。立花殿が居てくだされば心強い。
では陣形を組むとしたら、私が前衛でダメージを与え、立花殿は敵の気を散らすのが主な役割になりますな」
「陣形ですか?今のままでも良い気がするんですが…?」
正直、今の適当なやり方でも十分やれてる気もするし。
「ゴブリンやカラス相手ならともかく、これから先強大なモンスターや、もしかしたら他のプレイヤーと戦わなければならない時が来るかも知れないのですぞ。
なれば今のうちに我々も手を打ち、連携も高めておく方が良いかと」
珍しくたしなめる様な語気で言う。
「それは確かにそうですね。…しかし、モンスターは良いとしても他の人と命のやり取りは極力したくないですね。
まあ、向こうから仕掛けて来た場合は別ですが。
さて、じゃあ1次職にして装備の新調もしますか。連携はその後、フィールドで試すとしますか」
コクリ、と柳さんは首を縦に降り応え装置に手を伸ばす
ステータス項目にある一般人の所を押すとメッセージが出現。
[おめでとうございます!
レベル10になりましたので、1次職への
[以下の
※一度選んでしまうと変更出来ません!
・足軽 ・弓兵 ・騎士 ・戦士 ・魔法使い ・僧侶 ・盗賊]
迷う事なく盗賊を選択。
[盗賊:非力で防御力もないが、索敵スキル等を覚える]
[盗賊に
当然Yesを選択。
[盗賊になりました!
装備不可の武器及び防具は外されました]
良し。これで一般人と比べ多少は楽が出来そうだ。
今後はステ振りも人形士を見据えた形にしていかないとな。
さて、肝心の武器だが盗賊の場合、短剣か弓の内1種のみ登録可能か。
……これは嫌がらせ戦法に重点を置く為に、短剣でいこう!
熟練度Dで状態異常スキル覚えた筈だし。
[レベル10及び短剣熟練度Eになりましたので、投げナイフを取得可能になりました]
─────
【投げナイフ】
[アクティブ:攻撃]
[手の中に投擲用のナイフを生成する。
何かしらの対象当たるか投げて一定の距離が経過した場合消滅する【威力:極小】]
消費MP:1
必要スキルP:1
─────
残りスキルP:14
やっと初めての武器スキルか。
これで遠距離?いや中距離か?…とにかく、離れた所からでも攻撃力依存の攻撃が出来る様になる。
当然取得する。
次は素材の納品及び装備の新調だな!
「柳さん、スキル確認とか終わりました?」
「ええ。今しがた」
「じゃあ武器屋に行って装備の新調しますか!」
そのまま二人で武器屋へ足を運ぶ。
武器屋
採ってきた素材をカウンターの上に並べ納品する。
[装備品が追加されました]
良し!これで新しい装備を購入出来る。
それに他の人も新調出来るだろうと思った矢先、店主から思いもよらぬ事を告げられる。
どうにも、追加される装備は素材を納品した者しか購入出来ず、また、街以上の拠点においては納品した場合、同じ装備でも格安で購入可能になるらしい。
全ての拠点で追加は助かるが、一人一人で品揃えも変わるとは。
レア度の高い素材を納品出来るかどうかで、装備と財政面の両面でかなり差が出て来そうだ。
さて、追加された装備はどのような物があるのだろうか?
色々あるが装備出来るのだけ調べておこう。
─────
【石のダガー】 50G
攻撃:+5
必要熟練度:短剣E
【石の盾】 35G
防御:+3
【布の頭巾】 10G
防御:+1
【草の冠】 30G
防御:+1,魔攻:+1,魔防:+1
【殻の帽子】 65G
防御:+2,魔防:+2,器用:+2
【
防御:+1
【布のマント】 50G
装飾品 防御:+2,魔防:+2
─────
武器と盾、それと頭装備にマントは欲しいところ。
頭装備だがマントと合わせる方向で考えると見た目では頭巾なのだが、性能では弱いんだよな。
それに比べて殻の帽子とかいう、殻を頭に乗せただけの見た目完全ネタ装備だろうに、何故か数値良いし。
どちらにすべきか迷うが、頭巾にしよう。流石に殻を被って歩き回るのは抵抗がある。
全部纏めて買うと145Gか。結構な出費になるが、今後の戦闘を楽にする為には仕方ない。
店主にGを渡し新しい装備へ変える。
因みに、頭巾は口元まで隠れる覆面頭巾、マントは前後すっぽりと隠せるタイプの様だ。
ついでに余った素材を売り、石13G,草12G,卵15Gの合計40G獲得した。
武器屋を出て
「Gが減ったのでまた馬が遠退きましたね。まあ、素材拾いまくれば直ぐに貯まりそうですが」
「ほっほっ、そうですな。
ですが、この周辺には他の人も沢山居りましたので、少し人の居ない場所まで遠出をしなければ思う様には貯まらぬでしょうな」
遠出か。出現モンスターが変わるかどうか分からないが、もし変わると確実に勝てるか分からなくなる恐れが、……柳さんが居れば大体の状況は大丈夫だとは思うが。
……どうせ何れは行くことになるし、行くだけ行ってみるか!
「では少し遠出をしますか!」
少しばかり気を引き締め、再び村の外へ向かう。
【立花 操人】
【盗賊】lv.10/30
経験値:515/733
所持G: 384
熟練度:短剣E
─────
HP: 241/400
MP: 50/100
攻撃:30【内装備品+5】
防御:45【+9】
魔攻:14
魔防:22【+2】
器用:30
敏捷:33
運:12
─────
残りスキルP:13
スキル
[アクティブ]
─────
【アナライズ】【ヒール】【ウィンド】【投げナイフ】
─────
[パッシブ]
─────
【目利き】
─────
装備
─────
頭:布の頭巾[防御+1]
右手:石のダガー[攻撃+5]
左手:石の盾[防御+3]
腕:装備なし
上半身:布の服[防御+1]
下半身:布のズボン[防御+1]
足:靴[防御+1]
装飾品:布のマント[防御+2,魔防2]
─────
【柳 十三】
【足軽】lv.10/30
経験値:562/733
所持G: 330
熟練度:刀E
─────
HP:186/340
MP:46/65
攻撃:66【内装備品+8】
防御:37【+14】
魔攻:10
魔防:13【+3】
器用:30
敏捷:41
運:11
─────
残りスキルP:13
スキル
[アクティブ]
─────
【アナライズ】【ヒール】【アース】【ため斬り】
─────
[パッシブ]
─────
【刀の達人】【両手持ち:A】【カウンター:C】【受け流し:C】【目利き】
─────
装備
─────
頭:装備なし
右手:石刀[攻撃+8]
左手:装備なし
腕:装備なし
上半身:石の鎧[防御+8]
下半身:袴[防御+3,魔防+1]
足:靴[防御+1]
装飾品:布のマント[防御+2,魔防+2]
─────
─────
【ため斬り:攻撃】
[通常攻撃の1.2倍の威力の攻撃をする
消費MP:2]
─────
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