第8話 2日目終了

西門を出、西へ真っ直ぐ続く街道をちらほら現れるモンスターを相手に、投げナイフの練習相手にしつつ狩りながら約1時間半。

距離にして5km程歩くと先程まで基本的に草原だった景色が一変し、同時にだる様な暑さが訪れる。


砂、砂、砂。

街道の両脇は見渡す限り砂しか無く、所々砂丘が姿を現す。

又、そのフィールドは街道と色が良く似ていて一度道を外れると地図無しには戻る事はまず叶わないであろう。



「砂漠……ですね」

入った途端この暑さとは…。直ぐ後ろの草原地帯は大分涼しかったのに。

…しかし暑い。ゲームの中だからか、汗が出ても数秒で粒子化するだけ拭う手間が省けまだ楽ではあるが。

とはいえ、日本のあのジメジメとした湿気があるのと比べると、ほんの少しではあるがこの砂漠の方がマシに感じてしまう。


「そう……ですな」


頭装備が無い分、柳さんの方が辛そうに見える。


「……ところで、群馬に砂漠ってありましたっけ?」

「いえ。確か無かった筈ですが」

「ですよねー」

だとすれば、基本的にフィールドは現実とは別の地形がランダムに生成されていると考えた方が良いか?……いや、まだそう断定するのは早いか。もう少し違うフィールドの種類を見付けてから、また改めて考えてみるか。

しかし、こう暑くては声を出すのも億劫になる。

何かしらの対策が出来れば良いのだが、今のところ頭装備を着ける位しか無いのが辛い。


「取り敢えず、他の人も居ないようだし、素材回収しつつモンスター狩りますか」

「承知致しました」


いざ、街道から砂漠地帯へ足を踏み入れると途端に少し足が沈む。

普通に歩くと靴底辺り迄。少し踏み込むとかかとの中程まで持っていかれる。


こう砂に足を取られては、とてもではないが戦闘で機動力を活かした立ち回りは出来そうにないな。


機動力殺されたら俺、スキルで援護位しか出来なく無いか?

少なくとも側面や背後に回り込んで敵の気を散らす事は出来そうにないし…。


それにしても、見渡しても全く《?》マークが無い。

他の人が採った後だったとしても、薄くマークが出る筈だし。


……もしや、砂漠地帯は殆ど採取出来る場所が無いのではないか?

もしそうだとしたら、此処は暑いだけで外れじゃないか!


実際に《?》マークを発見出来ない以上、一旦草原フィールドまで退くべきだろう。


ザッ…ザッ…ザッ…


「柳さん一旦此「立花殿!後ろ!」


「…!」

振り返ろうとするが、それより早く背中に弾力のある衝撃を受け砂へダイブした。


急いで身を起こしそちらを見据えると、そこには草原フィールドでは見たことが無いモンスターがいた。


幼児並みの体長で体毛はねずみ色、ウサギの様な長い耳を持ち、細いながらも脚力のありそうな足、そして何より黒いサングラスと赤いボクシンググローブかわ特徴的なネズミが軽やかなステップを踏みながら此方の出方を窺っていた。


先ずは【アナライズ】で相手のステータスを確認する。


ファイターマウス

lv.8

─────

HP:268/268

MP:20/20

攻撃:39【内スキル補正+6】

防御:18【+2】

魔攻:0

魔防:2

器用:36【+6】

敏捷:44【+6】

運:0

─────


スキル

─────

[アクティブ]

【フック】【アッパー】【飛び蹴り】【回し蹴り】

─────

[パッシブ]

【カウンター:E】【砂上戦闘:D】【声援の力】【暗闇無効】

─────


草原や森林地帯のモンスターと比べてスキルも持って、一気に強くなってんな。

魔防が低いからそこを突けばまだ楽に倒せそうだが。


しかし、【声援の力】は少し邪魔だな。…送っているのは目の前のネズミの後方十数m離れた位置にいるあいつらか。

腹巻きと首にタオルを掛けている奴と小肥りで左手に抱えているポップコーンを貪っている。何れも先の奴と同程度の体長と体毛を持つ二匹のネズミだ。


戦闘能力は余り無さそうだが、一応調べておこう。


セコンドマウス

lv.5

─────

HP:153/153

MP:30/30

攻撃:16

防御:11

魔攻:3

魔防:5

器用:18

敏捷:26

運:0

─────


スキル

─────

[アクティブ]

【声援】【タオル投げ】

─────


観客マウス

lv.5

─────

HP:111/111

MP:14/14

攻撃:0

防御:11

魔攻:0

魔防:8

器用:14

敏捷:80

運:0

─────


スキル

─────

[アクティブ]

【声援】【野次】【ブーイング】

─────

[パッシブ]

【経験値ボーナス】【逃げ足:E】

─────


ボーナス持ちが出てくるとは運が良い。

今の内に、他の人と差をつける為にもこいつはなんとしても仕留めておきたい所。

しかし、そうなるとこのグラサンネズミが邪魔になる。



「柳さん、あのグラサンの体勢崩すんで、後はお任せしても良いですか?」

「承知致しました。ではあれは極力逃がさない様にお願いしますよ」


右手に【投げナイフ】を生成し

「勿論、善処します。…では、仕掛けます!」


因みに投げナイフの柄は木製で小さな鍔付き、刃は鉄製のダガータイプで、長さは10cm程である。



さて、木や壁みたいな動かない相手なら狙った所に当てれたが、肝心のモンスターには今まで掠りもしなかったんだよな……。


グラサンあいつにも当然避けられるんだろうし。

ならば、当てに行くのでは無く相手を動かす様に投げ、動いた所に【ウィンド】を当てる。


基本的に【投げナイフ】はこういう使い方になるだろう。

スキルを連発していく事になるので、現状MPが少ないのが難点だが、人形士を目指す以上これから重点的に上げる事になるし。



いざ【投げナイフ】を1投するが、当然の様に掻い潜られ、そのまま踏み込み突っ込んで来ようとする所に【ウィンド】を命中させる。


結果、前屈みだった体勢は上体を反らし足が少し宙に浮く程度に崩す事に成功した。与えたダメージは魔攻が低い以上、お察しレベルだが。


しかし体長1m程とはいえ、下半身に重心を置いていた奴を少しとはいえ浮かせるまでの衝撃があるか。……これは色々と使い道がありそうなスキルだ。


すかさず、柳さんが【アース】を浮いた足元へ使い敵を仰向けにひっくり返らせると、その隙に抜刀し距離を詰める。




「後は頼みます!」


グラサンあれを任せると、素早く敵に対し背を向け、右手を腹に上向きで当てその場で思い切り跳躍。(砂の上なので草原と比べ殆んど跳べないが)

【ウィンド】を俺自身に対し縦回転しない様に右手を調整しながら連発。そのまま自傷ダメージを受けながらも宙を飛び一気に観客マウスとの距離を詰める。


普通に追いかけても敏捷値の差と【逃げ足】のスキルで逃走されるのは目に見えてるからな。

グラサンの体を浮かせる程の衝撃があるなら、俺の体もいけると思ってやったが、まさか本当に上手くいくとは。


そのまま宙にある上体を右に捻り、予想外の行動だったのか、その場を動かずにポカンと口が開けっ放しになっている観客マウスに【ウィンド】を数回叩き込み倒す事に無事成功。したが、


「よっし!…ってやぶ」


飛んだ勢いそのまま、いつの間にか直ぐ目の前まで迫っていた砂丘に頭から突っ込んだ。



……ちょっと抜けないんだが、この感じ、上半身はすっぽりと入っているか。足は足で地面に着かないしどうしようか。……はぁ、もうMP殆どないから使いたく無いんだが。


両手を砂にとられながらもなんとか体に触れさせ、再び俺自身に【ウィンド】を使用。

結果、仰向けに倒れながらも無事砂丘から抜け出せた。

まぁ、上半身は衣服の中まで砂まみれになってしまったが。



無事標的は倒せたが酷い目にあった。


「ほっほっ、大丈夫ですか?立花殿」

声の方へ視線をやると既に2匹のネズミを倒していた柳さんが此方へ向かっていた。


「大丈夫ですよ。MPはほぼ無くなってしまいましたが」



[経験値を1124獲得]

※砂漠迄の道中のモンスター含む

[62G獲得]

[レベルが11に上がりました]

[レベルが12に上がりました]

[レベルが13に上がりました]

[HP+:6MP+:9攻撃:+6防御:+6魔攻:+3魔防:+6器用:+12敏捷:+12運:+3]

[能力Pを30獲得]

[スキルPを9獲得]



「ですので、出来ればこれ以上の戦闘は避けたいのですが」

「そうですな。では、レベルも十分上昇させる事が出来ましたので、後は採取をしながら村に戻ると致しましょうか」

「そうしましょう。出来れば500Gは貯めて今日中に馬を確保しときたいですね」


その後P振り分けを終わらせ、砂漠地帯を後にした。


道中、柳さんがウサギに角が生えたモンスター、角ウサギからドロップ品を手に入れる。また、道中【アナライズ】で調べた所、他の人の中には既にPKを行った者も確認出来た。

MPが殆ど無い今の状況は危機感を抱いたが、レベル差があった為かそいつらが仕掛けてくる事はなかった。





14:24

群馬県:太田村 189


道具屋前

「毎度ありー」


宿屋へ歩きながら

「いやー、採取した素材や使わない装備全部売って、何とか馬を1頭ずつ買う事が出来ましたね」

「本当にギリギリでしたな。そして、これでめでたく足を手に入れる事が叶いましたので、明日は一気に街のある前橋まで行きたい所ですな」

「前橋までですか」


地図で調べた所、行きたい拠点を選択すれば方角を示す矢印と大まかな距離が表示される。


「この距離なら馬使えば楽に到着出来そうですね。でもその場合、残りの宿代が無駄になりますが」

「その分は直ぐに回収可能な額なので、あまり気にする事でもないでしょう」


宿屋


「ではまた明日。時間は今日と同じ5時で宜しいでしょうか?」

「分かりました。お休みなさい柳さん」

部屋の前で別れ、入室。



明日にはもうこの拠点から離れるのか。

今のところは大分順調に行けてるし、今後もこの調子で行けたら良いのだが。


ベッドの上で起床時間を少し余裕を持たせ4時半に設定し、そのまま睡眠コマンドを押し眠りに就いた。




【立花 操人】

【盗賊】lv.13/30

経験値:1722/2072

所持G: 7

熟練度:短剣E

─────

HP: 202/460

MP: 5/200

攻撃:36【内装備品+5】

防御:52【+9】

魔攻:17

魔防:32【+2】

器用:56

敏捷:45

運:15

─────

残りスキルP:21


スキル

[アクティブ]

─────

【アナライズ】【ヒール】【ウィンド】【投げナイフ】

─────

[パッシブ]

─────

【目利き】

─────


装備

─────

頭:布の頭巾[防御+1]

右手:石のダガー[攻撃+5]

左手:石の盾[防御+3]

腕:装備なし

上半身:布の服[防御+1]

下半身:布のズボン[防御+1]

足:靴[防御+1]

装飾品:布のマント[防御+2,魔防2]

─────


【柳 十三】

【足軽】lv.13/30

経験値:1769/2072

所持G: 4

熟練度:刀E

─────

HP:213/500

MP:18/80

攻撃:77【内装備品+8】

防御:50【+14】

魔攻:10

魔防:20【+3】

器用:45

敏捷:57

運:14

─────

残りスキルP:21


スキル

[アクティブ]

─────

【アナライズ】【ヒール】【アース】【ため斬り】

─────

[パッシブ]

─────

【刀の達人】【両手持ち:A】【カウンター:C】【受け流し:C】【目利き】

─────

装備

─────

頭:装備なし

右手:石刀[攻撃+8]

左手:装備なし

腕:装備なし

上半身:石の鎧[防御+8]

下半身:袴[防御+3,魔防+1]

足:靴[防御+1]

装飾品:布のマント[防御+2,魔防+2]

─────






















0:00

[モンスターのレベルが上がりました]

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