第5話 新たな仲間
「――ッ!」
「ゴブッ!」「ゴーブッ!」「ゴッブ!」
しだいに声は大きくなり少し開けた場所で、声の主がゴブリン三匹と交戦しているのを見つけた。
咄嗟に近くの茂みに隠れ様子を伺う。
二匹はそれぞれ木の剣と盾を装備し、正面から攻撃。
残り一匹は撹乱が役割なのか、素手ながらプレイヤーの横や後ろに回り込んで、ちくちくと攻撃に参加していた。
プレイヤーの老人は上手く攻撃を受け流しているが、反撃する前に違うゴブリンが攻撃を仕掛けて来るので、防戦一方の様子。
現に、ヒールを使える程度のMPも無く、HPゲージも半分以下になっており、このままではやられるのも時間の問題だろう。
また剣盾持ちかよ。
始まったばかりなのに、ちょっとプレイヤーやられすぎじゃないか? あの老人もやられそうだし、それだけゴブリンどものやり口が嫌らしいってことか。
目の前でやられても気分悪いし助けるか。
程よくゴブリン達のHPも減ってるし、上手くいけば楽に経験値も横取り出来そうだ。
念のため、仕掛ける前に奴等を調べておこう。
ゴブリンA
lv.2
─────
HP:87/120
MP:5/5
攻撃:11【内装備品+2】
防御:7【+1】
魔攻:2
魔防:2
器用:5
敏捷:6
運:1
─────
ゴブリンB
lv.2
─────
HP:53/110
MP:3/3
攻撃:12【内装備品+2】
防御:5【+1】
魔攻:1
魔防:4
器用:6
敏捷:8
運:2
─────
ゴブリンC
lv.1
─────
HP:44/90
MP:2/2
攻撃:7
防御:4
魔攻:0
魔防:1
器用:3
敏捷:5
運:1
─────
やっぱ単体だと大した事ないな。今みたく群れられると少し厄介だが。
さて、能力も確認出来たことだし、俺も参戦するか。先ずは、
茂みから出ると同時に老人に対し、ヒールを使用。これでもうしばらく持つだろう。
「オオオオオッ!」
わざと声を張り上げ、ゴブリン達の意識をこっちに向けつつ距離を詰める。
「ゴブゴブッ!」「ゴッ!」
仲間から指示を受けたのか素手のゴブリンが老人から離れ飛び掛かってくる。
「ゴブッ!」
「――チッ!」
上体を反らして避けれたと思ったが、左腕に少しかすったか。
かすり傷だから無視しても良いか、ってか盾で防げば良かったな。
「邪魔だ!」
「ゴ……ブ!」
追撃しようと前屈みになりながら踏み込んできた背中に剣を振り下ろし、倒す。
「ゴブ?」
仲間の断末魔の声が聞こえたのか、老人に攻撃を加えていた一匹が俺の方へ意識を向けた。
おいおい、それは駄目だろ。
二匹がかりでなんとか老人を抑えていたのに、お前がこっち見たらもう一匹は直ぐ死ぬぞ。
「ゴフ…」
事実、ほんの数秒の隙を逃さず、老人はもう一匹の攻撃を受け流し、すかさずその首へ一撃を入れ倒し、返す刀で残った方の後頭部へ剣戟を加えた。
「ゴ…ゴブッ…?」
何が起こったのか分からない、そんな顔をしながら最後のゴブリンも倒れた。
[経験値を10獲得]
[10G獲得]
結局、成果はレベル1のゴブリンだけか。しょっぱいけど、死人が出なくて良かった。
「大丈夫ですか?御老人」
交戦の意思は無いことを示す為、剣を鞘に納め歩み寄る。
しっかし、反撃に転じてからは付け入る隙も与えず一撃で仕留めるとか、同じ一般人なのにかなり強いな。
もしここで戦う事になっても、勝てる気がしないぞ。
「いやはや、お陰様で助かりました。真に有難う御座います。私、
短く整えられた白髪に清潔感のある白い口髭、身長は俺と同じ位だろうか。
そして年下の俺にも威圧的ではなく、物腰の柔らかい対応。
柳と名乗る老人は剣を鞘に納め、右手を自身の胸に添え、此方に頭を下げながら答えた。
おぉ、ジェントルマンだ、ジェントルマン。なんか一連の動作も手慣れてる感じがするし、どこか気品さえあるように見える。きっとどこか良い家の人なんだろう。
「俺は
「確かにそうですな。そう致しましょう」
─街道道中
「じゃあ柳さんは、仕えている当主の娘さんを捜してるんですね」
「左様です。今は石川県に滞在している事しか分かりませぬが」
そういう事情か、俺と似たようなもんだな。幸い同じ方面に進むんだし、さっきの戦いぶり。出来れば一緒に行動したい。ダメ元で誘ってみるか。
「それは心配ですね。俺も姉が徳島県スタートなんで気持ちは分かります。とはいえ、お互い一人だと
「それは、私としても願ってもないお話です。まだ立花殿に救われた恩も返せておりませぬ故。私でよろしければ微力ながらお力添え致します」
良し! この人がいれば、これから先少なくともゴブリンに苦戦する事は無いだろう。
取得経験値は半分になるだろうが、独りの時より戦闘は格段に楽になるのは間違いない。
「本当ですか! ありがとうございます。これからよろしく頼みます。では早速PT申請出しますよ」
「此方こそ宜しくお願い致します。…申請承認致しました」
[PTを結成した事で、メンバーのステータスが無条件で閲覧出来る様になりました]
こういうのでもメッセージは表示されるのか!
では早速、柳さんのを見てみよう。
【
【一般人】lv.5/10
経験値:82/114
所持G: 86
─────
HP:65/220
MP:1/30
攻撃:42【内装備品+2】
防御:15【+3】
魔攻:5
魔防:5
器用:19
敏捷:30
運:1
─────
スキル
[アクティブ]
─────
【アナライズ】【ヒール】【アース】
─────
[パッシブ]
─────
【刀の達人】【両手持ち:A】【カウンター:C】【受け流し:C】
─────
残りスキルP:9
─────
【アース】
[アクティブ:魔攻]
[指定した場所の大地を少し隆起させる。【威力:極小】]
消費MP:3
─────
─────
【刀の達人】
[パッシブ]
[刀装備時、攻撃力及び改心率上昇【効果:中】]
─────
─────
【両手持ち:A】
[パッシブ]
[両手で武器を持った際、攻撃力及び命中率上昇【効果:小】]
─────
─────
【カウンター:C】
[パッシブ]
[此方にダメージを与えた敵に対して、一定時間与ダメージ量上昇【効果:中】]
─────
─────
【受け流し: C】
[パッシブ]
[敵からの近接物理攻撃の被ダメージ量をごく微量ながら減少させる。稀に無効化する]
─────
装備
─────
頭:装備なし
右手:木の剣[攻撃力+2]
左手:装備なし
腕:装備なし
上半身:布の服[防御力+1]
下半身:布のズボン[防御力+1]
足:靴[防御力+1]
装飾品:装備なし
─────
かなりの物理火力特化型。敏捷も高いし、恐らくアタッカー方面のクラスになるのだろう、頼もしい。
それより気になるのが、既に幾つものパッシブスキルを所持している事だ。
レベル5で取得出来るとは、とても考えられない。
……とすれば、もしや最初から取得している状態だったのか?
そうだとしたら、それはかなりズルいというか不公平、いや、非常に羨ましい! 俺なんにも無かったからなおさら。
だがPTを組む以上、こういう人の方が頼りになるのは間違いない。
たぶん俺の予想通りだとは思うが、一応確認しておこう。
「柳さん、パッシブスキルはどうやって取得したんですか?」
「ぱっしぶ? ……あぁ、これらは初めてステータス画面を見た時から既に取得済みでしたな。私は現実で剣術を修めましたので、恐らくですが、それが関係しているのではないかと考えております」
「成る程、やっぱそういうのが――っと、村に着きましたね。お互い中々にボロボロなので、早めに宿を確保しときますか」
「承知致しました」
─────
13:34
群馬県:太田村 405
宿屋
「すまないねぇ。今日はもう満室なんだ」
「そうですか…。失礼しました」
このやり取りももう何度目だろうか。
この宿屋も断られ、足取り重く宿屋から出ていく。
「まさか20件連続で断られるとは…。流石に予想してなかった」
まだ始まって一時間も経っていないのにこの状況。
正直、かなり速く行動している方だと思っていたのだが、全くそんな事はなかったようだ。
「他の方々も行動が早いということですな。まだ半分以上残っております故。しんどいとは思いますが、まだ音を上げる場面ではありますまい」
「そうですね。流石にそろそろ空いてる所もありますよね! ってかいい加減あってほしい!」
このままでは宿もとれずに野宿する事になるからな。それだけは回復も見込めないし勘弁だ。
重く感じる足に喝を入れ、再び宿屋街を進み始めた。
「一人当たり一晩5Gだよ。泊まっていくかい?」
……!? 幻聴か? いや、今確かに今までとは違うセリフが聞こえた。
あれから更に二十数件断られ続けやっと、やっと見つけた!
「泊まります!」
何とか今日の宿を確保出来た!
モンスター倒すより、宿屋の確保の方が難しいっておかしいだろ! もっとこう、外からでも満室かどうか一目で分かるようにしてほしいわ全く。
「毎度あり!そっちの人もかい?」
「えぇ。私も泊まります。時に女将さん、この宿屋は数日分を一度に纏めてお支払する事は可能ですか?」
「前払いになるけど可能だよ。連泊希望かい?」
成る程! 今のうちに連泊分払っておけば、明日からは今日みたいに宿屋探す必要がなくなるな!
「えぇ」
「立花殿、取り敢えず5日分で宜しいでしょうか?」
「そうですね、取り敢えずそのぐらいで」
「では女将さん、私と彼の二人、5日分お願い出来ますか?」
「はいよ!二人の5日分で50Gだね」
「ではこれで」
「毎度あり!これがあんた達の部屋の鍵だよ」
「どうもどうも」
「有難う御座います」
鍵を受け取り部屋のある二階への階段を昇る。
木製の階段で時折、キィと軋む音がする。 こんな効果音まで拘る必要があるのか俺としては疑問ではあるのだが。
因みに部屋は隣同士だ。
「それではまた後程」
「少し待ってください柳さん。すっかり忘れてたけど、今の内にフレンド登録しときましょ。これから色々と連絡をとる事になるだろうし」
「ふむ、確かにそうですな。では早速致しましょう」
「確認しました」
「私も確かに。では、改めてこれから宜しく御願い致しますぞ、立花殿」
「俺の方こそ」
固く握手を交わし、それぞれ回復すべく部屋へ入った。
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