番外編② この時間に名前はないけれど……SS[s&n]

 さくら。

 あたしは、さくら。

 友達がつけてくれた。

 友達がつけてくれた名前。

 あたしは、この名前が大好き。

 大好きな友達がつけてくれたからってのもあるけど。

 単純に、音の響きがいい。

 さくら。

 あたしは、その花を見たことがないけどさ、きっとキレイな花なんだろうな。

 ノヴァは、あたしの髪がピンク色だからって付けてくれたらしい。

 ああ――あたしは、体が倒れる。

 仰向けに。

 あたしは、大の字になって天上を眺める。

 灰色の空――コンクリート。

 ねぇ、ノヴァ。

 さくらって、この地下都市にも咲いてるのかな?


「おい、殺すのまずかったんじゃねぇか?」

    「これじゃ、売り物にならねぇよ」

      「いや、中には死体の方がいいってのもいるぜ」

       「空いた穴に挿入ってか?」


 あたしの額から、血が流れる。

 ……ノヴァ……。


 ――two years agoにねんまえ.


 あたしは、ある族に入っていた。

 最初はここ。

 あたしの最初はここ。

 それ以前は記憶にない、多分、あたしという意識が芽生える前だったんじゃないかな。

 ノヴァがそう言っていた。

 この頃は、ノヴァの欠片もない。

 あたしは、ノヴァに会っていない。


 地下都市ってのはね、六角形になっていて右から時計回りに一番街、二番街と続いて、最後に中央の七番街がドンッとあるの。あたしは、そこで生まれた。

 多分、ここで生まれた。

 で、気がついたらこの族。

 地下都市にいる人って、族ってのを組むんだね。ノヴァは、生きるためにみんなやることだよ。地下都市以前の人類史でもそうだったよと言っていた。ノヴァは物知りだ。あたしなんか、文字もロクに読めないのに。ノヴァは頭が回りすぎて、あたしとは別世界のようである。黒髪の少女、ベリーショートの……あ、まだこのときは出会っていない。語るには早すぎる。

 まずは、あたしが最初にいた族だ。

 その族は、えげつない族で、子供達を最初は温かく迎え入れる。

 その方が、あとあと洗脳しやすいらしいからだ。

 残飯さえない地下都市では子供が親なしに暮らすのは至難の業で、多分あたしはいつもお腹すかせて、たまに誰かに殴られたりして暮らしていた。よく子供狩りに会わなかったと思う。で、たまたま人が良さそうなおじいさんに拾われたんだ。

 恰幅がよくて、白いヒゲを生やしてたおじいさん。

(あとあとで、それは変装してたおじさんだったことが分かるけど)

 着てる服はあたしと同じで汚れた服だったけれど――その緑色の服は、何だかおじさん――いいや、おじいさんで。彼によく似合っていた。

 優しそうな人なんだなと、そのときは思った。

 温かいスープ。

 あたしに出された食事はそれだった。多分、あたしにとってそれは始めて見るものだったんだろう。食べ方もろくに分からないあたしは、おじいさんや他の子を真似てスプーンで飲んでみた。

 泣いた。

 気がついたら、涙がこぼれた。

 周りを見ると泣いていたのはあたしだけじゃなく、他の子達もそうだったらしい。

「心配しなくていいよ」

 おじいさんは、あたしの髪をなでてくれた。

「辛かったね。大丈夫、今日からみんな家族だからね。だから、もうひもじい思いなんてしなくていいんだよ?」

 おじいさんの優しい笑顔と声が、余計にみんなの涙腺を刺激し、号泣させた。

 でも、時間が経つとおじいさんは変わっていったんだ……。

 おじいさんが、頭をかかえて悩んでいた。

「ここで生きて行くには、どうしても戦いが必要だ……困った、族の抗争に巻き込まれそうなんだ」

 と、おじいさんは言った。

 地下都市に住む人々はどこの街でも、族ってのに入る。

 徒党を組む。

 人はみんな、一人はいやなんだって。

 ノヴァも言ってた。あたしも、おじいさんに優しくされたとき、そう思った。

 だから、おじいさんの苦しみはあたしの苦しみで、あたしにできることなら、何だって手伝うよと言った。

 あたしだけじゃなく、みんなが言った。

「……そうかい」

 このとき、おじいさんは笑顔だった。


 おじいさんに任されたのは、情報屋の仕事だった。

 ノヴァが言うには、人類が地下都市に入る前は通貨ってもんがあったんだって。

 何でもそれは、紙や石(みたいなの)で食べ物や武器と交換できるんだとか。

 あたしはそれを聞いたとき最初、うっそだー、とノヴァがからかってるんだと思ったが、違うらしい。昔は、そういうのが本当にあったんだって。何で、みんな紙や石で交換するのか分からないけれど。(そのあとにノヴァが信用がどうたらこうたら言ってたけど、よく分からない)

 ま、でも、ま、今の地下都市にはそんなのはない。

 ノヴァが言うには、楽園教などには似たようなものはあるらしいけど。(いや、それは話によると団員を騙して効率良く働かせるためのものらしいけど)

 ともかく、今の地下都市に通貨なんてものはない。

 だから、ほとんどのものは物々交換じゃないと駄目なんだ。

 ここで一番高価なものは、やはり食料。

(水はどこの水道でも大体手に入るけど、街によっては貴重らしい)

 食料の次は、機械。

 色々と分類があって、武器だったり、道具だったり、部品でもいいらしいけど、これは食料とは違って腐ることがないけれど、その機械の価値が人によって異なったりするから、あと実は高価なものだとしても当人が気付かないで相手に安く買いたたかれることもあるから、扱いが難しい。

 あれ、何だかあたし、話し方が下手だな。

 もっと、ノヴァみたく要領よくやりたいのに。

 えーと、で、三つめ。

 あたし達が物々交換として主に使うもの――それが、情報だ。

 これも、扱いは機械以上に、そして食料以上に難しい。

 情報なんて、食料より賞味期限が早い代物で、へたしたら数分後に意味がなくなることもある。その上、情報の入手法法や入手先にもよるけど、ガセネタだったりしたらもっとタチが悪い。情報を売るっていうのは、いわゆる信用で成り立っている。だってそうでしょ、嘘つきそうな人から情報を買ったって何の意味があるの。ってことで、情報は無一文からでも始められるけど、一番扱いが難しい代物だ。

 あたしは、それをおじいさんに任された。

 基本はこの七番街の巡回。

 表通り――T形脚橋に支えられて宙に浮いている道路を歩いたり。

 裏通り――その真下にある地についた道路を歩いたりだ。

 どの道も子供が歩くには注意が必要で、裏通りなんて特に危険度が高い。だけど、だからこそ裏通りでは貴重な情報が取れることが多く、治安が悪い=抗争がいつも激しい=だから、みんなが求めるネタが豊富なんだ。

 もちろん、危険は高い。

 あたしの他に、五人くらいおじいさんの族に入ったけど。

 多分、残ったのはあたし入れて二~三人じゃないかな。

 一人はひどい火傷を負って、重傷。もう一人はたくさんの男達に囲まれて、やなことをされたみたい。あたしは……あたしは……思い出したくもない。

 これもそれも、おじいさんのためだった。

 でも、おじいさんは情報がロクになかったらとても怒った。

「きみたちは、こんなこともできないのかい?」

 私を、裏切るんだねと。

 おじいさんは、あたし達を叱った。

 全身を大火傷した子にも、それを言った。数時間後、彼は死んだ。

 犯された子も同じだ。

 あたしにも言った。

 おじいさんは普段は大きな声を出さないけど、じみじみ、じみじみと小さな声で、あたし達に何故できない、何故駄目なんだ、助けるんじゃなかった、きみ達は何のために生まれてきたんだと、散々言われた。あたし達は自信をなくし、自分が悪いんだ。だからおじいさんは傷ついてるんだと思いこみ、しゅんとうなだれてしまう。

 火傷した子は死んだけど、もう一人の子は精神がまいちゃっていつも陰で吐いてた。

 あたしは彼女の背中をさすり、「大丈夫、おじいちゃんだって心配してるよ」と余計なことを言った。今思うと、後悔する。その子は、「そうかな?」と少し微笑んでいた。うれしかったのだろう。

 でも、その子は翌日死んだ。

 がんばって情報を持って来ようと、ちょっと大きめの族に張り付いて――バレちゃったんだ。

 多分、死んだと思う。いや、死んだというのはあたしの勝手な憶測だ。彼女のそれ以降の消息は全くなかったけれど、もしかしたら、生きてる可能性だってあるかもしれない。

「そんなのどうでもいいよ」

 と、おじいさんは言っていたけれど。あたしは、今でも気になる。

 どうしてるのかな。

「全くろくに使えない子供達だね。きみもそうなのかな? 違うよね? あんなゴミといっしょじゃないよね、私を悲しませないでくれ」

 おじいさんの言葉は段々と重くなっていく。

 ぎしぎし――と、胸が縛られてるみたいだ。

 おじいさんはあたしが寝ようとしたとき、突如横にあらわれて体をさわったりしてきたこともあったし、起こしてあたしに恨みつらみを語ることもあった。あとあと、ノヴァに聞くと睡眠時間を削って、周りから隔離するのって、洗脳には丁度良いんだって言ってた。

 だから、おじいさんが「使えない」と言うと死ぬほど苦しんで。

 辛くて。

 辛くて。


「そんなことないよ」


 あたしが、情報屋として裏通りを探索してたときだ。

 うつむきながら歩いていると、ノヴァに出会ったんだ。

 黒いベリーショートの髪。

 あたしと同じくらい――当時、十二か十三ぐらいの女の子。

 袖があまりすぎて、お化けのように垂れている髑髏マークの描かれたパーカーを着ていた。下は迷彩のズボン。

「アンタは、十分すごいよ?」

 まるで、あたしの心を読んだかのように彼女はあたしが当時一番欲しかった言葉を言ってくれた。

 あとでノヴァに聞くと、あたしのことをずっと観察してたんだって。

 それこそ、おじいさんにあれこれされたこともずっと。

 だから、あたしが欲しかった言葉も簡単に出たんだって。

『怒らないんだ?』

 ノヴァは意外そうな顔をしていた。

 別に、と。

 あたしは怒らなかった。

 怒る理由もないし。

 ノヴァは、それが逆につらそうだった。だから、ペチッと頬を叩いてみたけれど、痛かったのかすごい苦しそうになり、あたしの胸にしがみついた。何でだろ。


 正直言うと、あたしはノヴァに使い捨てにされるんだろうなと思っていた。

 だって、そうでしょ。

 おじいさんにショックを受けていたあたしに、何を信じろというの。

 あなたを助ける。

 その代わりに、あなたは自身の族のことを話してと彼女は言った。

 信じなかった。

 多分、あたしから情報を聞き出すと、使い捨てでポイと捨てるんだろうなと思った。

 会った瞬間から、適わないと思った。

 だって、頭良さそうだもん。

 何より、彼女には名前があった。

 地下都市では教育なんて受けられるはずもなく、文字を読めるどころか、名前さえもない人が多い。本当にそのままの意味で、名前がないのだ。だって、付ける人がいないから。ロクに、呼ぶ人もいないから。

 あたしも、その一人だった。

 おじいさんから呼ばれるときは、「きみ」もしくは「きみ達は」だ。

 あたしであって、あたしではない。

 あたしがいたとしても、それはあたし個人なんてものじゃない

 でも、ノヴァはあたしに名前をくれた。

「じゃあ、さくらね。髪の色がピンクだし」

 そして、彼女はあたしを助けてくれた。

 おじいさんが追い詰められ、ある族が迫ってきそうなときだった。

 あたしはこのまま敵の族に殺されるのか。それとも、おじいさんに殺されるのか。どっちだろうと、考えていた。

 でも、あたしはノヴァに渡された紙が気になってた。

 それには、トイレの鉄格子を外せと書いてあった。

 試しに行ってみると鉄格子は外れて、下にノヴァが待ちかまえていた。

 クッションのような――どこから持ってきたのか、ふくらんだものがあった。

「さくら!」

 あたしは、そのまま空いた窓から飛び降りた。


 ――after thatそれから.


 それ以降、あたしはノヴァと組んで情報屋をやっていく。

「危なかったよ。あともう少しでアンタ、抗争に巻き込まれるとこだった。つまらないジジイのために命散らすなんて無駄だって」

 ノヴァは賢く、それでいておじいさんのようなことはしなかった。

 むしろ、あたしを危険にさらさないように安全策を取ることが多く、あたしは彼女といるとき初めての経験ばかりで。

「ノヴァ……」

 それでいて、彼女はおじいさんのように求めた。

 いや、違う。

 方法は同じでも、核となるものは大分違う。

 おじいさんは欲であたしを求めたけど、ノヴァは違う。いや、彼女は自分も欲だよって言うかもしれないけど、あたしは違うと思う。

 だって、気がついたらあたしも彼女を求めていた。

「さくら……」

 泣き虫の子供をあやすように、同い年のあたしはノヴァの頭をなでる。

 彼女は、四番街から逃げてきたらしい。

 テンション高い街で、どうにも肌に合わなかったんだって。

 だから、逃げ出した。

 兄やその親類もいたけれど。

 全部投げ捨てて逃げたんだって。

「一時は楽園教に行こうかなって……アタシもまいってたんだよね。危なかったよ、あそこって四番街の族よりひどいとこなんだよ?」

「そうなの?」

「あそこ、人類史で使われてた通貨のようなものがあるけどさ。それ紙や鉱質じゃなくて、データ上に表示されただけの数字なんだって」

「……よく、分からない」

「ようするに、機械の中でしか表示されないってこと。楽園教でしか通用しないものだね」

「でも、どうせ楽園教の外で暮らさないんでしょ?」

「その通貨が、そうさせてるとも言えるけど……その通貨の価値ってのも毎回変動してるから、買えるものもいつも変わってるらしいよ」

 あと、と彼女は言う。

「あそこ、洗脳するにしても最初大勢を蹴落として自分のとこに適したのを取るんだ。ほら、あそこってご飯が食べられるからいつも大勢の入団希望者がいるじゃない。でも、それが全部採用されるわけじゃないの。採用したら、いくら何でも満タンだからね。あそこ、そんな大きい街でもないし。だから、あそこはふるいにかけて選別するんだ。なるべく、こちらの言うことに反抗せず従い、優秀そうなのを選ぶんだって」

「……そんなことできるの?」

「いくつかのグループに分けて、周りから隔離して、立場が上の奴が罵倒しまくれば――駄目な奴は駄目だよ。キャンセルはいつでも効くからね。辞めていっちゃう。――で、最後まで残った人を採用する。とんでもない、予想もつかないことで怒ったり、睡眠時間削ったりして、限界までやってね」

「……そこまでして、みんな人を集めたいの?」

「それが力だから」

 ノヴァは忌々しげに言った。

「一人より二人、二人より三人――数が多ければ多いほど、力は強まるんだ」

 あははっ。

 反吐が出る、と彼女は言った。

「集団なんて、クソ喰らえだ……」


 ――curret現在.


 あたしは、銃弾を額に当てられて倒れた。

「さくらっ!」ノヴァの声がする。

 ノヴァ。

 あたしを助けてくれた人。

 大好きな人。

 ノヴァ……彼女は、目を見開いてあたしを見ている。

 震える右手であたしの額を――ドクドク垂れる血。あたしは死ぬんだなと感じた。意識が薄らいでいく。

 ノヴァが何か言っている――でも、聞き取れない――脳が、もう駄目なんだと――ああ――ノヴァ――ノヴァ……ごめんね。泣かないで――ノヴァ。


 ◆


 さくらは死んだ。

 アタシは、彼女の死体を眺めながら嗚咽をもらす。

 ほとんど声にならない。

 金切り声。

「――ったく、うるせーな。情報屋のくせに生意気な」

「へっ、お前ら仲間の情報屋に裏切られたくせによ」

「しかし、こんなガキだったとはな」

「二人とも、子供狩りの族に売れたんじゃないか?」

「いいよ、こいつ。俺がこいつさわろうとしたら、噛みついてきやがったしよ」

「じゃあ、いいか」

「そうそう、死んじまえばいいよ」

 男、女、含めた――自分より年上の者達の嘲笑が響きわたる。

 アタシは、馬鹿やっちゃった。

 情報屋ってのは、いくら嫌でも徒党を組まないとやってられない。

 それは、他の族より鮮明なつながりではなく、もっと透明な――あくまで、仕事上の付き合いを考慮した族に入らないといけない。でも、アタシにはそんなに脈があるわけじゃなく、ちゃんとした族に入ることができなくて――この、有様だ。

 情報屋の一つが、アタシらを売ったんだ。

 で、いきなり寝ていたとこを襲撃された。

 慌てて逃げようとしたけど――煙幕弾もあったから、どうにかなるかと――でも捕まって、売られそうになって、さくらが反抗して――撃たれた。

 死んだ。

「……っ」

 声にならない。

 もういない。

 いないんだ。

 現実感がない。

 友達が死んだことが。

 好きな人が――死んだことが。

 ここまでリアリティがないなんて。

 なくてよかったと思うなんて――でも、アタシがこれだけ泣いても、さくらの声が聞こえないことに――段々と違和感を覚えて――この子が死んだことに、リアリティが増す。

 ああ、やめろ。

 やめてよ。

 もう、さくらに二度と会えないんだと。

 この瞬間、気付いてしまった。

「なー、売り払う前にさ。楽しね?」

「変態かよ、あんたら」

「いいじゃないかよ、せっかくの獲物なんだしさ」

「売れる程度に傷つけるなよ」

「わーてるよ」

「死んじまえ……」

 アタシは、気がついたら願っていた。

「死んでしまえ……」

 心の底から、こいつらを。

 さくらを殺したこいつらを。

 殺すことに何の罪悪感も迷いもないこいつらを。

 死ね、と。

 激しく呪った。

「――あっ?」瞬間、アタシの願いを聞き入れたかのように集団の一人、男の頭が砕けた。

 そして、後方の壁も砕く。


 みんな、「は?」という声がもれた。


 集団の一人が、慌てて砕けた壁を見る。

 死体を見る。

 どうやら、何かを投げて――いや、石のようなものを投げて、男を殺したらしい。

 女の悲鳴。男の動揺。

 慌てて逃げようとするが、次から次へと投擲が行われ、彼らは死んでいく。

「くそっ、逃げろ!「何だよ、これ!?「やあああああああああああああっ――」」」

 阿鼻叫喚、彼らは逃げようとする。

 彼らが逃げる先で、炎や電撃が舞う。

 一人の、少年が現れた。

「……っ」

 黒い短髪の少年。

 いや、顔だけなら少女のようにキレイな顔立ち。

 でも、彼が発した子供にしては低めの声は、女性ではないと証明する。

 両手には拳銃。

 見た感じだと、ベレッタの。

 彼は、至近距離で射撃した。

「死んでしまえ」

 集団の者達は、見事に額に穴を空けられる。慌てて能力を使おうとするが、それをする前に遠くで何かが投擲され――死んでいく。


「……っ」


 アタシは、一連の光景を神の奇跡のように眺めてしまっていた。

 これがアタシの記憶。

 さくらの記録。

 そして、アタシを偶然にも助けてくれた――Vの、メンバー達の記録。


 END

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