第29話
その中でも一つ、嫌な感じがする剣があった。
「これは……」
訝しげな表情をしたディアボロスに
「さすが先生、お目が高い」
実は聖剣と呼ばれる代物でーー
あの火事に紛れて、何処かへ消えていたと思っていた。
それが巡り巡ってセルディックの手に渡ったのだろう。
「マモン様の封印瓶に大人しく入ってもらいます」
ネロが小瓶の蓋を開ける。
「お、おのれ……次こそは、次こそは」
「当分、出てくるな」
ディアボロスは、セルディックに小瓶の中に詰め込まれた。
「これで、フォルテの呪いは解けるのか?」
「ディアボロスの魔力の方は遮断されましたので、フォルテの呪いは徐々に解けているでしょう。本格的な封印は、塔に戻ってから上級魔法使いで行うことになりますが」
ネロの言葉に
「次こそ、封印は厳重にしろよ。エルミナたち、目が覚めてるといいな」
いつの間にか、魔王城の東の窓から日光が差し込んでいた。
「もう、朝ですのね」
魔王城に朝日って変な感じですわね、とエレミヤ。
「……ううっ」
レオンの瞼が、微かに動いた。
「こいつ、大丈夫なのか?」
レオンの様子を診ていたアリシアは
「少し衰弱していますが、命には別条ありませんわ。どこかで、ゆっくり休める場所に移動しませんと」
「こいつが、こうなったのはオレにも原因あるしな。ネロ、フォルテまで移動できるか?」
ネロは頷くと
「空間転移なら、一回サービスにしておきますよ」
ディアボロスが封印されたことにより、フォルテは呪いから解放された。
教会と戦士ギルドは相変わらずギクシャクしているが、教会側のトップであるミリアムが行方不明になったことで多少は軟化しているようだ。
それから、数日。
フォルテ近海。
「レオン、しっかりボート漕いでよね」
天然水の瓶をカゴに入れたエルミナに言われ
「エルミナさん、あいつが新しい職についたというのは?」
レオンは、ゆっくりとボートを漕ぎ出す。
「うん、マッグーロ船で仕事してるって。近くまで来てるみたいだから、お弁当届けようと思ったの」
マッグーロとは、王都で人気の魚である。
需要が高まっており、船員の募集を強化している。
高額報酬が約束されているが、なかなかハードな仕事である。
魔王城をダンジョン化させた借金を返済するために、セルディックはマッグーロ漁船に乗り込むことになった。
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