第27話

「い、一体どこから」

動揺するディアボロスに

「影からよ」

淡々と答えるミリアム。

「まさか、勇者から……」

「あの子は、弱くなってしまったわ。ねえ、左手くれない」

銀の鎖が、ディアボロスの左手に強く巻きつく。

「無理矢理取るつもりか。我が取り憑いている人間の体を傷つけることになるが」

「……ワタシにとっては、些細なことよ」

「聖女というより、悪党だな」

二人が睨みあっていると、ガラガラと音が響いた。

まるで魔王城が組み変わるような音。

「これは」

ミリアムが後方に飛び退くと同時、足元から巨大な壁が出現。

ディアボロスと分断される。


それぞれ別の部屋に閉じ込められた、ミリアムとディアボロスが周囲の状況を探る。

『あーテステス、マイクテスト中』

どこからともなく、セルディックの声が響いた。

「アナタ、何をしたの?」

「我が魔王城にくだらない細工を……」

同時に問い詰められ

『まことに勝手ながら、魔王城をダンジョン化した。脱出するには、ゴールに設置されている宝箱を開ける必要があります』

それでは頑張ってください、と通信が切れた。


ダンジョン化した魔王城を歩き回っているミリアムとディアボロスを見て

「み、妙な光景ですわ……」

「蟻の育成キット見ている気分だな」

モニターを見ながら解説席に座るアリシアとセルディック。


「おい、ネロ。母上を壁でこっち側に追い詰められるか?」

「……下は、ちょうど崖の方ですが」

魔王城は魔界(シェオール)へ通じる崖際に建てられている。

セルディックの考えを読んだネロは

「越後屋、そちも悪よのう」

「いえいえ、お代官様ほどではありません」


「おかしい、どんどん壁際に追い詰められているような」

影を使って移動してみても、ダンジョンが拡大しているのか同じ場所を行ったり来たりしている感覚に、ミリアムは困惑していた。

「とりあえず、下の階に抜けて」

影を使い、下の階に移動した時だったーー

そこに会ったのは、真っ暗な闇が口を開けた大穴。

「シェオール!?」

さまよい混んだ物を、ことごとく飲み込んでいく。


「マモン様には話を通しておきました。聖女様とはいえ、魔界で力を振るうには限度があるでしょう。反省したころに、回収してくれるでしょう」

ネロの言葉に

「意外と考えているのですわね」

「あれでも、世話になった人だからな。さて、問題はこっちだが」

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