第26話

「……とっくに、認めてるけど」

小さく呟いたセルディックに

「なにか言いまして?」

反対してもついて行きますわ、とアリシアは頬を膨らませる。

「分かったよ」

セルディックはネロに視線を向け

「……お前はどうする?」

「いやぁ、諦めて普通に暮らすとか言い出したら見捨てようと思ってましたが……さすが、セルディックさんは予想を裏切らない」

「お前が、セルディックさんて」

すげぇ違和感ある、とセルディックは眉を寄せる。

「見ていて飽きませんからね。もう少し、付き合ってもいいかなと」


「ケロ」

ぴょこん、と変えるが跳ねる。

「まあ、このカエル……」

顔面に張り付かれたことを思い出したアリシアは

「やっぱり、苦手ですわ」

「セルディックさん、このカエルはベルゼブル様の力の一部ですか?」

ネロに聞かれて

「眼鏡を掛けてる人間の本体がベルゼブル……つまりは、眼鏡らしい」

「微妙に意味が分かりにくいですが、研究所の魔法陣を逆流させることで再契約は可能かと思います」

「本当か!?」

「はい。ですが、アリシア姫からいただいたお金を、使い切ってしまうことになりますが」

「……それでもいい。下準備がないよりはマシだ」


魔法陣の逆流を使い、ベルゼブルの力の一部であるカエルと再契約。

「セルディックさん、調子はどうですか?」

ネロに聞かれて

「やっぱり、影移動は無理だな。それに、使える武器だけど」

セルディックが影から取り出したのは宝箱。

「ミミックですわよね?」

どうやって使いますの、とアリシアに問われる。

「そりゃ宝箱を取りたくなすシチュエーションを用意するしかない。魔王状ダンジョン化とかな」

ネロは目を丸くすると

「正気ですか。かなりの額のお金が必要になりますよ」

「金があれば不可能じゃないだろ。オレの通帳と……」

セルディックはアリシアに視線を向け

「必ず金を返す。できれば、融通を頼みたい」

「それは構いませんけど、条件がありますわ」


魔王城


「ふはははっ、やはり女と酒はいい」

玉座に座るディアボロスに

「あのー」

「わたしたち、時間なので。そろそろ帰ります」

踵を返した華やかな服を着た美女たち。

「さっき来たばかりだろ」

「延長には、追加料金が必要になります」

「……」

ディアボロスは、財布の中身を確認する。

「う、あ……うん。またお願いするよ」

魔王城から美女たちが出て行くのを見て

「なんとかして、金を貯める必要がある。いや、魔王なんだから近くの村を魔物に襲わせれば……」

ウゴウゴと、足元のスライムが動く。

「ルーナとヘカテーが?」

コクコク、とスライムが頷いた。


「まさか、あの女が」

それと同時に、ディアボロスの体に銀色の鎖が巻きつく。


「次はアナタの番だけど」


ミリアムの持つからくり人形が、不敵な笑みを浮かべて呟いた。

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