第25話

「セルディック、アナタ勇者辞めたいってリリアに言っていたでしょう。ちょうどいい機会だし、好きにしたら?」

ミリアムの言葉に

「しかし、母上が復活した魔王を倒すようにと……それに、あれは人間の体に取り付いています。できれば、怪我をさせたくありません」

「友達だから?」

「それは……」

戸惑っているセルディックの頬に、ミリアムはそっと手で触れた。

「アナタは、教会を出てから弱くなったわ。ワタシが指導してあげたのに」

そして、ため息をつくと

「ワタシとアナタのお爺様が、知り合いだというのは本当よ」


ディアボロスが取り憑いた人間が正気だった頃に、診察をしていた患者。事故で死んだ息子夫婦の子供、セルディックを引き取り成長を楽しみにしていた。


だが、ミリアムとディアボロスの計画に反対。

全ての遺産とベルゼブルはセルディックへと引き継がれた。


「あとは、ワタシに全て任せて。アナタは、好きにしなさい」

ミリアムは踵を返すと、自らの影へと沈んでいく。


「……あの能力は」

ネロの言葉に

「ベルゼブルの能力だ」

ミリアムが使いこなしているのを見て、セルディックは唇を噛み締めた。


先ほどとは変わり、静まり返った研究所。


「……」


「……」


無言のセルディックとネロを交互に見て


(気まずい……)

アリシアは身をすくめる。


「……どうするんですか。本当に無職になってしまいましたよ」

ネロの言葉に

「うるせぇよ。お前こそ、これ以上付き合う必要ないだろ」

「確かに、そうですね」

そっけないネロの言い方に

「なにもそんな言い方……あなた方は、友人ですわよね?」

セルディックとネロは互いに横目で見て

「オレとへっぽこが?」

「まさか、はははは」

「……この、旅はここで終わりですの?」

アリシアは表情を翳らせる。

「はぁ」

セルディックはため息をつくと

「オレは、ずっと勇者やめたいと考えてたよ。なんたって、オレにはなにもなかったし……旅に出れば何か見つかると思っていた」

その結果がこれだ、と肩をすくめる。

「だからって、ここでは終われない。こうなったら、母上も魔王もどっちも叩く。はっきり言って、どっちにも共感できないし」

ここからはだだのセルディックとして魔王城に向かう、とセルディックは続ける。

「勇者、いえセルディック」

アリシアはセルディックに視線を向け

「わたくし、最後まであなたの旅に付き合いますわ」

「……アリシア」

「まだ、認めてもらっていませんわ」

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