第22話
「ルーナ」
「はい、姉様」
双子は手を繋ぐと
「私たちが契約している悪魔は」
「サタンです」
ルーナとヘカーテは斧を手にすると
「ここで」
「潰れてください」
セルディックへと振り下ろした。
右の通路を進んだネロとアリシアが目にしたのは、子供一人を寝かせるにはちょうどいい祭壇のような装置。
「な、なんですのこれ……」
床にびっしりと書かれた文字に 、アリシアは眉を寄せた。
「これは……」
ネロは懐から書物を取り出し
「間違いありません。これは、悪魔を呼び出すための魔法陣です」
祭壇には、かすかに血がこびりついている。
それを見たアリシアは肩を振るわせ
「なら、ここで悪魔の召喚を?」
「……ひょっとしたら、孤児院に集められていた子供たちは」
ネロは顎に手をあてると
「悪魔の血を引き継ぐ、子孫なのかもしれません」
「なら、勇者も」
「大昔の話ですが、かつて地上に出て来た悪魔の一部は人間と結婚したと言われています。いわゆる人間には真似の出来ない、奇跡の力を持つ人間のことです」
そういった力を持つ人間は、信仰されるか拒絶されるかの二択。
「奇跡の力……まるで、聖女様のようですわね」
アリシアの言葉に
「その考えは、結構合っていますよ」
ドゴオオオオツ
「な、なんですの!?」
「向こうからです。勇者さんに、何かあったのかもしれません」
♦︎♦︎♦︎
「ぐっ……」
とっさに腰の剣を抜いたセルディックだが
「往生際が」
「悪いです」
女の子とは思えない力で、二人が持った斧に力が加わる。
「ふざけるな。防がないと死ぬ」
「姉様、持っと力を」
「そうね。ヘカーテ」
(この馬鹿力な双子、まだ上がるっていうのか……)
眉を顰めたセルディックに
「にゃー」
呼びかけるように、檻の中のベルゼブルが鳴いた。
床に居た何かが飛び跳ねる。
「ひっ」
姉の引きつった声に
「姉様?」
ヘカーテは視線を向ける。
ルーナの顔には、両手と両足を広げたカエルが張り付いていた。
「い、いやあああああっ」
「姉様、落ち着いて」
「ぬめぬめして、いやぁ」
「は、離れない」
双子の気が逸れている間に
「ひょっとして、あっち方が本体だったりしてな」
セルディックは斧を弾き返す。
「……にゃー」
眼鏡を掛けている人間の本体が眼鏡みたいな言い方をするな、と言いたそうに檻の中のベルゼブルは鳴いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます