第19話
「にゃー、にゃー」
剣の鞘に刻まれている文字が気になるらしく、ベルゼブルが足元にじゃれついてくる。
「えーと……」
鞘に刻まれていた文字は、アルフレッド。
「母上から聞いたことあるけど、お祖父さんの名前と同じだ」
孤児院に居た頃、何気なく聞いたことがある。
他のみんなが、家族の話をしてたのが、きっかけだったろうか。
「うちも、悪魔憑きの家だって……」
「わたしたち、何もしてないのに」
「聖女様は、神様だよ」
この孤児院に来た子供たちは、だいたい同じ理由で連れて来られた。
「母上は、オレの家のこと知ってる?」
「……アルフレッド・ハルナイム。アナタのお祖父様とワタシは、古い知り合いだった」
妙な力を使うと、村ではよくない噂が広がっていた。
その力を恐れた人々は、屋敷に火を放った。
「ワタシが助けられたのは、アナタだけだったわ」
セルディックは、その時にのことを思いだして
「ひょっとして、お祖父さんの剣なのか?」
「ナァ」
何かを語りたそうなベルゼブルに
「お祖父さんの知り合いなら、ベルゼブルってかなり年寄り……」
いや、悪魔だから寿命はないのか、と続ける。
「にゃー」
ベルゼブルの頭の上に乗っているカエルが、セルディックの顔面に飛んで来た。
「遅かったですわね」
焼きたてのパンを食べているアリシアに
「男は、武器にこだわるもんだ。つーか、そのパンどうした?」
セルディックが聞くと
「ネロさんに、お金を渡して買ってもらいましたわ。なんでも一番高いパンだと言ってましたわ」
わたくしの高貴さが彼には分かるのです、とアリシアが言った。
「勇者さんと、ベルゼブル様には天然水です」
「にゃー」
瓶に入れた天然水を小皿に注いでもらい、ベルゼブルが嬉しそうに飲んでいる。
「……お前が、ここまで気が効くなんてな」
「いやー、思わぬ臨時収入がありまして」
ネロの視線の先のパン屋。
本日の激安パンーー確か、アリシアが食べていた。
「お姫様に、ふっかけたのか?」
「現実の厳しさを教えました。やはり、メロンパンはいいものです」
ちゃっかり、自分は少し高いメロンパンを食べている。
セルディックは肩を竦め
「食事が済んだら、ナーストレンドに出発だ」
魔王城・王座の間
「ふむ、久々の城は落ち着くな」
祭壇の上の玉座に、ディアボロスが腰を下ろす。
「ディアボロス様」
「面白い情報が入っています」
ルーナとヘカテーから、セルディックたちの情報を聞き
「面白い。お前たち、遊んでくるか?」
双子は同時に、コクンと頷く。
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