第18話
ネロから説明を聞いたアリシアは
「ごめんなさい。わたくしのせいですわね……」
肩を落とす。
「そんな顔するなよ。単なるオレの修行不足だ」
「……にゃー」
自慢のコレクションを眺めることの出来ないベルゼブルは元気がない。
「能力は、制限されてるでしょう。武器庫は使えない。影移動でしたっけ、あれは、ベルゼブル様の力を応用して武器庫を他人の影に繋げているはずです」
ネロの言葉に
「へっぽこのくせによく見てるな。持ってこれたのは、ナイフだけだ。さすがに、これ一本だと厳しいから出発前に武器屋に寄って行くけど」
セルディックは肩を竦める。
「こんな状態だ。冒険素人の姫を守ってる暇はない」
「……いいえ、わたくしはついていきますわ」
それでも諦めないアリシアに
「人の話、聞いてたか?」
セルディックは呆れ顔。
「宴会の席で、勇者がわたくしのことをゴリラと罵ったことには腹が立ちましたわ。最初は復讐するつもりででも、それ以前に……」
頬を赤く染めて視線を逸らしたアリシアを見て
「便所か?」
「違いますわよ! わたくしは、認めてもらいたいの」
「オレに?」
「ほ、他に誰かいまして」
アリシアは顔が真っ赤だ。
「にゃー」
「そうですねぇ」
何やら通じ合っているベルゼブルとネロに
「何だよ?」
「ここまで、言ってくれているんですから連れて行ってもいいのではと」
「お前な……」
金目当てだろ、と言いかけてセルディックはやめた。
「にゃー」
仕方ないから面倒みてやる、と言いたげなベルゼブルに
「今は、普通の猫とあまり変わらないだろ」
セルディックは、深いため息をつく。
「ついて来れなかったら、置いて行くからな」
「これでも、足には自身がありますわ」
改めてよろしくお願いしますわ、とアリシアが言った。
武器屋
「これなんか、おすすめだ」
武器屋のオッサンに進められた剣を手に取り
「重いな」
セルディックが言った。
「これも、結構な業物で……」
「にゃー」
隅っこに追いやられている剣前で、ベルゼブルが鳴いた。
「これか?」
数多くの武器を集めているだけあり、その鑑定は確かなものだ。
「あー、そこのは使えない奴ばかりだ。あんたの持ってるのは、鞘から剣が抜け……」
「へ?」
あっさり抜いたセルディックに
「どんな手品使った?」
オッサンは目を丸くする。
「安物なんだろ。じゃあ、これで会計よろしく」
アルバイトで貯めたお金で支払う。
「くっ……」
苦い顔をしていたオッサンをみて
(これも、業物だろうな)
いい買い物をした、とセルディックは頷いた。
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