第17話

マモンは強欲のため、複数の魔法使いに同じ契約を強いている。

ネロは金食い虫と皮肉ってはいるが、与えられる魔法の力はかなりのものだ。

「勇者さんは、かつてミリアム様が作られた孤児院で育ったと聞いています」

何か思い出せることはありませんか、とネロに聞かれ

「……何かって言われてもな」

元気のないベルゼブルを膝の上乗せ、セルディックは過去の記憶を探る。


森で囲まれた赤レンガの小さい孤児院だった。

いつから居たかは覚えてないがーー同じ年頃の子供がたくさんいた。

そして、数ヶ月たった頃。

「なあ、人数減ってないか?」

「昨日、お医者さん来てたよ」

「みんな元気だったよ。具合なんて、悪そうに見えなかったけど」

小さいながらも、子供たちは不振に思っていた。

(どうせ、その内に帰ってくるだろ)

セルディックも、そう考えていた。

「儀式は、失敗」

「あの子たち、帰ってこないよ」

そう言っていたのは、あの双子たちだった。

ルーナとヘカーテ。

血の繋がりはないものの、双子はセルディックを兄と呼んでいた。

「……お兄様は、忘れたの?」

「ナーストレンドで」

思い出そうとするとノイズが混じる。


セルディックは額を抑えながら

「そうだ、ナーストレンド」

そこに行けば何かわかるかもしれない、と続ける。

「ナーストレンドですか……」

ネロはテーブルの上に地図を広げて

「魔王城への通り道でもありますし、寄って行きましょうか」


翌日。

「アリシア、城へ帰れ」

セルディックに言われ

「ど、どうしてですの。魔王が復活したというなら……」

「これは、お姫様の遊びじゃない」

「そんなことは、分かっていますわ」

だからこそ協力したいというアリシアに

「アリシア姫、勇者さんは貴方のことが心配なんですよ」

ネロの言葉に

「違うっての。また、魔王に連れて行かれても面倒だからな」

「家庭教師から、体術を習っていますわ。それに、札もたくさん持って来ましたのよ」

アリシアの鞄の中には、大量の札が入れられている。

「遺跡で、使えなかっただろ」

セルディックに言われ

「コツは掴みましたわ。ええ、次は問題ありません」

自信たっぷりに、アリシアが言った。

「はぁ……」

深いため息をついたセルディックに

「それに、いざという時は勇者がわたくしを守って……」

アリシアの視線は、自然とセルディックの足元で遊んでいる黒猫に向けられる。

「それ、貴方のペットですの?」

前は連れていませんでしたわよね、とアリシアに聞かれ

「アリシア姫、これには深い事情がありまして」

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