第15話

「あの中央の宝箱がそうですわ」

台座の上に、いかにも開けてくださいと置かれた宝箱。

「ここは、レディーファーストだ。アリシアが先に開けてくれ」

「何を言っていますの。ここまで、わたくし一人ではこれませんでしたわ」

お礼として先に開けてくださいとませ、と言ったアリシアに

「ぐぐぐぐ……」

セルディックは苦虫を噛み潰した表情。

「いやー、上手いですね彼女。どうやっても、勇者さんに開けさせるつもりですよ」

人ごとのようなネロの言葉に

「爆発物とか、ヤバイもの入ってるんじゃないのか?」

「そんなことをしたら、アリシア姫も道連れになってしまいますね」

「もう、何をしていますの」

不機嫌なアリシアの声。

「勇者さん、逝ってらっしゃい」

「おい、へっぽこ魔法使い。字が違うぞ」


♦︎♦︎♦︎


セルディックは、精巧な装飾がされた宝箱に手をかける。

右手に隠し持った短剣を握りしめるとーー

「さあ、出てこい」

宝箱に入っていた『何か』の巨大な口が開いた。

暗転。それからのことは、よく覚えていない。

「勇者さん」

「勇、ではなく……セルディックさん、しっかりなさい」

耳元で声が聞こえてた。

「あれ?」

セルディックは薄っすらと目を開ける。

「どこか変わったところはありませんか?」

ネロに聞かれ

「体が、軽くなったような気がする」

「そうですか……」

何か含みのある言い方が気になったが

「アリシア、最初からオレを抹殺するために仕込んでいたのか」

「え、え?」

何のことですの、と視線を逸らすと

「わたくしは、ただのアリシアであってアリシア姫ではありませんわ」

「アリシア姫、もう正体バレバレです」

「こんな回りくどいやり方しやがって」

ネロとセルディックに視線を向けられ

「ふ、ふふふふ……」

アリシアは不気味に笑い出す。

「これは、もう愛ですわね。ここまでイメチェンしたわたくしに、すぐに気づくなんて」

「いや、尻を触るまで分からなかったぞ……」

「勇者がそこまで、わたくしのことを思っていたなんて。も、もし反省しているのでしたら、許してあげないこともありませんわ」

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