第14話

「クガカカカ……」

剣を持ったアンデットたちが、中央の帽子を被ったアンデットに従って動く。

「やはり、統率がとれているな」

「僕が、周囲のアンデット焼き払います」

ネロの言葉に

「わかった、中央のはオレがやる」

巨大な火柱がアンデットを焼き払うと同時

「うおおおおっ」

セルディックが中央のアンデットを剣で斬りつける。

「わ、わたくしだって」

火の魔法の力が封じ込まれた札を持ったアリシアに

「バカ、勝手に動くな」

「え?」

カチリ、とアリシアの足元の床がへこむ。

「きゃああああつ」

天井に逆さまの状態で宙吊り状態になったアリシアを見て

「お前、本当に盗賊か?」

素人にしか見えないんだが、と溜息をついた。

「そ、そんなことより、早く助けてくださいませ」

セルディックは影から黒いナイフを取り出し、アリシアを宙に吊っているロープを切り離す。

そして、落ちてきたアリシアをお姫様抱っこ。

「……この感触」

どこかで似たようなことがあったような、と悩むセルディックに

「い、いつまで、触っているつもりですの」

「なあ、お前……」

顔を逸らしたアリシアに

「尻がでかい」

「もう、知りませんわ」

その様子を見ていたネロは肩を竦めると

「また、デリカシーのないことを……以前、アリシア姫にも同じことを言ってませんでしたか?」

「ああ、そういえば……」

魔王城で、アリシア姫を救出した時ーー

「勇者、きっと助けに来てくれるって信じてましたわ」

「胸も尻もデカくて合格ラインだっていうのに……なんで、顔だけ、顔だけ」

ゴリラなんだ、とセルディックは嘆いた。


「そんなこともあったな」

「勇者さん、思ったんですけど……」

ネロは小声で

「アリシアさんて、アリシア姫なのではありませんか?」

「はぁ?」

遺跡の地図を広げているアリシアを横目に

「あのブサイクが、ここ数ヶ月で変わるわけないだろ」

整形でもしたのかよ、と続けたセルディックに

「相手は、一国の姫ですよ。整形ぐらい……」

「まさか……」

だが、妙に既視感がある。

「だとしたら、部下も連れないで何をするつもりだ?」

「宴会での勇者さんのゴリラ発言を恨んで、この遺跡で僕たちを抹殺するつもりではないでしょうか」

「……」

「……」

しばらくの沈黙。

「今ので、四階層を突破しましたわ。次が、いよいよ最下層ですわね」

「お、おう」

「そうですね」

「二人とも、顔色が悪いですわよ?」

「酸欠でしょうか、勇者さん」

「こんな密閉空間に居たら、誰だって酸欠だよネロくん。外の空気を吸いに、一度外へ出ようじゃないか」

「あははは、勇者さん。キャラがブレてますよぉ」

「ここまで来て、何を言ってますの」

アリシアは腰に手を当てると

「それに、最下層の転送装置でなければ外へは出れませんわ」

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