第13話

「にゃー」

頭にカエルを乗せた、黒猫が鳴いた。

四方の壁には、様々な武器がコレクションのように並べられている。

セルディックは頭そ掻くと

「こっちに、招かれるのも久しぶりだな」

「にゃー」

ついて来い、と促す黒猫の後を追う。

そこには新たなコレクションを待ち受けるような空間ーー

何かを求めるような黒猫の瞳に

「コレクションを増やしたいのか。ベルゼブルのご機嫌は、とっておかないと」

「にゃー」

その通り、と言わんばかりに頷く黒猫。

「明日、遺跡で何か見つけてくる。それまで、我慢してくれ」


♦︎♦︎♦︎


「勇者さん、そろそろ起きてください」

セルディックが目を開けると、宿屋の白い天井が見えた。

「もう、朝か」

大きなあくびをするのを見て

「寝不足ですか?」

「久しぶりに、向こうに招かれた」

「ベルゼブル様ですか。あの方は、武器のコレクションが好きですからね」

「新しいコレクションを増やしたいそうだ」

ネロは横目を向け

「そんな予感していたから、アリシアさんの手伝いをしようと素直に言ったんですね」

おかしいと思ったんですよね、と肩を竦める。

「あいつ、機嫌損ねると武器庫貸してくれねぇし。その点だと、マモンの方が融通が聞くんじゃね」

「とんだ金食い虫ですが」

「あの金貨で、懐が潤っただろ」

しっかり働け、とセルディックは言った。


「では、さっそく遺跡に向けて出発ですわ」

元気よく気合を入れたアリシアに

「おー」

「パチパチパチ」

やる気の感じられないセルディックとネロ。

「貴方たち、もっと気合を入れるべきですわ」

「遺跡は逃げないって」

それとも本気で欲しいものがあるのか、とセルディックに聞かれ

「あ、ありますわ。最深部に、宝が眠っていると噂で聞きましたわ」

頬を赤らめるアリシアを見て

「なんだか、アリシアさんの顔が赤いような」

ネロの言葉に

「太陽の屈折具合だろ」


巨石を積み上げて作られた逆三角形の建物。

地下へと続く階段が続いている。

「ここが、その遺跡ですわ」

ネロは古びた壁に触れ

「これは、アンデットが出そうですね」

彼らは古い場所が好きなんですよ、と続ける。

「おまけに、魔王が不完全ながらも復活していますからね」

「魔王? 魔王なら勇者が倒したはずですわ」

アリシアはメイド長の話を思い出し

「復活したという噂もありますが、どうせデマなのでしょう?」

「実は……」

ネロから事情を説明され

「そ、そうでしたの。その、エルミナさんというのは……」

「大切だよ。だから、みんな助けたい」

セルディックの言葉に

「……」

アリシアは表情を翳らせた。

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