第12話
「お二人は、腕が立つとお見受けいたしましたわ」
実は頼みたいことがありますの、と続けた少女に
「オレたち、急いでいるんだ」
興味なさそうなセルディック。
「勇者さん、女性にはもう少し優しく」
ネロの言葉に
「なら、お前が聞いてやれ」
「仕方ありませんね」
右手を出したネロに
「握手かしら?」
少女は首を傾げる。
「何言ってるんですか、お金ですよ。お金」
地獄の沙汰も金次第って知ってるでしょう、と続ける。
少女は顔を引きつらせながら
「わ、わかりましたわ……」
ここで逃げられるわけにはいかない。
アリシアが町の北東に位置する遺跡の話を聞いたのは二日前のことだった。
「兄貴、これからは真面目に働いて親孝行するよ」
「ど、どうした急に……やっぱり、あの宝箱に」
「何を言ってるいるんだい。僕は、昔からこんな感じさ」
キラリ、とぽっちゃり系の少年の歯が輝く。
「弟がおかしくなってしまった」
頭を抱える細身の男を見て
「この先の遺跡で、何かありましたの?」
アリシアが声をかけた。
「ああ、旅の方……実は」
実家に戻って来ては両親から強引に金を奪っていく、ろくでもない弟が遺跡の最深部の宝箱を開けてから真面目になってしまったと男は語った。
「それは、興味深いですわ」
大量の金貨が入った袋をネロに渡し
(その遺跡で、勇者の性格を矯正してやりますわ。ついでに、この魔法使いも)
「見てください、勇者さん。この人、太っ腹ですよ」
「また、余計な仕事を……」
セルディックは肩を竦め
「で、絶壁さん」
「わ、わたくしの名前はアリシアですわ」
「アリシア?」
(しまった、思わず本名を)
口元を押さえるアリシアを見て
「まあ、王都じゃ珍しくもないしな」
「そうですね。アリシア姫ブーム、ありましたねぇ」
こぞって同じ名前をつける方がいましたね、と頷くネロ。
「そ、そうですわ。わたくしの母は、ミーハーで同じ名前をつけたのですわ」
「それで、オレたちに何を頼みたいんだ?」
「北東の遺跡を攻略したいのですが、わたくし一人ではとても……」
「分かった。なら、明日の朝に宿の入り口に集合」
そう言って、セルディックは踵を返した。
(以外と素直ですわ)
これで生活が良い方に変わったらーー
「こ、これでは、わたくしが勇者に惚れているみたいで嫌ですわ」
テーブルに頭を打ち付けるアリシアを見て
「最近の若い女の子は、情緒不安定ですよね」
「単に、変人なんだろ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます