第9話

急所である喉に矢を受けたことで、コカトリスは地面に落ちて暴れ回る。

砂煙が上がる中

「ネロ、魔法で目を狙え」

双剣に持ち替えたセルディックの支持に従い

「分かりました」

ネロは杖を振り上げ、火球をコカトリスの目に放つ。

動きが鈍くなった瞬間、セルディックは双剣で切り刻む。


レオンはゴクリと息を飲む。

(これが、勇者と魔法使いの戦い方……)

同じく魔物と戦う者への尊敬を感じる反面、やはり普通の人間とは違う、という劣等感がレオンの中で生まれた。

「クスクス」

「クスクス」

まるで、心を呼んでいるかのように小さい女の子の笑い声。

「誰だ!?」

レオンは大剣を引き抜き、周囲を警戒する。

そして姿を表したのはーー

「ルーナ」

腰まである長い髪の褐色の肌を持つ少女。

「ヘカーテです」

ルーナとは対照的に、色白でベリーショートの少女。

二人の顔はよく似ている。

「双子……?」

困惑しているレオンに

「こっち、来て」

ルーナが左手を掴む。

「ワタシたち、力になれると思いますよ」

「いや、俺は……」

言われるがまま、レオンは彼女たちに手を引かれた。


「で、結局、見つからないんだが」

おそらく、コカトリスは魔王の側近が呼んだものだと思われる。

「おかしいですね」

考え込むネロに

「……とにかく、一度町に戻ろう」



「待ってくれ、どこまで連れて行くつもりだ」

開けた場所に出ると、ルーナとヘカーテは足を止め

「こちらを」

「どうぞ」

布に巻かれた、いわくありげなモノを差し出した。

「これは……」

布の中から出てきたのはーー

「主様の左腕」

「力を求める、あなたこそ最適です」

「や、やめてくれ……俺は、別に」

後ずさりをするレオンに

「今のままで、セルディックに勝つなんて無理」

「悪魔の力でも、手にいれない限り不可能です」

「……悪魔の?」

ルーナとヘカーテが差し出した左手が、レオンの左手へと同化していく。

静寂ーー何もない暗闇の中で

「我が力をかしてやろう」

レオンの背後で、何かが不敵に笑った。


「馴染まぬものだ」

感触を確かめるように体を動かすレオンに

「主様」

「一度、城に戻られますか?」

「おお、我が娘たちよ。なかなかの働きぶりよ」

レオンは、双子の肩に手を回す。

「感激」

「主様のためなら、当然です」

レオンに取り憑いた何かは

「あれが、贔屓にしている町があるようだな。確か、フォルテといったか」

少し遊んでいこう、と続け

「はい」

「かしこまりました」

ルーナとヘカーテは後へと続いた。

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