第8話

「レオン、そっちに行った」

仲間の隊員が逃がしたゴブリンを

「任せろ」

レオンが大剣で斬る。

その背後で、斧を振り上げていたゴブリンが

「ギャアアア」

額に黒いナイフを受けて倒れる。

「……お前、武器は立派だが背後も見るべきだな」

欠伸をしているセルディックを見て

「助けてくれと頼んだ覚えはない」

「あっそ」

そう言ってセルディックが身を翻すと

「おい、何匹倒した」

「忘れた」

「……ふっ、倒しながら数も数えられないのか」

俺は20だ、と得意気なレオンを見て

「じゃあ、さっきので40」

「さっき忘れたと言っていただろ」

「なんだよ」

「白黒つけるか」

睨み合っているセルディックとレオンの横で

「地の精霊よ……」

ネロが杖を振り上げる。

それと同時に、地面から突き出した無数の槍がゴブリンを貫く。

「すっげ」

「味方は、ちゃんと除けてる」

呆然とするギルド隊員たち。

「やっぱり、魔法ってのはすごいな」

同じくレオンも、感心した表情。

「お前、もっと早くやれよ」

「嫌ですよ。私が疲れてしまいます」

「さすが、兄ちゃんたち。腕がたつな」

マクシミリアンが、セルディックとネロの背中を叩く。

「予想以上に、早く終わった。これから、町にもどって宴だ!!」

「酒が飲めるぜ」

「レオン、お前も付き合えよ」

「お、俺は十九ですから……」

先輩たちに絡まれながらも、嬉しそうなレオン。

森の方を眺めているセルディックとネロを見て

「帰らないのか?」

「ちょっと用事」

「そういうことですので、ギルドのみなさんは先に戻っていてください」

ネロの言葉に

「じゃあ、先に初めてるぜ」

「後で、絶対来いよ」

マクシミリアンとギルド隊員たちは、フォルテの町にの方へと戻る。

「で、どうなんだ?」

セルディックに聞かれ

「近くにいると思います」

頷くネロ。

森の奥へと向かった二人を見て

「あいつら、一体何を……」

レオンはこっそり後をつけた。


青々とした木々の一部が灰色へと変化している。

セルディックが灰色の葉に触れると

「これは……」

砂のように崩れた。

「これは、石化です」

「ギュオオオオオオオン」

灰色の大きな鳥が咆哮をあげる。

「あれは、コカトリスです」

喉の辺りが膨らんでいるのを見たネロは

「勇者さん、ブレスには気をつけて」

「その前に叩く!」

セルディックは自らの影に手を入れ、弓を取り出す。


その様子を見ていたレオンは

(まさか、二人だけで戦う気なのか?)


コカトリスがブレスを吐く瞬間を狙い、セルディックは弓を放つ。

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