第7話
「封印に携わっていた魔法使いも数人が襲われました」
セルディックはネロの襟首を掴むと
「このへっぽこ魔法使い」
オレの苦労を返せ、と続ける。
「仕方ありません。相手が悪かったようで」
「……となると、最近魔物の行動がおかしいのって」
ネロは頷くと
「はい、誰かが魔王の左手を悪用しているのかと思います。そこで、聖女様が勇者さんと協力するように、と命令がありました。そうそう、勇者さんが教会を出て行ったのは」
何者かの悪意に気づいて、旅立つとはさすが我が子だわ。
「そういって、涙ぐんでおりました」
「ふざけるな! 不始末はそっちでなんとかしろ」
こめかみに青筋を浮かべたセルディックに
「勇者さん、僕一人でなんとかできると?」
しばらく間を置いて
「無理だな」
「そうでしょう。魔王討伐の際に居なかった側近が怪しいと……」
「勝手に話を進めるな」
「おーい、セル。ネロさん」
エルミナが呼ぶ声。
「あー、悪い。ちょっと、話が長引いて」
「ううん、仕事のことじゃないの。今、マクシミリアンさんが店に来てるの」
「ああ、あのムキムキか」
三人が店に戻ると
「兄ちゃん、腕が立つんだろ。どうだ、ゴブリン退治に加勢してくれねぇか」
「……ゴブリンか」
腕を組むセルディックの横で
「頭は悪いですが、増えると退治が面倒ですから」
ネロが言った。
「セル、嫌なら無理しないで」
心配そうなエルミナを見て
「大丈夫だ。それに、また町に入ってくるかもしれない」
「セル……ごめんね。本当は、もっと平和に暮らしたいはずなのに」
「さっさと倒して平和にすればいいだろ」
そんな二人の会話を聞いて
「きゃー素敵、がんばってー」
棒読みのネロに
「お前も来るんだよ。このへっぽこ魔法使い」
フォルテ近郊の森
「……なんで、クソ勇者まで」
セルディックの顔を見るなり、ものすごく嫌そうな顔をしたレオン。
「お前ら、ギルドの隊員だけじゃ手が足りないんだろ」
文句ならマクシミリアンに言え、とセルディック。
「ぐぐぐぐ……憎らしいが、マクシミリアンさんの命令では仕方がない」
レオンはセルディックの隣に立つ、ネロへと視線を向ける。
「で、そっちが魔法使いネロか」
「どうも、勇者さんのオマケのへっぽこ魔法使いです」
「年上なんだし、そんなへりくだる必要もないと思うが」
レオンの言葉に
「そうですか? では、肩でも叩いてもらいましょうか」
「……前言撤回する」
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