第5話
「このクソ勇者め」
レオンが右になぎ払った大剣を
「うおっ」
セルディックは前髪、3センチを斬らせてかわす。
「アリシア姫の次は、エルミナさんを毒牙にかけるつもりか」
レオンの剣の起動を読み、セルディックは次々交わしていく。
「できれば、左の方も……」
「避けるな! というか、人を散髪に使うな」
「アホか。避けないとオレの首が飛ぶ」
「ぐぎぎぎ……」
苦虫を噛み潰した表情のレオンに
「ちょっと落ち着いてよ」
セルディックを庇うように、エルミナは前に出る。
「エルミナさん、騙されてはいけません。俺は、王都である噂を耳にしました。このクソ勇者は、アリシア姫をブタコリラと罵ったあげく、婚約を破綻させたのです。いわゆる人間のクズです」
各地に女を作り誑かしているに間違いありません、とレオンは強く訴える。
「そんな……」
セルディックは眉を寄せ
「なんか、噂に尾ビレがついてるような」
「セルが、アリシア姫との婚約を破棄……」
アリシアは何かを考えるような表情で
「そ、それって他に思い人がいるってことで、も、もしかして、わ、私とか」
「エルミナさんのそういう所が好きですが」
さすがに自信過剰のような、とレオンは口篭る。
「とにかく、勇者はここには必要ない。さっさと、出て行け」
「あー、それな」
セルディックは頭を掻くと
「オレ、勇者辞めた。ちなみに、エルミナのお姉さんの店でバイトしている」
「は?」
いまいち話を理解していないレオンに
「セルは、うちの店で働いてるのよ。お願い、騒ぎを大きくしたくないから」
マクシミリアンさんには黙っていて、と頭を下げるエルミナ。
「エルミナさん、こんな人間のクズにそこまで」
「……さっきから、聞いてれば酷い言われようなんだが」
セルディックが肩を竦めと
「おーい、魔物がでたんだって?」
「大丈夫ですか」
騒ぎを聞いたギルドの隊員たちが集まってきた。
「エルミナちゃん」
駆け寄って来た姉の姿を見て
「お姉ちゃん」
「魔物が出たっていうから、心配だったのよ」
「わたしは、平気だよ。セルとレオンが魔物を退治してくれたの」
サラはレオンの方に視線を向け
「あら、レオン君。帰ってきてたのね」
背もずいぶん大きくなったわ、とサラ。
「お久しぶりです」
ぺこりと、レオンは頭を下げる。
「旅のウェイターって聞いていたが、兄ちゃん強いんだな」
マクシミリアンに背中を叩かれ
「内臓でる、内臓でる」
顔を青白くしているセルディック。
「どうだギルドに入ってみないか?」
「マクシミリアンさん、クソ勇……ただのウェイターにそこまでは荷が重いでしょう」
クエストの報告もありますので戻りましぃう、とレオン。
「いい腕してると思うんだが」
マクシミリアンは、残念そうな表情。
セルディックはレオンに視線を向け
「……お前」
「他ならぬエルミナさんの頼みだ。不本意だが、不本意だがな!!」
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